第33話 カエルの唐揚げはキモくて不味い?



「あーあ、今日も雨ですねえ……」



「イザヨイは集中して雨が降る時期があるからねえ。タプナードだと雨期はなかっけど」



「そうですねえ……」



 こんにちは、ヘンリエールです。

わたしが住んでいる人間族の国『イザヨイ』はちょっと前から『雨期』という雨がいっぱい降る季節に入りました。



「夜になるとうるさくてうるさくて。最近ちょっと寝不足です」



「雨音なんてそんな気になるもんかねえ」



「違いますよパーシー先輩。カエルですカエル」



 わたしが住んでいる地区には結構自然が多くて、ここ最近は夜になるとカエルが一斉に鳴き出して雨より憂鬱だ。



「なるほどカエルねえ……そんなヘンリーにオススメの店があるよ。今日仕事あがったら一緒に行かないかい?」



「カエルに悩んでるわたしにオススメの店ってなんですか。すっごい嫌な予感がするんですけど」



「まあまあ、アタシの奢りだけど、どうだい?」



「行きます!」



 ―― ――



「……それで、オススメのお店っていうのがここですか?」



「そうだよ」



 〝蛙料理・井ノ中〟



「帰ります」



「まあまあまあ! 食ってみたら意外とイケるから! 美味しいイザヨイ酒もあるよ」



「……うう」



 わたしがイザヨイ酒好きなのを知っててそういうこと言うんだから……これじゃあ行くしかないじゃない。



「へいらっしゃーい」



「二人ね、奥空いてる?」



「空いてますよー! どうぞ使ってください!」



 何度か来たことがあるのか、パーシアス先輩は慣れた手つきで奥の角にあるカウンター席にわたしを案内する。

ダークエルフは比較的ゲテモノ系の食材でも気にせず食べる人が多いって聞いたことあるけど、パーシアス先輩も例に漏れないらしい。



「さあヘンリー、どれが食べたい?」



「わ、わたしカエル料理なんて食べたことないから分かりませんよ……パーシー先輩のオススメで」



「はいよ。注文いいかーい?」



「はーい!」



「モリアオサラダ、カエルの唐揚げ、レンコンのはさみ揚げを2人前ずつ、それとホワイトエール……ヘンリー、酒は?」



「イザヨイ酒の……雨合羽っていうのを2合でお願いします」



「はーい! サラダ、唐揚げ、はさみ揚げ。それからホワイトエールと雨合羽ですね! 少々お待ちくださーい!」



 料理が来るまでしばしご歓談。



「そういやヘンリー、最近ギルド内で噂になってることがあるんだけどよ」



「ん、なんですか?」



「……ヘンリーって、エッグランド通ってんの?」



「うわああああああああ!!!!」



 わたしは先出しされたイザヨイ酒を一気に煽り、羞恥心と共に流し込んだ。



 ……。



 …………。



「それじゃあ雨期とカエルにかんぱーい! 森羅万象の恵みに感謝を!」



「いえ~い感謝を~! ……ひっく」



「飯を食う前に4合も飲むな」



「あ、サラダ美味し~……こっちはなんですか?」



「カエルの唐揚げだよ」



「カエルの唐揚げ、いただきま~す……あ、美味し~!」



 鶏の唐揚げみたい! 胸肉ともも肉を混ぜた感じの……ちょいパサつき唐揚げ!

なんだ、カエルも結構美味いじゃな~い。



「ひっく……パーシー先輩~なに食べて」



「ん?」



「きゃああああああ!?」



 パーシアス先輩はカエルが丸々一匹レンコンにはさみ潰された謎の料理を食べていた。



「レンコンのはさみ揚げだよ。ほれ、パーシーも食いな」



「それは無理です!!」



 ―― ――



「お会計5280エルになりまーす」



「はい、ちょうどね。ごちそうさん」



「ありがとうございましたー」



「……ごちそうさまでした」





 …………。





 ……………………。





 カエル、まあまあ美味いよ。




 【蛙料理・井ノ中/カエル料理とお酒色々】



 ・お店:カエルが入ってる水槽があってキモかった。



 ・値段:分かんない。奢ってもらった。



 ・料理:目瞑って食えば美味い。



 ヘンリエール的総合評価:73点。

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