第10話 貴方がくれた誕生日プレゼント
「んん……はぁ、終わった終わった〜」
ギルドの受付にて、無事自身の仕事を終えたリリナは椅子に座りながら身体を伸ばしていた。
今日は自身の友達であるイミリアが休暇を取っていることもあり、彼女は何かと暇な1日を過ごしていた。
(今日はレクスくんも来ないし、イミリアはイミリアでどこかに行っちゃうし……なんか退屈だなぁ……)
「リリナちゃーん!依頼終わったから確認してくれ!!」
「あ、はーい!少々お待ちください!」
だが、休む時間などないかと言われたかのように自身の仕事場へと移動していく。
(もうっ。折角の休憩時間だったのに〜!)
少々心の中で愚痴を吐きながらも、彼女はギルドに所属している冒険者を労うために奮闘するのであった。
◇
「お、終わった……な、なんで今日はこんなにも人が多いのよ……」
異常なまでに自身の所に来る冒険者の数々。
自分が何かと人気になっているのは自覚はしているものの、それでも今日に限っては過去大多数に来ることが多かった。
「に、人気になるってこんなにも大変なものなのね……」
自重した方がいいのだろうか……いや、だとしてもどうやったら収まるのだろうか……。
「……恋人」
その言葉とともに、彼女の頭に一人の男の子が思い浮かんだ。
「レクスくん……」
惚けたようにその男……レクスの名前を呼ぶ。そして、彼との恋人関係を想像した結果、彼女の顔は茹でたタコのように真っ赤に変貌した。
「だ、だめよっ!そんなの!れ、レクスくんとはそんな関係じゃ!……そ、そもそもまだレクスくんとまともに話せないのに……!」
……でも、もし彼の恋人になったら幸せなんだろうなぁ。
否定はしつつも、リリナの頭の中はもうピンク色でいっぱいであった。
「……会いたいなぁ……レクスくん……」
すると、ギルドのドアが開かれる音がした。また冒険者の人なのだろうか……いや、きっとそうに違いない。
心の中でそう考え、疲れ切ったため息を吐きつつ、受付場に向かう。
今度は誰なのだろうか……そう考えながら前を見ると……自分が今会いたかった人物が目の前にはいた。
(れ、レクスくん…!?)
自身の思い人である彼を前にして、リリナはいつも通り頭の中がパニック状態であった。
(な、なんでこんな時間に!?いつも朝方や昼にしか来ないのに……!ていうかレクスくんの私服!!改めて見たけどかっこかわいい!!)
「あの、リリナさん?」
「………なんでしょうか?」
心配そうにレクスは声をかけるが、リリナは心の中とは裏腹に彼にいつも通りに素っ気ない態度を取ってしまう。
(な、何やってるのよ私!!これじゃ前の時と二の舞じゃない!こ、こういう時こそ笑顔笑顔……)
「ふ、ふふ……ふふふふ」
「り、リリナさん?ほんとに大丈夫ですか?」
変な声で笑ってしまい、さらに彼に心配をされてしまう。それをレクスの後ろで見ていたリリナの友達……イミリアは深いため息を吐いて、彼女の頭を思いっきり叩く。
「きゃっ!?」
「なに変な声出してんのよ。レクスくんが怖がってるじゃないの」
「………い、イミリア?」
正気に戻った彼女はイミリアを見て疑問を抱いてしまう。
なんでここに……?というかなんでレクスくんと一緒にいるの?しかも私服姿だし。
「……あんたが思ってるようなことじゃないから安心しなさい」
「な、なんのことだか……」
自身の思った事を見破られてしまい、冷や汗をかいてしまう。
イミリアは再びため息を吐いてから、レクスに視線をやる。
「ほ、ほんとに俺でいいんですか?」
「えぇ。きっとあいつもレクスくんに渡された物の方が嬉しいと思うだろうしね」
「?なんのこと……?」
レクスとイミリアの会話を聞いて、なんのことだか分からなず頭を傾げる。
すると、レクスが自身に近づいてくる。
彼が近づいたことで心臓の心拍数が更に早くなるのを感じたが、それと同時にレクスが何かを渡してきた。
「これ、俺から……イミリアさんと一緒に考えた誕生日プレゼントです。受け取ってくれますか?」
「…………………………………………………………えっ?」
その言葉にリリナは一瞬何を言ってるかが分からなかったが、しばらく経ってその言葉を理解する。
「……ぷ、プレゼント、ですか?レクスさんから……私への?」
「は、はい……その、最近流行っている眼鏡という魔道具です。最近リリナさん、目が疲れてるって聞いてたので……」
その言葉を聞きながら、震えている手で大切なものを扱うかのように眼鏡を受け取る。
夢なのだろうか、それとも現実……?それが何なのかが分からずにいた。
「その、遅くなりましたが……お誕生日おめでとうございます」
「ッ!」
「じ、じゃあ俺はこれで!」
流石に恥ずかしい思いをしたのか、レクスは早歩きでギルドから出て行った。
「レクスくんも恥ずかしいことがあるのね〜まぁ仕方ないわよね。思春期だろうし……リリナ?」
「…………うぅ……ひっく……」
リリナはレクスから受け取った眼鏡を大切に抱きしめて……泣いていた。
貰えるとは思わなかった。渡してくれるとは思わなかった。
だっていつも自身の素っ気ない態度で彼には嫌われていると思っていたからだ。
でも違った。そんなこと、優しい彼が考えるはずがない。
それがもしイミリアに言われたからだとしても構わなかった。
だって……彼が自分のために考えたくれたものなのだから。
「……ほら。そんな泣いていないで掛けてみなさい。きっと似合うわよ」
「うぅ……ゔん」
泣きながらも、まだ震えが止まらない手で眼鏡をかける。
眼鏡を掛けたことで少しだけぼやけていた景色が嘘のように鮮明に見えていた。
「……あは。凄いやこれ……とっても見やすい」
「その割には目がぼやけてるんじゃないの?」
「そんなことないよ……だって……レクスくんがくれたものなんだもん」
眼鏡を掛けたままイミリアの方を見た彼女の顔は……涙でぐしゃぐしゃになりながらも、とても綺麗なものであった。
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