第34話 メイド長さんの講義
「それでは、マカロンの作り方をお教えしたいと思います」
「………」
「?どうされましたか?そんな黙り込んで?」
翌日、俺は今クライバス家の屋敷にてスミーヤさんにマカロンの作り方を教えてもらうためにキッチンにいる。いるんだが……俺は目を手で隠しながら目の前にいるスミーヤさんに言い放つ。
「……なんて格好してるんですか!?」
「?」
「いや分からなさそうにしないでくださいよ!服を着てください!服を!!」
「履いているではありませんか。下着を」
「いや服の話をしてるんですよ!?」
何故かメイド服でさえ着ず、下着姿のまま調理しようとする彼女にツッコんだ。どんな神経しているんだこの人!?
「ちなみにですが昨日おっしゃった通り履いてきましたよ。Tバック」
「いやそんな情報いりませんよ……」
「……なるほど。であれば私のあられのない姿を」
「服を着てください服を!!」
素っ裸になろうとしているスミーヤさんに床に脱ぎ捨てていたメイド服を投げる。彼女はそれを何故か避けて、再び脱ごうとしていた。
「ちょっと!?」
「……仕方ありませんね。レクスさんを揶揄うのはここまでにしておいて早速作っていきましょう」
……あれで俺を揶揄っていたのか?
そんな事実に仰天していると、いつの間にか下着姿からメイド姿に変貌していたスミーヤさんが材料を用意している。えっ?この人いつの間に着替えたの……?
「では改めて作り方をお教えしたいと思います」
「よ、よろしくお願いします……」
とんでもない技術を披露された後、スミーヤさんがテキパキと作業をしながら俺にマカロンの作り方を教えてくれた。
正直、砂糖を味見した時は食べたことがない味がして困惑したけど、同時に納得もした。どうやら甘味っていう味らしいけど……ほっぺたが滑り落ちそうな感覚に陥ったのを覚えてる。
そんなことを感じながら、俺はマカロンを作っていくのであった。
◇
「……まぁ、妥協点と言ったところでしょう。これなら子どもにも食べれるものだと思います」
俺が作った不格好なマカロンを食べて、スミーヤさんが満足そうにしながら感想を言ってくれた。
つ、疲れた……この人、何気に厳しいところあるなのか変なもの作ったら淡々と不評を言われて正直結構心に来た。
「うちのメイドと比べたらとても手際がよいですよ。これでも褒めているほうです
」
「そ、その割には厳しくないですか……?」
「厳しいのも優しさの一つですよ」
うぅ……事実だからか、何も言い返せない。疲れ切った身体で俺はスミーヤさんが作ってくれたマカロンを一口食べる。
「……あ、甘い。さっきよりも」
「甘味というのは疲れ切った時に食べるとより美味しくなるらしいですよ。今度フェリシアに伝えてください」
「へぇ、分かりました……ん?」
なんでスミーヤさんの言葉からフェリシアさんの名前が……?というかなんで俺とフェリシアさんのことを知ってるんだこの人?
「これでも交友関係は大事にしてるのですよ。周りに悪い虫がいたら対処しませんと」
「わ、悪い虫……」
……もしかしてだけどスミーヤさんって暗殺関係の人だったりしますか?異様に気配を感じなかったり、凄い俊敏に加えてさっきの発言で背筋が凍ってしまう。
「レクスさん」
「は、はい……?」
「フェリシアに会ったら伝えておいてください。いくらエルフでも婚期を逃すと寂しい思いをしますよって」
「………それで怒られるのは俺なんですけど?」
「まぁそれでもいいんじゃないですか?私はそれを見守っていますから」
……ほらこういうところとか凄いこと言ってるよこの人?
なんか、クライバス家の人たちって変な人しかいないのか?ウロス様はともかく、スミーヤさんだったり……マリーだったり……。
「私がどうしたのよ?」
「ふぎゃあ!?!?」
背後から突然声を掛けられて変な声を出してしまった。振り返ると、そこにはマリーの姿が……。
「な、なんでここにいるんですか?」
「なんでって……ここに住んでるんだから当たり前でしょ?あ、そのマカロンもらうわね〜」
そう言いながら、パクっと一口食べてると、彼女は俺の腕を掴んでどこかに行こうとする。
「ちょちょちょ!どこに行こうとするんですか!!??」
「……なにって魔法教えるって言ったでしょ?リリナ嬢とも話はつけてあるし、早く行きましょ」
「い、今ですか!?」
なにも準備が……ていうか力強いなこの人!?
そのまま俺はマリー様に強引に連れて行かれるのであった。
「あら、マリー様にも春が来ましたかね。少し見守るとしましょうか」
そんな声が聞こえたが……スミーヤさん、尾行しないでくださいね?
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