第41話 不思議な遠出


「……あの、フェリシアさん。できれば見ていないで止めて欲しかったのですが……」


「あら私ったら。ごめんなさい。でも、なんだか微笑ましくて。ふふっ」


数時間が経って落ち着きを取り戻したみんなからやっと解放されて息を切らしながら椅子に座り込んで彼女に伝えるが……あんまり反省してないらしい。


「それにしてもレクスくん以外にも人が来るとは思いませんでした。どういう風の吹き回しですか、リリナさん?」


「……ギルドの役員として、監査が必要と思っただけです。ご理解していただいてくれると嬉しいです」


……なぜかバッチバチと彼女達の間に火花が散っている気がする。もしかしてだけどこの人たち仲が悪い……?一体何が二人の間を悪化させたんだ?


「でも助かります。レクスくんだけでは面倒見きれないかもしれませんから」


「俺をなんだと思ってるんですか……」


一応貴方、俺を育てたんですよね?そんな信用ならないですか?


「でも、先程までみんなに埋もれていたじゃないですか?」


「……それは言わない約束ですよ」


凄く的を得た言葉に俺は顔を逸らしながら答える。

……やっぱり面倒見きれないかもしれない。少しだけ不安になってきた。


「でも安心してください。ちゃんと言いつけてありますので」


「……ちなみに、もしみんなが言う事を聞かなかったら?」


「レクスくんであれば知ってるのではありませんか?そんなときは……然るべき対応をするまでです」


「お、おぉ……」


……つまりフェリシアさん直々に怒られるということか。ふと、昔の記憶を思い出す。

この人の楽しみにしていた食事を誤って食べてしまった時……とてつもない笑みを浮かべながら「懺悔室に向かいましょうか」という圧のある言葉を。

そしてあの凍えるような寒い空間で少なくとも三時間以上はお説教をされたこと……今考えても恐ろしく感じていまい、背筋が凍る。


それ以来、フェリシアさんだけは怒らせないようにしているんだが……如何せんたまに怒られてしまうことがある。

主に恋愛「レクスくん???」


「………なんでもありません」


……もう下手なことを言うのはやめよう。殺されかねない。


「……やっぱり親しい。もしかして私の知らない所でもう関係が進んでるのでは…………」


そんでもってリリナさんはなにコソコソ話しているのですか?一応聞こえていますからね?意味はよく分からないけど。


「……じゃあみんなのことはお二人に任せて、私はやるべきことを果たしましょうか」


そういうと、フェリシアさんは大きな荷物を持って椅子から立ち上がる。


「?どこかに行くんですか??」


「えぇ。私も面倒をみたいのは山々なのんですが、少しがありますから


「……またですか?」


俺がこの教会に住んでいた頃もこうやってどこかに行って、数日は帰ってこなかった時がある。

最近だとその頻度は減ったが……未だにその理由は分かっていない。

俺の様子に気がついたのか、フェリシアさんは少し苦笑しながら答える。


「そんなに心配しないでください。少し掛かりますが、必ず戻ってきますので」


「いや心配はしてないのですが……」


「ふふっ、照れ屋さんなんですね。いい子いい子」


くっ、俺の話を聞かないでまた人の頭を撫でたりして……フェリシアさんは俺の頭を撫でながら微笑み、数分経って俺から離れ、扉に向かう。


「では、行ってきますね」


「……はい、いってらしゃい」


そして最後にフェリシアさんは俺に手を振ってから荷物を持って部屋から出ていった。


「……じゃあ、俺達はみんなのお世話でもしましょうか」


「は、はい……!」


少しだけ赤みを帯びた頬をしたリリナさんに言ってから、俺達もみんなの所に向かうのであった。





現在、このミルティーユ含め世界ではある問題となっていることがある。それが、孤児の増大についてだ。

奴隷売買、人攫いなど様々な原因があるが、いずれも場合も生まれた赤ん坊、幼児が捨てられ、それにより孤児が増大している。


そしてそれと比例するように、また別の問題が増えているのも事実であった。それが……各地方で起こっている人の失踪による行方不明。


「おい、どうなっている!?なんで仲間がやられているんだ!?」


とある洞窟にて、盗賊である大男が声を荒げる。彼の視界に広がっていたのは、血溜まりと多くの仲間の無惨な姿であった。

怒りと恐怖。その感情が入り混じっている中、その死体の山に一人の女性が剣を持って佇んでいる。

その女性は大男の方に振り向き……足音すら立てずに目の前まで迫り、その男の首を切断した。


「……あの子たちが感じた苦しみをその身を持って味わいなさい」


それは、普段子供に見せる優しい声色ではなく、一欠片の感情も感じられない無機質な声。


人々はその事件の首謀者のことをこう呼んでいる。





と。







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