第9話 オーク肉のカツサンドは意外と食える
「着いたよヘンリー、ここの店だ」
〝くっころカツサンド〟
「ここが、オークカツサンドのお店……」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日はわたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』のパーシアス先輩にオススメの魔物料理のお店に連れて行ってもらいました。
「パーシー先輩、わたしやっぱり魔物肉はまだ……」
「大丈夫大丈夫。オークの肉は魔物の中でも食べやすいんだ」
前に食べたフライドゴブリンのトラウマで魔物肉の料理に苦手意識を持ってしまったわたし。
魔物の肉は動物と違ってクセが強いものが多いから好きな人はすっごい気に入るけど、苦手な人はもうまぢ無理嘔吐しよ。ってなることもあるくらい好みが分かれる。
「それに、オークはわたしたちの天敵ですよ」
わたしたちエルフ族とオークは生息地域が重なっている場合が多く、食料を巡っての争いやオークによる襲撃被害が度々発生する。
倒したオークを食べてた物好きなエルフもいたけど、ほとんどのエルフにとってはゲテモノ食材……いや、食材とみなしてすらいなかった。
「いいかいヘンリー、ここの店で使ってるオーク肉は『くっころオーク』っていうブランドの養殖されたオークなんだ」
「オークを、養殖……? 豚や牛みたいに人工的に育ててるんですか?」
「ああ、だから野生のオークよりクセが少なくて肉質も柔らかい。まあ、試しに食べてみなって」
「はあ、まあパーシー先輩がそこまで言うなら……」
勇気を出してお店に向かう。
スィーっとドアが自動でスライドして、注文カウンターにいた店員さんと目が合う。
「……この自動で開くタイプのお店は美味しくないって歴史が証明してるんですけど」
「アンタが行ったのってフライドゴブリンの店だけだろ。ほれ、歴史改革だよ歴史改革」
「うう……」
「いらっしゃっせー。ご注文お決まりですかー?」
「くっころセット2つ。サイドはポテトとオークナゲットひとつずつ、ナゲットソースはオーロラで。あ、あとポテトは塩無しでケチャップで……ヘンリー、飲み物どうする?」
「えっ? あ、あの、じゃあプレーンソーダで……」
「はいよ……えーと、ドリンクはプレーンソーダとブラックソーダ。以上で」
「お会計1600エルになりまーす」
「ギルドカード払いで」
「かしこまりましたー」
わたしがあたふたしているうちにパーシアス先輩が呪文のような注文をこなしてお会計まで済ませてしまう。
「パーシー先輩、お会計……」
「いいよいいよ、アタシがヘンリーの魔物肉嫌い克服を無理強いしてるんだから」
「あ、ありがとうございます……」
「お待たせしましたー」
「提供はやっ」
料理の乗ったトレーを受け取って、店内の食事スペースへ。
「それじゃあ食べようか。森羅万象の恵みに感謝を」
「いただきます……はむ」
…………。
「うん、美味しいですパーシー先輩」
「いやアンタそれポテトじゃないか。カツサンドを食いなカツサンドを」
「……う」
勇気を出して、オーク肉のカツサンドと向かい合う。
衣をまとった肉はうっすらと赤みがかった、まあ美味しそうな感じではある。
食欲を損なうような緑色のゴブリン肉とは大違いだ。
「い、いきます……はぐっ」
…………。
「あ、あれ? 全然食べられる。というか……結構美味しいかも」
思ったよりも臭みとかは全然なくて、お肉も柔らかくてジューシーだ。
一緒にサンドされている細切りのキャベツも美味しくて、これのおかげで少しくどいオーク肉をさっぱり食べられる。
「口に合ったようで良かったよ。こっちのナゲットも食べてみな」
「はい……はむっ。……うん! これも……まあ、食べられます」
「はっはっは! こっちは微妙だったみたいだね」
い、いけないいけない。わたしったらすぐ表情に出ちゃうから。
「お肉単体だと、ちょっと胃もたれ系かも……」
「まあ、年取るとキツくなってくるかもね」
「わ、わたしはまだピチピチの150代です!」
「人間族からしたら長老並みのおばあちゃんだよ」
わたしは複雑な気持ちでオーク肉のカツサンドを食べ進めた。
―― ――
「あざっしたーまたおこしくださーい」
「ふう……お腹いっぱい」
「次はもっと美味いオーク料理の店に連れて行ってあげるよ」
「カツサンドより美味しいオーク料理、ですか?」
「ああ……オークの脳みそ料理専門店さ」
「お断りします」
…………。
……………………。
オーク肉、意外と美味いやん。
【くっころカツサンド/くっころセット・ポテト、オークナゲット】
・お店:ちょっとアンラッキーフライドゴブリンと雰囲気似てる。
・値段:結構安い。
・料理:クセが無くて意外と食べやすい。ナゲットは微妙。
ヘンリエール的総合評価:66点。
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