第14話 巨人族のデカ盛りカレーで腹パンになった



「うわあ、おっきいお店……」



 こんにちは、ヘンリエールです。

今日はわたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』の取引先の方から、行きつけだというオススメのカレー屋さんの割引券を貰ったのでお昼休みに行ってみることにしました。



 〝オベリスクΔカレー〟



「オベリスクさんかっけえ……いや、デルタカレーかしら?」



 ここは巨人族のヒューマンが経営しているカレー屋さんで『ビッグフット・チーズナン』という、わたしの身体くらいある巨大なナンが有名らしい。

さすがにそんなのは食べ切れないので、今日は普通のカレーライスにしよう。



 カラン、コロン。



「イラッシャマセー」



「シャマセー」



「あっひ、ひとりなんですけど」



「コチラドゾー」



 ドシン……ドシン……



 私の倍以上ある巨人族の店員さんがだいぶ訛ったヒューマン語で席まで案内してくれる。

わたしたちが話している言葉はヒューマン語という統一言語で、人間族や、エルフ族、ドワーフ族などのヒューマンであればみんな話すことが出来る。

ただ、巨人族など一部のヒューマンは比較的最近に交流が始まったため、ヒューマン語に独自の訛りがある人が多い。

エルフ族でも、深い森に住むネイティブエルフの人なんかはかなり訛っている。



「あの、この券って使えますか?」



「オー巨人盛リワリビキ。ダイジョブダイジョブー」



「えっ巨人盛り? それって……」



「カレーエラブ。バターチキン? マトン? キーマ? グリーン? 肉ダイジョブ? 宗教?」



「えっあっだ、だいじょぶ、なんでもだいじょぶです」



「カライノダイジョブ?」



「ちょっとだいじょぶ」



 店員さん、結構グイグイ来るわね。

釣られてわたしまでカタコトになっちゃうわ。



「オネーサンエルフ? ソレジャ、オススメ。サグカレー。青菜ベース、マトン入リ」



「あ、じゃあそれで」



「マイド! サグカレー巨人盛リ。デキルノチョトマッテテ」



 ドシン……ドシン……



「あっいやっ巨人盛りは……行っちゃった」



 なんだかすごい嫌な予感がするけど、大丈夫かな。



 ……。



 …………。



 ドシン……ドシン……



「オマチド、サグカレー巨人盛リ。メシアガーレ」



「……でっか」



 店員さんが運んできたのは、名前通りの巨大なカレーライスだった。

大きなお皿に深緑色のサグカレーがたっぷりと注がれ、真ん中には山のように盛られたライス。山の頂上には、二本の巨大な骨付き肉が突き刺さっていた。



「と、とりあえず食べましょうか……森羅万象の恵みに感謝を。いただきます」



 ど、どこから食べればいいんだこれ……とりあえず山を崩さないように……はぐ。



「もぐ、もぐ……うん! 美味しい!」



 サグカレーというのは、青菜や菜の花をベースにしたカレーらしい。

ドロッとしてコクがあるけど、菜の花の爽やかな風味でかなり食べやすい。

マトンのお肉も豚肉よりちょっとケモノ臭があるけれど、魔物と比べたら全然食べやすい。

サグカレーのさわやかな風味も良い感じに臭み消しになっている。



 うん、美味しい。とっても美味しいのだけれど……



「食べても食べても全然減らないわ……」



 わたしは胃袋が天元突破するまでカレーを食べ進めた。



 ―― ――



「オカイケイ880エルナリマス」



「はい……」



「オツリ120エルドゾ。アトコレアゲル」



「な、なんですか……?」



「マンゴーラッシー洪水サイズ無料券。マタキテネー」



「ご、ごちそうさま……」





 …………。





 ……………………。





 職場に戻ったら腹パンすぎて妊娠疑われたんだが。半日で臨月なるかボケ。





 【オベリスクΔカレー/サグマトンカレー巨人盛り】



 ・お店:カレ~って感じ。店員さんがでかい。



 ・値段:安くてでかい。でかすぎ。



 ・料理:かなり美味い。あとでかい。



 ヘンリエール的総合評価:83点。

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