第35話 魔法講義なのに……
マリーに強引に連れて行かれて、外を歩いている。どこに向かってるかも分からない……ほんとに俺は何をされるんだ?
「ほら、リリナ嬢も待ってるわ。さっさと行きましょう」
「あの、リリナさんがいるのは分かりましたけど、一体どこに連れて行かれるんですか?」
「ん?あぁ、言ってなかったわね。平原よ」
……えっ?平原?
予想だにしなかった場所に俺は困惑してしまう。い、いや図書館とか、ギルドの訓練場でもなく……街の外?
「まぁリリナ嬢なら大丈夫よ」
「ちょ、ちょっと待ってください!?ほんとにリリナさん大丈夫なんですかそれ!?」
「うるさいわね。ほら、喋っている暇あるなら歩くわよ」
えぇ……なんか雑すぎませんか貴方?
心配と何をされるか分からない不安を抱きながら、俺はそのままマリーに連れて行かれるのであった。
◇
街の外に連れて行かれ、本当に草原へと向かっていったお転婆なお嬢様。
そんで今、俺の目の前には……リリナさんがいた。
しかも、いつもの受付嬢の制服ではなくどこか冒険者と思わせられるリリナさんの姿があった。
「……お待ちしておりました。レクスさん、マリー様」
「悪かったわね。こいつがお菓子作ってたから連れてきたわ」
「……レクスくんのお菓子?」
あれ?リリナさんの気配が一瞬変わったぞ?なんか俺の方を見ているような……だが、それも一瞬で彼女が咳払いした時にはいつも通りに冷酷なリリナさんに戻っていた。
「とにかく始めましょう。あまり時間もありませんので」
「……あの、リリナさん」
「?なんでしょうか??」
「大丈夫ですか?怪我とかしていませんか?」
「…………………はい。大丈夫、です」
「あの、烏滸がましいのは分かっているのですが……俺のために動いてくれるのは凄く嬉しいんですけど、無理だけはしないでくださいね?怪我とかしてほしくないですし」
「…………………………………は、はい………気をつけます」
長い間を開けて、彼女が返事をしてくれた。うん、まぁね?いつもお世話になってるわけだからね?少しは心配してもいいよね?
(………レクスくんに心配された……う、嬉しい!優しい!!好き!!!)
尚、心のなかでリリナさんが嬉しそうにはしゃいでるのはもちろん気づかずにいた。
「……なんか見ていて不愉快だわ」
「ま、マリー様?いてててて!?つ、つねらないでくださいよ!?」
そんで何故かマリーがいらついてるように俺の腕をつねってくるし……ほんとに何なんだ?
そんなことを思いながら俺は二人から魔法のことを教えてもらうのであった。
◇
この世界には、魔法という不思議な力がある。
その人によって何が得意不得意かが決まってくる。例えばだけど俺だったら身体能力……つまり強化系だ。
マリーみたいに攻撃魔法系に特化している人もいれば、傷を癒やすことのできる回復魔法系に特化している人もいる。
なんなら魔法に才能がない人だっている……らしい。
その他にも何か特殊な技術だったり、マリーの魔法剣みたいに魔力だけを応用したものもある。
……ここまでが二人から教えられて分かったことだ。じゃあ今はなにをやっているかっていうと……。
「レクスなら実践で鍛えた方がいいわ。変に教え込むより身体で教えた方が効果的よ」
「それは危険では?まずは一から基礎を頭で叩き込んだ方が絶対いいですよ。それに、レクスさんの魔法を見てみましたが魔力の流れがとんでもなく悪いです。おそらく独学で魔法を使ったんだと思います。今改善しないと命の危機もあります。絶対に治すべきです」
……このように、途中から俺に教えることではなくどう鍛えるかの方針について議論してしまったのだ。
そのせいで、魔法のことについて知ることができず、結果俺は何をすればいいか分からなくなった。
多分俺が割って入っても話なんて聞かないだろうし……。
「……自分で勉強するか。えっとなになに……魔力回路?術式の構築……?へ、並列処理……?」
……だが、魔法の専門用語が俺に分かるはずもなく、結局二人の議論が終えるまで待つのであった。
こうなるんだったら父さんと母さんに魔法を教わるんだった……。
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