第20話 数日
マリー様との依頼?から数日が経った。
一応、俺の代わりに彼女の護衛の騎士やメイドさん達が依頼をやってくれてるらしいけど……。
たまにマリー様に隠れて少しみんなの所に行ってみたけど、どうやらなにもしてもらってないらしい。
早く戻ってくれって街のみんなに頼まれてるけど……マリー様にバレたら何を言われるかが分からないからとりあえずは濁している。
それで今はマリー様と一騎打ち。今日も森の中にて彼女と剣を交わしている。
「……っ!」
彼女の一振りで次々と木が崩れるように斬られていく。飛ぶ斬撃という奴だ。
それを俺は自身が持っている剣を横に振り、打ち消す。
「隙だらけよ」
背後から彼女の声がし、瞬時に前へと飛ぶ。
「当たってはいませんけどね」
背後を振り返って言うと、彼女は少しだけ眉を顰めたが、面白そうに笑みを深める。
俺は体勢が崩れたのを利用して剣を口に咥え、四足歩行の様な動きで彼女の周りを走り出す。
「まるで獣……ね!」
見切ったかのように襲いかかる剣だが、それを口で咥えた剣で打ち返す。
顎がとてつもないくらい痛いが、それでも我慢。耐えながら彼女の腹部に狙って強烈な足蹴りを披露する。
「ぐっ……!」
顔を引きつらせながらも、マリー様は敢えて身体に身を任せて吹き飛ばされたのを利用し、木に両足で着地し、再びこちらに攻め込む。
対する俺も立ち上がり、剣を手で持ってから勢いよく飛んでくるマリー様の剣を受け止めた。
ガキンッ!!!
鉄と鉄がぶつかり合った音が森中に響き渡る。
力が拮抗し、戦闘中のマリー様と見つめ合う。
そんな時間が数分経過した時、突如彼女が受け流すのに変えて、剣に込めている力を抜いてきた。
「うわっ!?」
流石に対応出来ず、俺はそのまま前のめりになって地面に落ちてしまった。
「休憩よ。私も少し疲れたわ」
横でこちらを見下しているマリー様がそう言ってきており、彼女はそのまま近くにある木の下に座り込む。
休憩してる時も佇まいが綺麗だし流石だなぁ……と思いながらも、俺も地面から起き上がり、剣を取る。
最近だとこれが日常だ。起きては戦って、起きては戦っての繰り返し……なんだかずっと身体を動かしてるせいでそのうち事切れるんじゃないかとも思ってしまう時がある。
マリー様とも最低限の話しかしない。当たり前だ。貴族と一般人じゃそもそも住む世界が違うからね。
そう思いながらも、俺はポケットから布を取り出して、剣を拭く。
「……貴方って休憩中ずっとそれをしてるわよね?飽きないの?」
「えっ?あ、あぁ……親の教えでもあるんです。武器は大事にしなさいって」
一応習慣としてやってるけど、合ってるかは分からない。
話しかけられたことに驚きながらもそう答えると、マリー様はふーん……と反応を示している。
「……私もやるわ」
「えっ?べ、別にやらなくても」
「私がやるって言ったらやるの。ほら、貸しなさいそれ」
「あ、ちょっと!?」
強引に布を取られてしまい、マリー様はそれを自身の剣を乱暴に拭こうとする。
「あぁ!?だめですよそんな乱暴にしたら!?剣が傷つきますって!?」
「そ、そんなの言われなくたって分かってるわよ!余計なこと言わないでちょうだい!」
えぇ……なんで怒られなきゃいけないんだ俺?
理不尽な思いに駆られるも、マリー様は先ほどよりかは優しく剣の手入れをしている。
「……ねぇ」
「は、はい?」
それをしばらく眺めていると、マリー様が突然話しかけてきた。
また?と思いつつも俺は返事をする。
「貴方、よく毎日私の鍛錬に付き合ってくれるわよね。嫌にならないの?」
「え?ま、まぁ……マリー様のお願いですからそれぐらいは……」
「………私から逃げることだってできるはずよ。たとえば……街を出るとかね」
そう言って俺の方をじっと視線を向ける。
それに対して俺はというと……苦笑しながらも答えた。
「あはは……それは多分、ないと思いますよ」
「……どうしてそう言い切れるのよ?」
「いやなんと言いますか……一度だけ知り合いのつてで外に出たことがあるのですが、そこがあまりにも都会すぎて……ストレスが溜まりそうになりました」
ここが一番落ち着くんですよ。
そう言って森で遮られている青空を見上げる。
「それに、依頼人を放っておいて街を離れるなんて俺はしたくありませんから」
「………それが、どんな人の依頼でも?」
「はい、基本的にはそうだと思います」
当たり前のように答える。
理由は他にもまだあるが、他の街でやっていくなんて今の俺には考えられない。
そんな何気なく答えたつもりなんだけど……。
「………」
「……あの、マリー様?」
聞いてきた当の本人は何故かこちらをじっと見てきている。
とても可愛らしいけど同時に怖いのでやめて欲しい気持ちはありますが……。
「……変な人ね」
「えっ?」
「初めてよ。私に対してそんな口答えした人は。今まで誰一人としていなかったわ。貴方みたいな人」
一瞬、マリー様の表情が変わった気がするが、それも束の間。
彼女は何故か俺の頭に布を置いてから立ち上がる。
「さ、休憩終了よ。とっとと準備しなさいクロ」
「も、もうですか?まだ10分も経ってない気が……」
「別に、貴方なら休憩なんて1分もいらないでしょ?」
「いやいやそんなことありませんからね!?」
人をなんだと思ってるんだこの人は!?
少しだけ頬が緩んでる様に見える彼女を見て俺は改めてマリー様の破天荒さを知ることとなった。
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