第30話 戦闘
「……見えてきたわよ」
ミルティールから少し離れたとある岩場にて。マリー様が目的のものを見つけ、声を上げる。
「あれって確か……」
「そう、ムクバドリの巣。今回のターゲットはあいつらよ」
目の前には黒と茶色が混ざった羽毛に、小柄な体型とは思えない大きな翼、獲物を取りやすいように発達した鋭い嘴をした鳥が数十羽ぐらいいた。
ムクバドリの巣にはおそらく行商人の人たちを襲った時に取ってきたであろう宝石や物、食糧などが見える。
そういえば、昔父さんがよく「あのうんこったれ……」とか言いながら空を飛んでいる鳥を見ていたが……どうやら相当鬱憤が溜まってたようだ。
「奴ら、人を襲うことで自分たちに利益があることを学習したみたいね。最近、この地帯のムクバドリの凶暴化が問題視されてるわ」
「……それなら、ギルドも目を離さないのでは?」
「さぁね。たぶん実力者不足じゃない?それで私たちに頼み込んでくるんだもの。ほんと、迷惑極まりないわ。ま、奴らには少し借りがあるからいいけど」
そう言ってマリー様は剣……ではなく、手を上に掲げて何かしようとしている。
「……召喚」
すると、マリー様の周りに何かが集まっていき、光が収まると彼女の手には赤黒い剣があった。
「マリー様。それは?」
「知らないの?魔力を凝縮して作った魔法剣よ。一々剣を持たなくていいから楽なのよねーそれに強いし……てか」
ギロッとマリー様の視線がこちらに向けられた。え、なに?
「貴方、さっき言ったわよね?二人きりのときは対等に接するって」
「えっ?……あ、あぁ……いや今それ関係ありま」
「あるから言ってんのよ。様付けはやめて。ほら、わたしのことはマリーって呼びなさい」
「……うっ」
忘れてくれてると思ったが、どうやらそんなことないらしい。
正直、あまり気が進まなかったが、俺は彼女の名前を呼ぶことにした。
「……マリーさん?」
「……」ギロ
「ま、マリー……」
「……ふん、それでいいのよ。それで」
満足したのか、マリー様……マリーは機嫌よく口元に笑みを作りながら、先ほど召喚した魔法剣を軽く扱う。
俺も準備するべく、腰にある鞘から剣を抜いた。
「さっきの反応からして予想してたけど、貴方はただの剣なのね」
「今日まで知りませんでしたからね。当たり前です」
「扱えるようにしといた方がいいわよ。何気に便利だから。あとで教えてあげるわ。それと、敬語も禁止」
「……まじですか?」
「おおまじよ。まぁいいわ。じゃあわたしが先に仕掛けるから、殲滅お願いね」
「……了解」
渋々彼女に返事をすると、マリーは笑みを浮かべてから、剣先をムクバドリの群れに向ける。
すると、剣先に光がどんどん集まっていきエネルギーが溜まってきている。
「焔」
マリー様のその一声で溜まり切ったエネルギーが放出され、ムクバドリの巣もろとも爆発した。
「“グェッ!?”」
突然の奇襲にムクバドリはパニックになる。様子を見ると、過半数が黒焦げになって地面へと落下している。
あの攻撃でほとんどやつけてしまったらしい。恐ろしいと思いながらも、俺も群れの中に近づく。
「身体強化」
すると、俺の中にある魔力が活性化し、身体が軽くなるのを感じた。
勢いをつけて地面を蹴って飛び上がる。
「うわ、上がりすぎた……!」
下を見ると未だパニックになっているムクバドリの姿が見える。
力加減をミスったと感じつつも、俺は空気を蹴って下降し、1匹のムクバドリ目掛けて斬撃を放った。
再び突然の奇襲にムクバドリは対応できていない。
その間も俺は2、3匹斬撃を放ち、戦闘不能にさせる。
「……っと」
地面に無事着地。空を見ると、まだムクバドリが残っている。
一匹一匹は大したことないけど、数は多いから厄介だよな……。
「……貴方の身体、どうなってんのよ」
呆れたような様子のマリーが近づいてきて、そんなことを言ってきた。
「いやどうなってるって言われても……」
「普通、身体強化した程度じゃあんな飛ばないわよ。それに空気を蹴った?空飛べるって馬鹿じゃないの?」
「……で、できるとしか」
「……まぁいいわ。それぐらい何か抜けてる方が安心できるわ」
「“ギェエエエエ!!!”」
ムクバドリの咆哮が岩場中に響き渡った。見ると、残っていた全羽が俺たちに敵意の目を放ち襲いかかってきている。
「じゃあ頼むわよ。あとは地道な作業だもの」
「分かりました。あとは全部俺が」
「敬語。あとわたしもやるわ」
「……わ、分かった。じゃあ頼む」
少しだけ彼女から執念みたいなものを感じながらも、俺たちはムクバドリの処理をするべく、剣を振るったのだった。
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