第13話 スライムゼリーをスラムのガキに奢った
「たこたこたーこ♪ たーこやき食べたい」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日はなんだかたこ焼きが食べたくなって前に寄ったスラム街の『たこ焼き屋・スラたこ』にやってきました。
「……あら? 今日はやっていないのね」
屋台は閉まっていました。残念。
「はあ、完全にたこ焼きの気分だったのに……他に何か出店はないのかな」
周りを見渡すと、1件だけお店を発見。
〝ぷるぷるぷるる〟
「……なんのお店?」
お店の外観はかなりカラフルというか、ペンキをバシャバシャ塗ったような、ザ・治安悪いぜみたいな感じだった。
「あそこはちょっと、やめておこうかな……」
「ねーちゃん、スライムゼリー食うの?」
「ゼリー、いいなあ……」
「えっ?」
お店を観察しながら悩んでいると、ボロボロの服を着た裸足の子供たちがやってきた。
おそらくこのスラム街に住んでいる孤児だろう。
「あれ、スライムゼリーのお店なの?」
というか、スライムゼリーってなんだ……?
「なんだねーちゃん、スライムゼリー食ったことないの?」
「ぷるぷるでうまいんだよ」
「ゼリー、いいなあ……」
どうやらこの子たちはスライムゼリーが好きらしい。
うーん、ちょっと興味湧いてきたかも。
「スライムゼリーって、どういう食べ物なの?」
「スライムって魔物いるだろ? あれをゼリーにしたんだよ」
「すごいそのまんまね」
なんだろう、興味は湧いてきたけど食欲は湧かないかも。
「グリーンスライムが1番うまいよな」
「えー? ぼくはイエロースライムが好きだけどなー」
「ゼリー、いいなあ……」
どうやらスライムの種類によって味が違うらしい。
イエローはレモン味とか? なんちゃって。
あとさっきからひとりすっごく食べたそうにしてる子がいて、お店の人もちょっとこっち伺ってる気がする。
しょうがない、ここいらでちょっとお姉さんの経済力を見せつけてやりますか。
「それじゃあ、ゼリー買ってあげるから一緒に食べよっか」
「まじ!? いいの!?」
「やった~!!」
「ゼリー……!!」
子供達とお店に向かうと、店頭には様々な色のゼリーがボトルを逆さにしたような大きな容器に入って売られていた。
……いや、よく見ると容器の中でふよふよ動いてるわね。
「こ、これがスライムゼリー……」
「らっしゃせー」
「あっえーと、スライムゼリーを4つください」
「フレーバーどれにしますかー?」
「みんな、なにがいい?」
「おれグリーン!」
「ぼくイエロー!」
「あたしは、ピンク……」
「じゃあわたしは……ブルーで」
「お会計400エルになりますー」
1個100エルか。やっぱこの辺りのお店はかなり安いわね。
「こちら商品ですー。ちょっとずつちぎって食べてください―。あ、のどに詰まらせて死んでも自己責任になりますー」
「は、はい……」
ええ……こわ。
「はい、どうぞ」
「わーい!」
「ねーちゃん、ありがとー!」
「ありがと……!」
お店の横に移動してみんなでゼリーを食べる。
「それじゃあ食べますか……森羅万象の恵みに感謝を」
「ねーちゃん、それなに? 呪文?」
「エルフ族が食事の前に唱えるおまじないのようなものよ」
「そうなんだ! えーと、めぐみに感謝を!」
「めぐみ、感謝するぜ!」
「めぐみ……」
誰よめぐみって。
「いただきます……はむ」
…………。
「甘くて、ぷるぷる……なんか、ずっとぷるぷるしてる」
飲み込んだ後も、お腹の中でぷるぷるしてる気がする。
もしかして、まだ生きてる?
「ねえ、これ大丈夫? お腹突き破って出てきたりしない?」
「大丈夫だよ。ちゃんと処理してるってお店の人が言ってたし」
「お腹の中おもしろいよね!」
どうやらしばらくはぷるぷる動くらしい。
スライムゼリー、謎な食べ物だ。
「おねーちゃ、ぴんく食べる?」
「いいの?」
「あーん……」
「あーん……はむ」
…………。
「うん、おいしい。じゃあこっちもあげるね。あーん」
「あー……はむ。んー……おいし……」
「あっおれもおれも!」
「ぼくのも食べて!」
こうしてわたしはスラムの子供達と一緒にぷるぷるのスライムゼリーを食べたのだった。
―― ――
「ねーちゃん、ゼリーごちそうさまー!」
「ねーちゃん、ばいばーい!」
「ばいばーい……!」
「元気でね~」
…………。
……………………。
色は違うけど味は全部一緒だわ。
【ぷるぷるぷるる/スライムゼリー】
・お店:スラムって感じ。
・値段:めっちゃ安い。
・料理:甘い。お腹の中でぷるぷるするから食べ過ぎると多分気持ち悪くなる。
ヘンリエール的総合評価:62点。
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