第12話 ポップコーンは青春の味
「うーん、何を観ようかなあ」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日は『旅団劇場』が近くに来ているということで、演劇を観に行くことにしました。
旅団劇場はイザヨイ各地を回りながら演劇をするという、人間族に大人気の興行ギルドです。
一日に行われる演劇は3種類。初めて観るので、どれにしようか悩んでいます。
「よし決めた! ロミオのおいしいレストランにしよう」
観覧券を買って、演劇の時間まで少し待つ。
「どうしよう、ちょっと小腹が空いてきちゃったな。でももうちょっとで始まるし……あら?」
〝ホッピング☆コーン〟
「あれはなにかしら……ポップコーン?」
演劇が行なわれる大テントの横に屋台が出ていて、そこで大きなカップに入ったポップコーンというお菓子のようなものを買ってテントに入っていくお客さんがたくさんいた。
「よし、わたしもあれ食べよう」
さっそく屋台に並んでメニュー表を確認する。
「塩味に、キャラメル味、スパイス味、醤油バター味……な、悩むなあ」
初めて食べるし、シンプルに塩味が良いかしら。
でもキャラメルも気になるし、醤油バターとか絶対美味しいし……
「ご注文いかがなさいますかー?」
「あっはい! えっと……醬油バターのSサイズと、アイスハーブティーで」
「お会計450エルになりまーす」
「はい」
結局自分の本能に従って一番美味しそうなやつにした。ああでも、キャラメルも美味しそう……
「こちら50エルのお釣りと商品になりまーす」
「あ、ありがとうございます」
ドリンクとポップコーンのカップが載ったトレーを持って、劇場へ。
Sサイズでも結構量があるのね。あのバケツみたいなカップはLサイズかしら。家族用とか……?
「えっと、席は……ここの列ね。すいませーん、前失礼します……」
「はい……あれっ? もしかして、ヘンリエールさん?」
「えっ? ……あ! もしかしてヒバリちゃん?」
隣の席に座っていたハーピィ族の女の子は、わたしが前に卵かけごはんを食べに行った『エッグランド・はぴはぴ☆ハーピィ』の新人店員、ヒバリちゃんだった。
「え、えへへ。奇遇ですね……ワタシの初めて、大切にしてくれてますか?」
「え、ええ、持ち帰ったタマゴの殻ね。ちゃんと洗って保管してるわ」
「えへへ……ありがとうございます。そういえば、他のお客様は洗わないで保管してるって言ってたんですけど、ヘンリエールさんは洗う派なんですね」
「ええそうね……えっ、洗わない人って……いや、そうね」
少しお仕事について話したところ、新人ながらもそれなりに常連のお客さんが付いてきていて、お給料でそこそこまともな暮らしが出来ているとのことだった。
「ワタシの家、両親がいなくて、小さい双子の妹たちを養わないといけないので……もっとがんばってお金稼がないと」
「ヒバリちゃん偉いね。お仕事頑張ってね」
「はい……! あ、ヘンリエールさんのポップコーンは醬油バターなんですね」
「ヒバリちゃんのは、もしかしてキャラメル?」
ヒバリちゃんのトレーには、黄金色に輝くキャラメルコーティングのポップコーンが乗っていた。
うーん、やっぱキャラメルも美味しそうだなあ。
「あの、良かったらシェアしませんか? キャラメルと醬油バター」
「えっ良いの? わたしはもちろん賛成だけど」
「えへへ、こういうの、一度やってみたくて……」
ヒバリちゃん、可愛いがすぎるでしょ。
これは常連のお客さんが付くのも納得……いや、わたしはもう行かないけれど。多分。おそらく。
「あっそろそろ劇が始まりますね。それじゃあワタシのキャラメル、自由に食べてくださいね」
「ありがと。ヒバリちゃんも醬油バター、好きに食べてね」
「はい、それじゃあ早速……あっ指が当たっちゃいましたね。えへへ」
「えへへ」
ポップコーンはなんだか青春の味がした。
演劇の内容はあんまり頭に入ってこなかった。
―― ――
「ロミオのおいしいレストラン、面白かったですね」
「そうね」
「ポップコーン美味しかったですね」
「そうね。キャラメルも醬油バターも美味しかったわね」
「それじゃあヘンリエールさん、さようなら。またお店、来てくださいね……」
「そ、そうね。またね」
…………。
……………………。
これが青春の味ってやつか。えっちだなあ。
【ホッピング☆コーン/醬油バター味、キャラメル味】
・お店:普通。
・値段:量のわりにはまあまあ安い。
・料理:シェアして食べてて時々ヒバリちゃんと指が当たっちゃってえっちだった。
ヘンリエール的総合評価:78点。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます