第31話 目標
「……ふぅ。とりあえずこれで全部ね」
マリーが額を手で拭いてから、辺りを見やる。そこには、大量のマクバドリの死骸が大量に広がっていた。
正直に言えば、あまり見たくはない光景ではあったけど……。
「ほら、何顔顰めてんのよ。あなただっていっぱい殺したじゃない」
「た、たしかにそうなんですけど、こう間近で見ると惨いとしか……」
「……貴方って初心者冒険様みたいなこというわよね。強いはずなのに変な人」
あはは……だって前までずっとお手伝いみたいな依頼受けてたんですよ?仕方ないじゃないですか。
前もベルゼとエスティアだけでレッドベアの討伐行った時も、正直血の生臭さが慣れなかった記憶がある。
「……というか、また敬語に戻ってるわよ貴方」
「す、すみません……」
「……はぁ、まあいいわ。わざとじゃないのは分かってるし。慣れるまでそれでいいわよ。それじゃ、早速部位の剥ぎ取りでもしましょ。確か討伐証明って羽だったかしらね……」
そう言いながら、マリーは自身の荷物からナイフを取り出してマクバドリの残骸のところへと向かっていった。
俺も彼女の後に続くように向かっていく。
うぅ……未だに慣れないなこの感覚。
鼻を抑えながらも、俺もナイフを取って、マリーと手分けして剥ぎ取りをしていく。
「……貴方って、どうして冒険者になったの?」
「えっ?突然どうしたんですか?」
マリーからそんなことを聞かれて驚いてしまう。
「前、貴方が言ってたことが気になってね。冒険者になった意味とかなんとか」
「あ、あー……」
……そういえばそんなことも言ってたような言ってなかったような……。
「……ないわけ?あんな啖呵切っておきながら」
「い、いやあるんですよ?あるんですけど……」
……改めて人に聞かれると恥ずかしいから、つい言い淀んでしまう。
「目的……っていったらおかしいかもしれませんが、なりたいと思う像はあります」
「……それって?」
「父さんや母さんみたいな冒険者です」
自分の親でもあり、憧れでもある二人の姿。それが、俺の目指す冒険者の像であった。
「貴方のお父さんとお母さんは有名な人だったの?」
「いえ、大したことないどこにでもいるような冒険者でしたよ。でも、どんな人でも迷わずに助ける姿勢とか、強さとか……小さい時からずっと見てきたんです」
「……そうなのね」
「はい。だから、いつか二人と並ぶ……いや、超える冒険者になりたいんです」
誰かを平等に助け、みんなが憧れる父さんや母さんみたいな冒険者……それが、今の俺の目標だ。
「とは言っても、まだまだ未熟だから二人には追いつける気がしませんが」
「……そうなのね。私と似てるかも」
「マリー様も誰かを目標にしてるのですか?」
「えぇ。あなたと同じで、全く背中が見えないわ……親の背中って大きいのね」
感慨深そうに、でも少しだけ嬉しそうにマリーは笑みを浮かべる。
やっぱり、マリーはウロス様か……雰囲気だけでも分かってたけど、あの人の強さがとんでもないのは理解していた。
なぜかフェリシアさんと似たようなものを感じた気がしたけど……。
「でも、このまま負けっぱなしになるつもりもないわ。いつか絶対に母様を超えてやるわ」
力強く拳を握って、子供のように目をキラキラとさせているマリー様を見て俺は思わず笑みを浮かべてしまった。
すると、そんな俺の様子に気付いたのか、恥ずかしそうに咳払いをしてから切り替える。
「さ、さぁやるわよ。こんなことに時間を潰したら勿体無いわ」
「……えぇ。そうですね」
彼女の一面を見て少しだけ嬉しさを感じつつも、俺たちはマクバドリの死骸の後処理を行うのであった。
「そういえば貴方の両親の名前ってなんていうの?」
「えぇと……父がテガで、母がミリーです」
「……聞いたことないわね。やっぱり無名なのかしら?貴方の両親だから有名だと思ったけど……」
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