第15話 激辛カップ焼きそばとか余裕やろ
「パーシー先輩。最近わたし、辛い料理にハマってるんですよ」
「ふうん、甘いの大好きヘンリーが辛い料理ねえ……」
こんにちは、ヘンリエールです。
前に巨人族のカレー屋さんに行ってから辛い料理にハマってて、最近はラーメン屋さんでピリ辛の担々麵を頼んだり、たこ焼きにも七味唐辛子をかけたりしちゃってます。通ってやつですよ、通。
「パーシー先輩、どこか辛い料理のお店知りませんか?」
「アタシは辛いのをそんなに食べないからねえ……そうだ、それなら適任がいるよ。おーい、イセザキ!」
「なんでしょうか、パーシアスさん」
パーシアス先輩がギルドの受付にいる女性を呼んでくる。
この人はイセザキさんっていって、わたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』で経理事務を担当している人間族の先輩だ。
黒髪ロングに赤いアンダーリムの眼鏡が似合うクールビューティーなお姉さんである。
年齢的にはエルフのわたしの方が全然上なんだけどね。
「イセザキはウチのギルドイチの激辛マニアなんだ。イセザキ、ヘンリーが辛い料理を食べたいって言ってんだが、どこか良い店知ってるかい?」
「そうですか……まずはヘンリエールさんの辛さレベルが分からないとオススメできる店も提示しにくいですね……少々お待ちください」
そう言うとイセザキさんはギルドの受付カウンターから何か箱のようなものを取り出して戻ってきた。
「とりあえず本日はこちらをどうぞ」
〝ペヤンキー・カップ焼きそば〟
「カップ焼きそば、激辛マックス味……?」
「なんでそんなもんがギルドのカウンターに保管されとるんだい」
「私のおやつです」
イセザキさんは意外とゆるかった。
「こちらは私の愛食しているペヤンキーのカップ焼きそばです。辛さでいうと、真ん中より少し下くらいですかね」
「えっ? でも激辛マックスって……」
「世の中は広いのです」
「は、はあ……」
「これを食べたときのヘンリエールさんの反応で、ある程度オススメできるお店の辛さレベルが絞れると思いますので」
「なんだか科学的だねえ」
そ、そうかしら……?
「それじゃあ、ちょっと食べてみますね。イセザキさん、ありがとうございます」
「いえいえ、激辛好きが増えることは良い事ですので」
……。
…………。
「お湯を入れて、三分経過っと」
えっと、次はお湯を捨てて、ソースを入れて……できた!
「それじゃあ食べますね」
「はあ、本当に大丈夫かねえ。ヘンリー、明日後悔しても知らないよ」
「どうして明日なんですか?」
「辛い料理というのは翌日の……いえ、食事中ですからやめておきましょう」
なんだろう、二人ともなんともいえない表情でわたしが食べるのを見守っている。
「それじゃあいきますね。森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……ずずず」
…………。
「うん、うん……ちょっと辛いかな? でも美味し……」
…………。
「け、結構これ、辛いっていうか、熱々なのかな? まあ食べられるけど、熱い……うん、スゥー……あっ痛いっ喉が……!!」
「ヘンリー……」
「ヘンリエールさん……」
「いや全然美味しい、うん、ピリ辛くらいかな? スゥー……痛っ! い、息吸えない……!」
「ヘンリー、アイスミルク飲むか?」
「……ください」
わたしは必死になってアイスミルクを飲み続けた。
―― ――
「ふう……やっと落ち着いた……ま、まあ、辛いけど美味しい感じっていうか、熱々だからもうちょっと冷めてから食べようかなっていうか」
「ヘンリー、アンタは甘くて冷たいアイスクリームでも食ってな」
「ヘンリエールさん、私食べましょうか? 残り」
「…………お願いします」
…………。
……………………。
わりぃ、やっぱ辛ぇわ。
【ペヤンキー・カップ焼きそば/激辛マックス味】
・お店:こんな辛いもん作るな。
・値段:イセザキさんから貰ったからタダ。
・料理:辛くて辛い。これで辛さレベル中の下はさすがに嘘。
ヘンリエール的総合評価:35点。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます