第38話 依頼……?
「フェリシアさん、詳しくお話を聞かせてください」
体勢を低くして、彼女の話を聞けるようにする。
静寂な空間が俺たちを支配する。そんな中、フェリシアさんが……くすっと俺を見て笑みを溢した。
「えっ?なんで笑うんですか?」
「ふふっ、だってレクスくん。真剣な顔になって冒険者していますもの。間近で見てみると感慨深いものが湧いてきて、つい」
「ついって……」
貴方が真剣な表情になったからじゃないですか……とジト目で訴えかけるとフェリシアさんがくすくすと口元を手を押さえて笑っている。
なんだかバカにされたようで悔しい……。
「はぁ……それでなんです?フェリシアさんの依頼って?」
「あら、そうでしたね。前置きはこれくらいにして……レクスくんにはお世話をして欲しいのです」
「お世話……?もしかして教会のみんなですか?」
いやそれならなんとなく理解できるけど……。
「……それ、わざわざ依頼出してまでやることですか?」
「いいじゃないですか。私、依頼出してみたかったんですよ。でも私が頼む依頼なんて孤児のお世話をするぐらいしかありませんし、他の方は信用なんて出来ませんし、それでしたらレクスくんに指名依頼を出したほうがいいと思ったんですよ」
「いや、だからって……直接言いに来てくださいよ。俺の家と教会って距離近いですよね?迷う所でもないでしょ?」
「まぁまぁ。いいじゃないですか、ふふっ」
「うっ……」
この人がその気になったら俺は何も言い返せない。長年彼女の元で育った経験だ……息子の仕事現場を見ないでほしい。
「……お二人は知り合いなのですか?」
その様子を見たリリナさんが冷たい空気を醸し出しながら再び俺達に聞いてくる。いや別にそこまで怪しい関係じゃないので警戒するのやめてくれませんか?
「はい。ただならぬ関係です」
フェリシアさんが笑顔でリリナさんに伝えた。まぁ間違ってはないしな、親と子なんだから。なのに……リリナさんのオーラがより一層濃くなったような気がする。
「…………………た、ただならぬ関係?ただならぬ……ただならぬ……」
詠唱するようにフェリシアさんが吐いた言葉をぶつぶつと呟き、どこか悲壮感が醸し出している。正直凄く怖い……。
「まぁリリナさんのことは後で置いておきましょう。お話を進めたいですし」
「いや放って置いたらだめでしょ……フェリシアさんの依頼ですね?分かりました。その依頼引き受けますよ」
「あら、引き受けてくれるのですか?てっきり帰れと言われるかと」
「そんな薄情な息子に育ってないですよ。その代わり、報酬はたんまりと貰いますからね?ちゃんと用意してくださいよ?」
「もちろんです。ふふっ、なんだか楽しみです♪」
両手を合わせて俺を育てた母とは思えない笑顔を浮かべ、楽しそうにしている彼女を見て苦笑してしまう。
「………ただならぬ……ただならぬ……私の知らないところでレクスくんが女を………」
「……あの、リリナさん?そろそろ正気に戻ってください。別に俺とフェリシアさんはそういう関係ではありませんから」
「まぁレクスくん。私は都合のいい女だって言いたいのですか?私、とても悲しいです……」シクシク
「ちょっと黙っててもらえませんか?」
そのせいでさらにリリナさんが勘違いしたのか。俺とフェリシアさんが恋人関係と言い出し……そのせいかフェリシアさんは謎のダメージを受けて……混沌と化したその状況に俺はどうすることも出来ずにいたのだった。
◇
成長した息子のことを見る。
前まであんなに小さかったのに……今ではとても大きく、逞しく成長してそれが嬉しくもあり……同時に、悲しくもなる。
(……ごめんなさいね、レクスくん。貴方を利用するようなことをして)
だが、己の使命を忘れてはならない。
彼の姿を見ながら私はそっと自信の胸に手を当てるのだった。
【もし面白いと感じたらフォローや⭐️、❤️をお願いします!!!】
また、こちらの作品の方も見てくださると嬉しいです。
《全てを失う悲劇の悪役による未来改変》
https://kakuyomu.jp/works/16818093076995994125
《会社にクビと宣言された俺が登録者500万人以上の独占欲の高い配信者に拾われる話》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます