第13話 マリー


「……母様、誰そいつ?」


凍てつく様な声が俺の耳の中で響き渡る。

冷徹と表現しても足りないくらいの冷たい……こ、声を聞くだけで身体の震えが止まらない……。


「今日私たちの依頼を受けてくれたレクスさんよ。挨拶しなさいマリー」


「……ふん。誰だって同じよ。どうせ私の面倒にうんざりしてそのまま意気消沈するはずよ……そこの人」


「は、はい!」


お、同い年ぐらいなはずなのになんだこの威圧感は……目線を合わせるだけでビクッとしてしまう。


「悪いことは言わないわ。やめておきなさい。無駄な時間を過ごすことになるわよ」


それだけ行ってご令嬢様……マリー様はそのまま部屋を出ていかれてしまった。


「……はぁ、やっぱりこうなるのね……ごめんなさいレクスさん。娘が失礼な態度を取ってしまい……」


「……あ、あの、ウロス様……ま、マリー様は一体なんのご用でここに来られたのでしょうか……?」


「えっ……?」


「だ、だって、おれ……私に忠告だけしてそのまま部屋から出てしまいましたよね!?い、一体どうしてそのようなことを……もしかして私のせいでここに来られたのですか!?」


だ、だってそうじゃないか!?急に部屋に入ってきたと思ったら俺に忠告だけして出ていって……な、何かあったんじゃないかって思うだろ!?


「………ぷふっ」


「え、う、ウロス様……?」


「ご、ごめんなさい……マリーを見てそんなこと言う人初めてで……ふふっ、やっぱりレクスさんは面白いですね」


「え、えぇ……」


手を口に添えて愉快に笑っているところごめんなさいなんですけど、俺凄い不安なんですが……?


「……気にしないでください。いつものことなので」


「いつものこと、なんですか?」


「はい。毎日数回私の部屋に用もなく来るんですよ……あまり構ってあげられないのが原因だと思いますが」


申し訳なさそうに笑っているウロス様。

あ、そっか……マリー様のことについては分からないけど、やっぱり自分の母の顔とか見ておきたいのかな……?


「……もしかしたら貴方が来てくれて正解だったかもしれませんね。レクスさん」


「は、はい……?」


「少し破天荒の我が儘な娘ですけど……改めてお願いします。マリーのお世話をしてあげてください」


「わ、分かりました……」


俺に、出来るのだろうか……娘さんのお世話。


「……スミーヤ」


「なんでしょう奥様?」


「えっ?」


み、見えなかった……あの女の人、一体いつからウロス様のところに……?


「レクスさんをマリーのところに案内してあげなさい。くれぐれも失礼のないように」


「承知しました。ではレクス様、早速マリー様のお部屋にご案内しますのでついてきてつださい」


「は、はい……」


執事……いや、メイド長なのだろうか?スミーヤさんはマリー様の部屋に案内してくれるのか、こちらを見ている。


「ではレクスさん。よろしくお願いします」


「は、はい!」


そしてウロス様と最後に言葉を交わしてから、俺はスミーヤさんとともに部屋を出て行ったのであった。







「ここでございますレクス様」


「あ、ありがとうございます……」


で、でけぇし、なんか扉が不思議とキラキラような気がするし……何故か奥からとてつもない気配が……。


そんな俺の様子など知らず、スミーヤさんは扉の前に立って3回ほどノックをした。


「お嬢様。スミーヤでございます。今日依頼を受けてくださったレクス様をお連れしました。入りますよ」


そのまま彼女の応答を無視してそのまま扉を開けるスミーヤさん。こ、この人……容赦が無さすぎる。


「……なに?私、貴方に用事なんて何もないのだけど」


「いえ、レクス様を連れて来ました。私はその案内を」


「………ふーん。来たんだ。私の忠告を無視して」


可愛らしい部屋なはずなのに、そこにいる人物の威圧感ある気配に汗を流してしまう。


「えっと、依頼を受けに来たので、そのまま帰るわけにも行かず……」


「……やめないわけ?私のお世話」


「す、少なくとも今日は……」


鋭い目つきで再びこちらを見ている。

訪れる静寂な空間。俺は静かな所が好きだ。でも今回のせいで少し嫌いになるかもしれない……。



「……忠告はしたわよ。どうなっても知らないからね」


椅子に立ち上がり、俺たち後ろを通り抜けるマリー様。


「ど、どこに行くんですか?」


「どこって散歩よ、散歩。貴方、私のお世話係なのよね?だったらついてきなさい」


「………」


「ほら!なにぼーっとしてるのよ!さっさと動く!!」


「は、はいっ!」


彼女の言葉が一瞬だけ気になったが、そんなこと考えれるわけもなく、俺は破天荒なお嬢様のマリー様についていく。


こうして、貴族のお嬢様のお世話というなの振り回される日が始まったのは言うまでもない。



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