第6話 接待金箔料理は味がしない
「アラカセーギ社長、この間は大量の継続発注をいただき誠にありがとうございました」
「がっはっは! 気にせんでええ気にせんで! ウチの顧客にも大人気やねん、おたくのエルフード」
「喜んでもらえてなによりでございます」
こんばんは、ヘンリエールです。
今日はわたしが担当している取引先のアラカセーギ社長の食事会にお呼ばれしました。
〝金箔料理・じぱんぐ亭〟
金鉱石を使用した料理かしら……? 人間族はそんなものまで食べるのね。
「お待たせいたしました。こちら、水菜と大根のサラダ~金箔の降る夜に~でございます」
みずみずしくて美味しそうなサラダの上から、店員さんがキラキラした金色の粉を振りかける。
「がっはっは! 美しい美しい! さあヘンリエールさん! 遠慮せずに食ってくれたまえ!」
「は、はい。いただきます……」
…………。
「どうかね? 金箔の風味でただの葉野菜も上品な味になるだろう!」
「は、はあ。とっても上品な味ですね……」
正直、まったくもって金箔の風味は分からない。
サラダは普通に美味しい気がする。
「お待たせいたしました。こちら、キンメダイの煮付け~目だけじゃなくて全身金箔~でございます」
身の締まった美味しそうなお魚の煮付けの上から、店員さんがキラキラした金色の粉を振りかける。
「がっはっは! めでたいめでたい! さあヘンリエールさん! 遠慮せずに食ってくれたまえ!」
「は、はい。いただきます……」
…………。
「どうかね? まるでシャチホコの煮付けを食べているみたいだろう!」
「は、はあ。味が輝いてとっても美味しいです……」
シャチホコの煮付けというのをそもそも食べたことないから分からないわ。
「お待たせいたしました。こちら、イザヨイ地鶏の炊き込みご飯~羽ばたきの金箔~でございます」
釜で炊いた美味しそうな炊き込みご飯の上から、店員さんがキラキラした金色の粉を振りかける。
「がっはっは! 舞い上がれ舞い上がれ! さあヘンリエールさん! 遠慮せずに食ってくれたまえ!」
「は、はい。いただきます……」
…………。
「どうかね? 黄金の鶏が自由に羽ばたく様が目に浮かぶようだろう!」
「は、はあ。自由の国イザヨイを感じられるような素晴らしい味です……」
この後も出てくる料理すべてに対して金箔がこれでもかと振りかけられ、そのたびにアラカセーギ社長は大喜びしていた。
わたしは接待のストレスで味が分からない謎のキラキラした料理を、仮面のような作った笑顔のまま食べ進めた。
―― ――
「アラカセーギ社長、本日はお誘いいただきありがとうございました」
「がっはっは! 気にせんでええ気にせんで! あ、今日の食事会はそっちの社長さんには内緒やで? 嫉妬されたら敵わんからのう!」
「は、はあ」
「それじゃあまたギルドでのう!」
「はい。ご馳走様でした」
…………。
……………………。
これって金箔換算で残業代貰えませんかね?
【金箔料理・じぱんぐ亭/最上級金箔会席コース】
・お店:なんか庭にオシャレな石とかあった。
・値段:多分めっちゃ高い。
・料理:眩しい。金箔の味分からん。多分一人で気兼ねなく食べられたら普通に美味い。
ヘンリエール的総合評価:48点。
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