第5話 スラム街の激安たこ焼きは美味いのか?
「うう、お腹空いたなあ……」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日は外回りの仕事をしていたのだけれど、お得意様への訪問スケジュールが重なってお昼休みが取れなかったの。
おかげでお腹ペコペコ。ギルドに帰る前になにか食べられたらいいんだけれど……
「はあ、今月はお財布がちょっとピンチなのよね……」
元々あまり自炊をしないので食費がかかりがちなんだけど、それとは別でちょっと前に高級な卵かけごはんのお店に行ったせいでいつも以上にお金が無い。
「はあ。またギルドで廃棄のエルフードを貰おうかしら」
エルフードというのは、わたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』の主要商品だ。
野菜や木の実、豆類、小麦などを混ぜて焼き上げた携帯用の完全栄養食で、元々はエルフ族の間でよく食べられていたものだったのだけれど、最近はヘルシー志向の人間族の貴族層などで人気が出てきている。
わたしもエルフ族の国『タプナード』にいた頃はよく食べていたし、そもそも今まさにエルフードを売り込む仕事をしているのだけれど、最近は人間族の料理が美味しくて少し飽きてきている。
「フライドゴブリンは安いけど、ちょっともう食べる気には……あら?」
どこからか美味しそうな匂いが漂ってくる。こっちは……スラム街、よね?
「ゴクリ……ちょっと怖いけれど、行ってみようかしら」
スラム街。
魔物に襲われて親を亡くした子供達や、棲家のない無職の人たち、罪を犯して隠れ潜んでいる指名手配犯などが住んでいる無法地帯だ。
とはいえ、スラム街の中で自警団のようなギルドが活動していたり、ボランティアで孤児の世話をしているギルドもいるので、日の当たる大通りを歩いている分にはそこまで危険はない……はず。
「らっしゃいらっしゃい! 安いよ安いよ~!」
〝たこ焼き屋・スラたこ〟
「たこ焼き……?」
スラム街の屋台で良い匂いを漂わせていたのは、たこ焼きという一口サイズの丸い食べ物だった。
屋台のおじさんが二本の鉄串でクルクルと器用に鉄板の上でたこ焼きを回している。
「そこのエルフの嬢ちゃん、たこ焼きどうだい! ひと船100エルだよ!」
「安い!」
船のような紙のお皿にたこ焼きが6個乗って、たったの100エル。
これはもう、食べてみるしか……
「あ、あの……たこ焼きひと船ください!」
「毎度! ソースをかけて……青のりとマヨネーズはどうすっかい?」
「えっ? えーと……」
「トッピングは無料さね」
「じゃ、じゃあ両方お願いします」
「はいよ! 熱いから気を付けて食べんなね!」
「あ、ありがとうございます」
たこ焼きを受け取って、近くにあったボロボロのベンチに座る。
「うーん、この黒いのはソースね。とっても良い匂い……」
前に定食屋さんで食べたコロッケを思い出す。
ソースがかかっているってことは、似たような味なのかしら?
「森羅万象の恵みに感謝を。いただきます。はむ……あっっっつ!!!! はふ、はふ、はふ……!!」
中身がマグマみたいに熱くてトロトロで、思わず大きな声を出してしまった。
「はふ、はふ、ふう……これ、美味しいわ」
中に何かコリコリするお肉みたいなのが入っていた気がする。これがタコってやつなのかしら。
あと、ソースとマヨネーズの相性がバツグン。
味が濃くてなんでもマヨソース味になっちゃいそうだけど、たこ焼きにはとっても合うわね。
わたしは夢中でたこ焼きを頬張った。
―― ――
「ふう、美味しかった」
…………。
「うーん……よし!」
お財布の中には100エルコインがもう一枚。
わたしのおなかはまだまだ余裕。
「おじさ~ん! たこ焼きもうひとつくださ~い!」
…………。
……………………。
後でタコ調べたら結構グロかった。魔物?
【たこ焼き屋・スラたこ/たこ焼き2船】
・お店:ボロボロの屋台。でもソースの良い香り。
・値段:めっちゃ安い。
・料理:美味しい。アツアツ注意。
ヘンリエール的総合評価:82点。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます