第16話 エルフのお粥はママの味
「うう、お、おしりがいたい……」
こ、こんにちは……ヘンリエールです……
昨日食べた激辛カップ焼きそばのデバフが翌日になって来ました……パーシアス先輩が言ってた『明日後悔するよ』ってこれのことなのね……
「ふう、少し落ち着いてきた……今日がお休みで良かったわ」
さすがにちょっと、今日くらいはお腹に優しいごはんを食べようかしら……
「……というわけで、イセザキさんに教えてもらったおかゆ専門店に来てみました」
〝五行粥・表裏一体〟
「うーん……これはまたなんというか、良薬は口に苦し系の雰囲気がするわね」
とりあえずまあ、食べてみないことには始まらない。
おかゆだし、この前のスムージー屋みたいな強烈な味のものはない、と思いたい。
カラン、コロン。
「いらっしゃいませ~。一名様ですかあ~?」
「あ、はい」
「こちらへどうぞ~」
穏やかで優しそうなエルフ族の女性が席まで案内してくれる。
厨房を除くと、同じくエルフ族の男の人が何かを煮込んでいた。
「はい、こちらメニューになります~。お身体の調子に合わせたお粥をオススメしたりも出来るので、気軽に相談してくださいね~」
「ありがとうございます……あ、それじゃあひとついいですか?」
「はいはいなんなりと~」
「昨日、辛い物を食べ過ぎちゃってお腹の調子が良くなくて……」
「あら、それは大変ね~。香辛料は適量を摂る分には身体の調子を上げてくれたり、食欲増進にもなるけど、食べ過ぎると身体の内側がヤケドしちゃうもの~」
わたしの状態を聞いた店員さんがメニュー表をパラパラとめくり、おすすめのおかゆを選んでくれる。
「それじゃあこの、リンゴとアロエのオートミール粥とかどうかしら~」
「あ、美味しそう……」
よかった、また変な蜂の巣入りのスムージーみたいなのを勧められなくて。
「じゃあ、それください」
「は~い、ちょっと待っててね~。アナタ~、リンゴとアロエのオーツ、ワンねぇ~」
「はいよ~!」
……厨房の人、旦那さんだったんだ。
「お嬢さんは、もしかしてウインドエルフ…いや、ホーリーとウインドのハーフかしら?」
「あっそうです……! よく分かりましたね」
わたしは母親がホーリーエルフで、父親がウインドエルフ。
顔立ちは母親似だけど、薄いライム色の髪と、ホーリーエルフにしては少し小柄な体躯はウインドエルフの特徴だ。
「ウチは旦那がホーリーとネイティブのハーフでねぇ~。私はネイティブエルフだから、子供が出来たらネイティブかホーリーネイティブなのよ~」
「そうなんですねえ」
エルフ族は結構純血主義というか、それぞれの一族内で結婚するのを良しとする文化があるので、わたしの両親やこの人たちみたいな別の一族同士で結婚しているのは珍しい。
人間族の国まで出てきて二人でお店を営んでいるというのも、きっと今まで色々と苦労があったのだろう。
「お待ちどうさま。こちらリンゴとアロエのオートミール粥になります。熱いから気を付けてね」
「ごゆっくり召し上がれ~」
「ありがとうございます……!」
うーん、ほんのり甘い香りがする。美味しそう……
「森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……ふー、ふー、はむ」
…………。
「はあ、優しい味……」
オートミールとミルクの風味。ジンジャーが少し入ってるかな?
子供の頃、風邪を引いたときにママが作ってくれたパン粥を思い出しちゃった。
「リンゴ、シャキシャキで美味しい……」
完成する直前に入れたのかな? 煮込まれてるよりこっちのほうが好みかも。
「どう? ウチの旦那のお粥、美味しいでしょ~?」
「はい……! とっても美味しいです……!」
わたしはおしりの痛みも忘れてオートミール粥を食べ進めた。
―― ――
「はい、それじゃあお会計が、820エルになりますね~」
「はい……ご馳走様でした。また来ますね」
「ありがとうございました~」
…………。
……………………。
おしりの痛さも忘れるママの味。
【五行粥・表裏一体/リンゴとアロエのオートミール粥】
・お店:イカつい店名のわりに優しい雰囲気。
・値段:普通だと思う。
・料理:ミルキーで優しい味。ママ。実質離乳食。
ヘンリエール的総合評価:76点。
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