第10話 自然派エルフのスムージーは正直不味い
「うーん、最近ちょっと太ってきたかも……」
おはようございます、ヘンリエールです。
エルフ族の国『タプナード』から人間族の国『イザヨイ』に来て色々な料理を食べ歩いているせいか、最近少しお腹がぷにっとしてきてしまいました。
これはさすがに乙女の危機……というわけで、今日の朝食は健康に気を使って野菜のスムージーで軽く済ませちゃおうかと思います。
〝NATURE MIXER〟
ギルドまでの通勤途中にある野菜と薬草スムージー専門のお店。
わたしと同じエルフ族の人がやってるお店で、前々から気になってたのよね。
「すいませーん」
「いらっしゃいませー……あらまあ同族さん。ホーリーエルフ?」
「ホーリーエルフとウインドエルフのハーフです」
「あらそうなの~。あたしはネイティブエルフなの。あ、これメニューね」
「ありがとうございます」
店主さんはネイティブエルフという、いくつか存在するエルフ族の中でも、もっとも昔から存在する原初のエルフと呼ばれている一族らしい。
エルフ族は雑食だけど、基本的には野菜やフルーツ、穀物などを好んで食べる一族が多く、特にネイティブエルフはあまり手の入っていない森の奥地に住居を構えて、薬草や木の実、野草など、栽培されていない自然のものを好んで食べているとても健康志向の強い一族だ。
「えーと、どれにしようかなあ」
……わたしの好きなキャロットスムージーが無いわね。
それどころか、野草スムージーや薬草ミックスなど、あきらかに良薬は口に苦し的なのが多い気がする。
もしかしなくてもネイティブエルフ向けのお店だったかもしれない。
「え、えーと、ネイティブエルフじゃなくても飲みやすいオススメって……」
「そうねえ……あ、それならこれなんかどう? グリーンハーブのハニーミックス。甘くて飲みやすいわよ」
「あっじゃあそれください。サイズは……トールで」
「はあい。お会計480エルになりますね~」
「はい」
会計を済ませてスムージーが出来上がるのを少し待つ。
ハニーミックスってことはハチミツが入っているのよね。ハチミツは好きだから、それなら美味しく飲め……
「……ん? さっき入れた白っぽい塊って何ですか?」
「これはミツバチの巣よ~。普通は圧搾して蜜だけ採ったり、蜜蝋部分だけ入れるんだけど、うちはまるごと贅沢にぜ~んぶ入れちゃうの!」
「……そ、そうなんですね」
流れ変わってきたわね。いや何してんのよこの自然派おばさん。
「それって、最後に濾したり……」
「スムージーだもの! このまま飲むに決まってるじゃな~い」
「ですよね」
―― ――
「はいできた! 栄養たっぷりのグリーンハーブスムージー・ハニーミックスよ」
「あ、ありがとうございます」
スムージーを受け取って、ギルドに向かいながらひとくち……が、中々進まない。
「……よし、飲むわ。森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……コクッ」
…………。
……………………。
クソ不味いわこれ。
【NATURE MIXER/グリーンハーブスムージー・ハニーミックス】
・お店:ちょっとオシャレ。店主がだいぶ自然派思想入ってる。
・値段:普通のスムージーよりちょっと高い。
・料理:苦くて臭くてドロドロで不味い。ある意味ダイエットには最適。
ヘンリエール的総合評価:38点。
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