第35話 化ヶ狸族のうどんは本物なのか?



「おうどん、おうどん……♪」



 こんにちは、ヘンリエールです。

今日のお昼はわたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』のギルド長、ベーコンハットさんに教えてもらったうどん屋さんにやってきました。



 〝茶釜うどん〟



「おっきいタヌキの置物……招き猫的なやつかしら?」



 お店の入り口には笠を被った大きなタヌキの置物が設置されている。

ベーコンハットさんの話ではここは『化ヶ狸族』の経営するうどん屋さんらしくて、美味しいうどんがかなり安く食べられると有名らしい。



「本当に、うどんなのよね……?」



 化ヶ狸族は変化の術が得意だと言われていて、妖狐族が作ったいなり寿司を買う時に葉っぱを変化させた偽札で払ったのがバレて、そのせいで今も仲が悪いと言われている。



「まあ、昔の言い伝えというか都市伝説みたいなものだと思うけど……」



 がらがら、がらと引き戸を開けて入店。



「いらっしゃいませっ! 1名様でっ?」



「は、はい」



「奥の席どうぞっ!」



 元気な女の子の店員さんに案内されて一人用のテーブル席に通される。

お店の中は結構オシャレなインテリアで、うどん屋さんというよりパスタのレストランっぽい雰囲気。



「ご注文お決まりでしたら伺いますっ!」



「あ、えーと、たぬきうどんのあったかいやつと、天かす茶漬けのセットで」



「かしこまりましたっ! 少々お待ちくださいっ!」



 ふふ、メニュー表を見ずにベーコンハットさんにオススメされてたやつを頼むことでちょっと常連感を出してしまったわね……



「それにしても、ここは女の子だけでやってるお店なのかしら」



 見た感じ、配膳の店員さんも厨房でうどんを茹でている店員さんも若い女の子だ。

だからお店のインテリアも可愛らしい感じなのかな。



「お待たせしましたっ! こちらたぬきうどんと天かす茶漬けですっ!」



「ありがとうございます」



 おっきなかき揚げが乗ったうどんと、天かすと刻みのりがたっぷりのお茶漬け。

さすがギルド長のオススメだ、とっても美味しそう。



「それじゃあ早速。森羅万象の恵みに感謝を、いただきます……ちゅるるっ」



 …………。



「うん、美味しい!」



 前にパーシアス先輩やギルド長と行ったサイクロプス族のうどん屋さんのものより細麺だけど、コシはこっちのほうが強めで食べ応えがある気がする。



「かき揚げもサクサクで美味しい!」



 少し浸してふやけたのも良い感じ……



「ああ、うどんと揚げ物とごはん……炭水化物と脂質だけ……また太っちゃうわ……」



 でもこの天かす茶漬けがめちゃめちゃ美味しい。あと3杯くらい食べたい。



「次に来たときは大盛りにしよう」



 わたしは夢中になってうどんとお茶漬けを食べ進めた。



 ―― ――



「お会計750エルになりますっ!」



「安い……はい、1000エルで」



「250エルのお返しになりますっ! あ、葉っぱのお金とかじゃないから大丈夫ですよっ!」



「あ、あはは……やっぱ疑われる事あるんですね」



「そうなんですよ~っ! 困っちゃいますねっ!」



 なんだ、可愛い店員さんがいっぱいの良いうどん屋さんじゃない。

化ヶ狸族はもしかしたら風評被害に遭ってるだけの可愛そうな人たちなのかもしれない。





 …………。





 ……………………。





 あそこの店員、全員男らしい。






 【茶釜うどん/たぬきうどん、天かす茶漬け】



 ・お店:ガーリーでオシャレな感じで店員さんも可愛い。だが男だ。



 ・値段:安い。



 ・料理:美味い。天かす茶漬け絶対食った方がいい。



 ヘンリエール的総合評価:87点。

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