第4話 ハーピィ族の産みたてTKGは色々ヤバい



「ここよね……」



 〝エッグランド・はぴはぴ☆ハーピィ〟



「本当にここで美味しい卵かけごはんが食べられるのかしら……?」



 こんばんは、ヘンリエールです。

先日、職場のパーシアス先輩と食べた親子丼の影響で最近は卵料理の開拓にハマってます。

でも生の卵はまだ食べたことが無いので、今日は美味しい卵かけごはんのお店にやってきました。



「なんだか、お料理屋さんって感じの雰囲気はしないんだけど……」



 パーシアス先輩に卵かけごはんのことを聞いたときは『そんなもん炊きたての白米に生卵割り混ぜて醤油をちょろっと垂らしてかっこむだけだよ』って言われたんだけど、わたしってば料理を全然したことなくて卵も割ったことないから、最初だしちゃんとした卵かけごはんをお店で食べようと思ったのね。

それでお店を調べてここにたどり着いたんだけど……



「うう、目がチカチカする……」



 ピンク色にピカピカ光る怪しげな看板。

周りのお店も似たような感じで、しかも料理屋じゃなくて宿屋とか、あとお風呂屋さんとかが多い。



「あそこは……観光案内所かしら? こんな夜でもやってるのね」



 お昼に来ようと思ったんだけど、この卵かけごはんのお店は夜から早朝の間しか営業してないとのことなので、仕事終わりに食べることにした。



 ピロリロリリ~ン♪



「ようこそいらっしゃいましたお嬢様。ご予約はされていますか?」



「い、いえ……予約してないんですけど」



「かしこまりました。本日は〝産みたてタマゴかけごはんコース〟と〝半熟温泉タマゴコース〟どちらのご利用でしょうか」



「えっと、卵かけごはんを……」



「かしこまりました。在籍情報を確認いたしますので、少々お待ちください」



「は、はい……」



 店員さんがカウンターの奥へ。

手持ち無沙汰になって何気なく店内を見回すと、料理の値段表みたいなものを発見する。



「……へっ!? 卵かけごはん、5000エルもするの……!?」



 め、めちゃめちゃ高いじゃない……! もしかしてここって、かなりの高級店だったのかしら……?



「お待たせいたしましたお嬢様。そうしましたら、大・中・小サイズがそれぞれ在籍しておりますので、その中からひとサイズお選びください。個別指名の場合は2000エルの指名料金を追加でいただきます」



「は、はあ……その、サイズによって値段は変わるのですか?」



「当店では一律となっております」



 なんだろう。小さい方が味が濃厚とか、大きいのは量はあるけどあっさり味とかがあるんだろうか。



「それじゃあ、小サイズでお願いします」



「かしこまりました。小サイズですと……今回は新人のエッグガールになりますので、デビュー割りで4000エルになりますね。それではお部屋へ案内いたします」



「はい……えっなに? エッグガール?」



 ―― ――



「こちらになります。ごゆっくりお召し上がりください」



「はあ、どうも……」



 卵かけごはんを食べに来ただけなのに、宿屋の個室のような所に通された。

さすが高級料理店、部屋にベッドまで付いてるわ。



 コン、コン。



「し、失礼します」



「あ、はーい。どうぞ」



 部屋の中を観察していると、女の子の店員さんが料理を持ってやってくる。

あれ? 持ってるのってどんぶりに入ったお米と調味料だけよね。卵は……?



「その、ワタシ、今日が新人のヒバリといいます。よろしくお願いします……!」



「あっそうなんだ。わたしはヘンリエールよ、よろしくね」



 そっか、今日がお仕事初日なんだ。

わたしの新人の頃を思い出しちゃった。がんばってね、ヒバリちゃん。



「その、ワタシ、最近タマゴが産めるようになって。だからサイズは小の中でもちっちゃいんですけど」



「あはは、大丈夫よ。新人の頃はみんなそんな感じ……ん?」



「それじゃあ早速いきますね。その、ヘンリエールさん。両手を前に出してもらって……」



「え? あ、はい……」



 ヒバリちゃんに言われた通りに手を出すと、その上にひばりちゃんが跨って、パンツをおろし……



「ちょちょちょちょ!? タマゴって、えっあっそういう!?」



「あっもう出てきちゃいそう……! ヘンリエールさん、ワタシのタマゴ、受け止めてっ……!」



「は、はい! いつでもどうぞ!」



「あっ……!!!!」



 ……。



 …………。



「はい、ヘンリエールさん、卵かけごはん、できましたよ」



「あ、ありがとう……」



「味付けは醤油と〝おしお〟があるんですけど、どっちにします?」



「へ? 塩?」



 塩で食べるなんて聞いたことないわね……通向けのやつかしら。



「最初だし、醤油にしておくわ」



「わかりました。はい、それじゃあどうぞ、あ~ん……」



「あ、あ~ん……」



 もぐ、もぐ……



「……あ、美味し」



 なんだろう、シンプルイズベストというか。醤油をちょっとかけただけなのにかなり濃厚な……産みたてタマゴの味……



「ふふ、よかった。あ、タマゴの殻は持って帰れますけど、どうします……? オプション料金で1000エル追加になっちゃうんですけど」



「ええ……別に要らない……」



「……ワタシが初めてお客さんに出したタマゴだったんだけど」



「持って帰るわ」



「ありがとうございます……! えへへ、ヘンリエールさん、優しい」



「……お仕事、がんばってね」



「はい……!」



 わたしは夢中、というか夢を見ているような気分で卵かけごはんを食べ進めた。



 ―― ――



「お会計、お食事のほうが新人割りで4000エル、想い出のお持ち帰りが1000エルで、合計5000エルになります」



「はい」



「ちょうどいただきます」



「ごちそうさまでした」



「ありがとうございました。またお越しくださいませ、お嬢様」





 …………。





 ……………………。





 えっちなお店じゃん。





 【エッグランド・はぴはぴ☆ハーピィ/ヒバリちゃんの産みたてタマゴかけごはん】



 ・お店:ちょっとえっちな雰囲気。個室なのは良かった。



 ・値段:めちゃめちゃ高い。オプションがえっちだった。



 ・料理:提供方法がえっちだった。でも正直かなり美味しかった。



 ヘンリエール的総合評価:69点。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る