第7話 妖狐族のいなりは美味いのか?



「ここが、獣人街……」



 おはようございます、ヘンリエールです。

本日はお仕事お休みの日。

観光がてら、前々から来てみたかった獣人街にやってきました。



「わあ、みんなもふもふだ……」



 わたしが仕事の都合で移住してきた人間族の国『イザヨイ』には、様々な種族のヒューマンが暮らしている。

ここはその中でも人狼族や猫叉族、化ヶ狸族などの獣人系の種族が多く暮らす地域で、料理も獣人系が好む肉料理のお店が多いらしい。



「ガッツリの肉料理は、わたしはまだ少し慣れていないのだけれど……あ、ここのお店だ」



 〝こっくり稲荷〟



「写真で見た通り、お洒落なお店……!」



 大きな赤い門をいくつも通り抜け、お店まで続く苔むした石畳を歩く。

ここは妖狐族の店主が営む、いなり寿司という料理のお店。



 グルメ雑誌で紹介されていて、このオシャレなお店の外観や独特な雰囲気がとても気に入ったので、思い切って寄ってみることにした。

いなり寿司という料理を食べるのも初めてなので、今日はとっても楽しみだ。



「あら、おいでやす~」



「あっこ、こんにちは」



 うわあ……妖狐族の店主さん、とっても美人……



「その、雑誌を見て、素敵なお店だなって思って今日初めて来ました」



「そら嬉しい限りどす。ウチは店内スペースがないんで持ち帰りのみどすけど、よかったら店の敷地にあるベンチで食べてっとぉくれやす」



「は、はい……!」



 赤を基調とした瓦屋根の小さなお店。

お店の周りはちょっとした広場になっていて、店主さんの厚意で飲食用の長椅子が設置されている。



「いなりは普通のと五目飯のがあって、ふつうのがひとつ100エル、五目飯がひとつ120エルになりますね~」



「それじゃあ、両方5個ずつください」



「おおきに~。そうしましたら、お会計が1100エルになります」



「はい」



「はいどうも、ちょうど貰います。こっちの白い包み紙が普通ので、赤い包み紙が五目飯です」



「ありがとうございます」



「ごゆっくりお召し上がりくださいね」



 いなり寿司を受け取って、お店の裏手にある長椅子に座って食べることにする。

朝一で来たからか、まだ他のお客さんは見当たらない。

周りは竹や杉の木で囲まれていて、なんだかここだけゆったりとした澄んだ空気が流れているみたいな気持ちになる。



「それじゃあまずは普通のいなりから。森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はむっ」



 …………。



「……!! ん~! 美味しい~!」



 噛み締めると甘じょっぱい味がじゅわ~っと口の中に広がる。

このお米はなんだかほのかに甘酸っぱい……普通のごはんじゃないのかしら。



「これが、いなり寿司……!」



 五目飯のほうも食べてみる。



「はむ……ん! こっちは炊き込みご飯になってるのね」



 思わずこの間食べた金箔の炊き込みご飯が頭をよぎったけど、一瞬で記憶から消え去った。



「こっちも美味しい!」



「失礼します。お客はん、良かったらほうじ茶飲まへんか? お金は取らしまへんさかい」



「あっありがとうございます! いただきます……!」



 わたしは夢中になっていなり寿司を食べ進めた。



 ―― ――



「ごちそうさまでした。お茶までいただいちゃって」



「ウチのいなりは口に合いました?」



「とっても美味しかったです……! 絶対また食べに来ます!」



「うふふ、そら嬉しいなあ。いつでも待ってるさかい、また来とぉくれやす」



「はい!」





 …………。





 ……………………。





 いなり寿司は神。





 【こっくり稲荷/いなり5個、五目いなり5個】



 ・お店:めっちゃ雰囲気良い。店主さんも優しくて美人で神。



 ・値段:安い気がする。5倍くらい払っても良い。



 ・料理:めちゃめちゃ美味しい。ほうじ茶と合わせると神。



 ヘンリエール的総合評価:98点。

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