第12話 クライバス家のお嬢様
「……んしょ。これで全部かな。おじさん、ここに荷物置いてくよ!」
「おぉ!すまんなレクス。助かったよ」
現在、俺はいつも通りにこなしていた依頼の最後の一つをやり遂げようとしていて、その依頼である物資の荷物を馬車に運んでいた。
「いやぁ!さっすが若いのは仕事が早くて助かるわい!ありがとうレクス!」
「いえ、いつものことなので。ではここにサインをお願いします」
「おぉ、そうだったな……はい、これでいいか?」
無事依頼者のサインを貰った。これで一応今日のノルマは達成したな……一つを除いては。
「レクス今日は暇か?よかったらうちでご飯でも食わないか?いつも手伝ってくれるお礼をしたいからな」
「あー……気持ちは嬉しいけど、まだ依頼が残ってるからまた今度かな」
「依頼?珍しいな、俺のところでいつも終わりなのに……何か真新しいものなのか?」
「えっと……実は」
俺は今日貼られていた貴族の依頼についてそのおじさんに話し出した。
すると、何故かぎょっとした顔になって……顔を顰めている。
「あの、おじさん?」
「……レクス、悪いことは言わん。そこはやめておいた方がいい」
「え?な、なんでですか?」
「……おそらくその依頼した貴族の家名はクライバスって名前じゃないか?」
「えっ?どうして分かったんですか?」
名前までは言ってないのに……。
すると、事情を知らない俺におじさんはクライバス家について話し出してくれた。
クライバス家
このミルティーユの街に滞在する貴族の名家。
どうやら何か大きな功績を残していたらしく、その過程で貴族の名を頂いた元々平民から成り上がったところらしいのだ。
「名前自体は優秀なんだ。その当主でもあるウロス様もとても優しく誇りを持った貴族なんだが……」
「……何か、問題でも?」
「その、な……ご令嬢さんに問題があるらしくてな?確か噂だと何人もの冒険者の心を折っていったって話らしいぞ?」
「え、えぇ……」
だ、だから依頼書が残っていたのか……いやまぁ、何か事情があるのは分かっていたんだが……。
「とにかく辞めておいた方がいいんだが……もしその依頼を受けるんだったら覚悟を受けてやれよ?」
「は、はい……」
何故か背筋に冷たいものを感じながら、俺はおじさんと別れて、そのクライバス家の屋敷へと向かったのであった。
◇
「……こ、ここ?」
で、でかい……流石貴族という名だけあってスケールも相当なものだな……。
そんな貴族の屋敷に圧倒されると、門番にいた人に声を掛けられる。
「そこのお前。ここになんの用だ?」
「あ、冒険者のレクスって言います。実はこの依頼を受けに来たのですが……」
それを見せると……門番の人も何故か顔をギョッとさせ、こちらを何度も見てきた。
え?そこまでなの??
「……わ、分かった。すぐに奥様に確認を取らせる」
「お、奥様?」
当主じゃなくていいのかという疑問を聞こうとしたが、そのまま門の奥へと行ってしまった。
「……にしてもでかいなぁ……俺もいつかこんなところに住めるんだろうか……」
……いや高望みするのはやめよう。何故かバチが当たりそうな気がする。
それよりさっきの門番の人の反応が気になった。
自分たちの方から依頼を出してるのに……あの反応、もしかして相当やばいものを受けたのではないのであろうか……。
「……確認を取った。すぐに案内する」
しばらくすると、さっきの門番の人が現れ、門を開けてくれた。
「ついてこい。一応忠告するが、何もするなよ?」
「し、しませんよ……」
こんな所で何かしたら恐れ多いよ……。
そんなことを考えながら、俺は貴族の屋敷へと入るのであった。
◇
「今日は私のご依頼を受けていただきありがとうございます。冒険者さん」
「……は、はい」
俺は目の前の光景を見て驚かずには居られなかった。
ま、まさか当主が男性ではなく女性だったなんて……。
俺が驚愕しているのが分かったのか、ふふっと上品に笑っていらっしゃる。
「もしかして、知らなかったのですか?」
「な、なにぶん、世間体のことは疎かなもので……」
「あらあら、ふふ。可愛いこと。ではそんな冒険者さん……レクスさんに自己紹介しなくては」
するとソファから立ち上がり、洗練とされた優雅なカーテシーをして見せた。
「クライバス家の当主、ウロス・クライバスでございます。今回はよろしくお願いしますね、レクスさん?」
「あ、はい!ぼ、冒険者のレクスです!よろしくお願いします!」
最低限の礼儀だけは教えてもらったからこれで失礼のないはず……だよね。
最低限の装飾がされた白色のシンプルなワンピース型のドレスに、光に反射する様に輝いている水色の長い髪。
子を持っているとは思えないその美貌……クライバス家の当主がそこにはいた。
「早速お話を進めていきたいけど、いいかしら?」
「は、はい!」
「……そんなに緊張しなくてもいいのですよ?」
「す、すみません!」
「……ふふっ」
うぅ……笑われてしまった。でもこういうことも大切だよねと思いながら、俺はソファに腰を下ろした。
「今日私が頼んだのは、娘のお世話をして欲しいのです」
「……あ、あのその件なんですが、もしかしてですけど、他にも依頼した人がいるんですか?」
「えぇ。こちらに依頼してくれた方々は何人もいらっしゃいましたが、その……娘の貴族らしからぬ破天荒な扱いに嫌気がさして……そのまま帰ってしまいました」
「そ、そうなんですね……」
どんだけやばいんだよ……その娘さん。
「私も当主という役柄、中々構ってやれないのです……レクスさん、お願い出来ませんか……?」
「……分かりました。おれ……私でよければ!」
「……ふふっ」
ま、また笑われてしまった……やはりこういう、なんというか……貴族の人との対話は慣れそうにない……。
「それでその、出来れば娘様のことについて知りたいのですが……」
と、俺がウロス様に聞こうとした時、ドンッ!と大きな音を立てて扉が開かれた。
びっくりして扉の方に向けると……そこには、ウロス様に似た令嬢の姿がそこにはあった。
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