第9話 プレゼント選び
「リリナさんのプレゼント?」
イミリアさんから予想外の言葉が出て俺は少し驚いている。
いや選ぶのはいいんだけど……なんでリリナさんのプレゼントを俺が……?
「ほら。あいつって誕生日迎えたっちゃあ迎えたけどまだプレゼントの一つや二つも貰ってないのよ」
「えっ?そうなんですか?てっきりミルティーアの看板娘とか呼ばれてるんですから沢山貰ってるかと」
「逆よ、逆逆。ここにいる初心な男どもが一向に渡しに来ないのよ。それに何を考えてるのか、自分からは渡さないの一点張りよ。だからあの子、異性からのプレゼントは貰ってないわ」
「そ、そうなんですね……」
イミリアさんのその様子に俺は苦笑するしかなかった。
なんていうかここの男の人達ってその……厳格なイメージがあるから素直になれないのは頭の中で思い浮かぶことが出来る。
「だから一緒に選ぼうって訳よ。それに、レクスくんからのプレゼントならあいつも喜ぶと思うし」
「……お世辞ですか?」
「……そう聞こえちゃうわよね」
いや、だって仕方ないだろう。あれだけ冷たい態度取られてるのに俺のプレゼントでリリナさんが喜ぶ……?想像ができません。
「でも、事情は分かりました。流石に誕生日なのに一つもプレゼントを貰えないのは可哀想ですし、いいですよ」
「ほんと?助かるわ〜。ありがとうレクスくん」
そう言って嬉しそうに俺の頭を撫で始めるイミリアさん。
さ、流石に大人の女性に撫でられるのは恥ずかしいな……。
「じゃあ時間も惜しいし、早速いきましょうか」
「は、はい」
そうして、突然始まったイミリアさんとのプレゼント選びに俺は……困惑を覚えながらも街に出歩いたのだった。
◇
プレゼントを探すために約数時間、イミリアさんと色々な物を見て回った……だが。
「だめ……良いものが一つも見つからないわ」
はぁ……と重いため息を吐いてベンチに座るイミリアさんを見て俺も少し困ってしまう。
そうなのだ。彼女が喜びそうなものが分からないから、何を買えばいいのか迷ってるのだ。
衣装類は……大体は持ってると思うし、アクセサリーも考えたけどイミリアさん曰く、興味がないらしい。
食も考えたけど、どうせなら形あるものを渡したいということだ。
だから何を選べばいいのか分からないのだ……そもそも俺、彼女の事全く知らないし。
「まさかあいつのプレゼント選びにここまで苦戦するなんて思わなかったわ……あーどうしようかしらねぇ」
頭を抱えながら何を選ぼうか思考している。そんな彼女のことを見て、俺は気になることを聞いてみる。
「イミリアさんってリリナさんのこと大好きですよね」
「ゴホッ!?」
突然の事に驚いたのか彼女は大きな咳払いをした。
そんな驚くようなこと聞いてないと思うけど……。
「な、なんでそう思うのかしら?」
動揺した様子で俺に聞いてくるが……だって。
「イミリアさん。いつもリリナさんと関わってるじゃないですか。此間だって一緒にいましたし、今もリリナさんのためにプレゼントを……」
「ち、違う!!あいつとはそんな関係じゃないわ!!」
「え、えぇ……?」
そんな大声で否定されたら可哀想な気が……。
頬を赤らめたイミリアさんはいつもの大人の雰囲気とは違い、少し素直じゃない子供っぽくそっぽ向いた。
「別にあいつとはそんな関係じゃないわよ。ただ……いつも頑張ってるし、どうせだからそのご褒美として選んであげようって思っただけよ」
「………やっぱり大好きなんですね。リリナさんのこと」
「ちっがーう!!レクスくん勘違いしないで!私とリリナは決して!けっっっしてそんな友達みたいな関係じゃないわ!!」
いや、でもそれを否定するのは無理な気が……あ、これ以上言ったら俺に被害が被りそうなので黙ります。
でも、なんやかんやリリナさんの事を大事にしているから、何気に放っておけないんだろうなぁ……。
「……あ、リリナで思い出したわ」
「えっ、なんですか?」
思い出したかのようにイミリアさんは声を出す。
「そういえばあいつ、最近目が見にくいとか言ってたわね」
「目が?」
「ほら、私たちって資料を見たり依頼書を見たりしてよく目を使うじゃない?そうすると目が疲れるのよね〜。そのせいで私も視力悪くなった気がするし」
「……目、ですか……」
……それなら、あの魔道具でも買ってみるか。
「イミリアさん。リリナさんが喜びそうなもの思いつきましたよ」
「えっ?ほんとに?」
俺はその魔道具のことを彼女に話した。それを聞いてイメリアさんは……若干眉を顰めたものの、納得する。
「……なるほど。値段は高いかもしれないけど……今のあいつにはぴったりの代物ね」
「じゃあ……」
「えぇ、それにしましょう。でかしたわレクスくん。きっとあいつも喜ぶはずよ」
そうと決まれば早く行かなくちゃねとベンチから立ち上がって即時にその魔道具が売っている店に向かっていった。
「ま、待ってくださいよ!」
そんな彼女に追いつくために、俺は今日も走り回ったのだった。
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