第39話 わからないもの
フェリシアさんの依頼……及びみんなのお世話を引き受けて、彼女は先に帰っていった。
俺はというと、リリナさんに指名依頼の手続きをしてもらってる。
あはは……フェリシアさんの我が儘なのに申し訳ない気持ちになる。
「……手続きを終えました。こちら、受け取ってください」
淡々とした声でサインが書かれた依頼書を渡された。
依頼主にフェリシア♪と書かれており……♪書く必要あったか?
少し……いやかなりはしゃいでいるであろう彼女に苦笑するとともにリリナさんから依頼書を受け取る。
「ありがとうございます。すみません、こんなことで面倒な手続きを」
「……いえ。特に問題ありません。レクスくんのためならば」
「リリナさん………ん?」
「んんっ。なんでもありません。では今回も頑張ってください」
一瞬だけ違和感を感じたものの、俺はリリナさんから依頼書を受け取る。よし、これでフェリシアさんの所に向かえる。
彼女にお辞儀をしつつ、俺はその場から離れようとして……離れようと……あれ?身体が動かない?
「……レクスさん。少しだけ待っててもらえませんか?」
すると、俺の腕を掴んでいるリリナさんがそう言ってきた。いつもよりも気迫のある彼女の雰囲気に萎縮しそうになりながらも、俺は頷く。
すると、リリナさんは受付場に離れてどこか別の場所へと向かっていった。
「……一体何事だ?」
唖然として様子で俺は彼女の後ろ姿を見守ったのであった。
◇
「………んで。私が貴方の仕事を受ければいいの?」
「お願いだよイミリア〜!レクスくんと一緒に行かせて〜!」
両肩を掴んでゆさゆさと身体を揺らしながら、必死な様子でイミリアに頼み込む。リリナの様子を見て、でかいため息を吐きながら、イミリアは事実を伝える。
「あんた、この前レクスくんと一緒に帰ったそうじゃない。それで何?二人きりだって自覚した瞬間に、発狂して逃げ出してね」
「うぐっ……で、でもあの時の私とは違うよ!!今度は目的があってレクスくんと一緒に向かうんだから!!」
「……その目的ってなんなのよ?」
するといつも騒がしかったリリナが突然静かになり、イミリアもいつもの彼女と違うと悟る。
「………女がいる」
「……は?」
「レクスくんに女がいる可能性があるんだよ!!私の知らないところで!!!」
「いや……もしかしてあんた、そのためにわざわざギルドの仕事サボろうとしてるわけ?人として終わってるわよ?」
「た、確かにそうだけど!」
「自覚してるのね」
「……で、でも私にとっては重要なことなの!確かめたいことなの!だからお願いイミリア!!レクスくんの所に連れて行かせて〜!」
彼女の言葉と様子を見て再びため息を吐くイミリア。仕方ないであろう。彼女は今、仕事人ではなく恋する乙女として動こうとしているわけなのだかえあ、はっきりと言えばとんでもないやばい奴なのである。
(……昔のこいつは優秀だったのになぁ………な〜んでこうなっちゃったんだか)
昔のリリナのことを思い出し、今と比べる。
僅か十歳という年齢でありながら、仕事も優秀、魔法の使い手としては随一の実力者。みんなの憧れに近いミルティーユの看板娘……それが今、一人の男のために動こうとしている。
人生何が起こるか分からないものだと苦笑しながらもイミリアは苦笑しながら答える。
「いいわよ」
「……え?」
「いいって言ってんの。ほら、さっさと着替えてレクスくんの所に行ってきなさい。じゃないとあんたが言う女に彼、取られちゃうわよ?」
「っ!?!?だ、だめ!!それはだめ!!!!」
リリナは焦り出したのか、急いでその場から立ち上がり、予め持っていたコートを来て、受付場から飛び出していった。
「……あれ?リリナさん?なんでここに?というかどうしたんですかその格好」
「なんでもありません。それよりレクスさん、早く行きましょう」
「え?え?ちょっとまってください。リリナさんも行くんですか?」
「念の為です。私も同行します。さっ、今すぐに」
「ちょちょちょちょ!?!?」
レクスの返答など問答無用なのか、彼の手を引いてそのままギルドから出ていった。
「……ほんと、世界って面白いわよね〜こういうのが見れるからさ」
二人の話を聞いてイミリアは面白そうに笑ってから、自分の仕事をするために持ち場に戻るのであった。
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