第8話 少し変化した関係


ベルゼとエスティアと討伐依頼をして数日が経った。

リリナさんから怒られた影響なのか、流石に俺に討伐依頼を頼むことは無くなった……。


でもその過程で変わった事がある。リリナさんのことだ。

あの冷たい態度は未だに変わらないが……それでも劇的な変化だった。


俺がいつものように十件ぐらいの依頼の達成を報告する時のこと。


「リリナさん。今日も終わりました。確認の方をお願いします」


「……はい。しばらくお待ちください」


パラパラと無表情でその依頼書の紙を確認して……しばらくしてお釣りが入った袋が貰われる、



「確認しました。では、今回の依頼報酬です」


「はい。いつもありがとうございます」


「いえ………その、レクスさんも……


そう。俺が依頼を終えた時にお疲れ様と労いの言葉をかけてくれたのだ。


言葉からは感情が篭ったように聞こえないが……それでも俺にとっては嬉しかった。


「ありがとうございます。リリナさんもまだ大変そうですけど、今日も頑張ってくださいね」


「………………はい」


……まぁ、相変わらず素っ気ない態度だけどね。

そんな彼女に少し苦笑しながらも俺はギルドから出て行ったのだった。





「…………えへへ……レクスくん……」


ギルドのお昼頃、リリナは機嫌が良さそうに顔を緩めさせていた。


「はぁ……あんた、最近すっごくご機嫌なようね」


「あ、イメリア!うんうん!私、最近すっごく気分がいいんだ〜」


話しかけてきたイメリアに笑顔で答えながら、自炊してきたであろうお弁当を一口食べる。


「ねぇねぇなんでか分かる?知りたい?知りたいよね〜?しょうがないなぁ、じゃあ教えて」

「邪魔したわね」

「あぁ待って!行かないで!私の話を聞いてよイメリアぁ!」


立ち去りそうな所を必死に引き止める。それを見て若干イラついたイメリアだが……仕方なく彼女の隣に座る。


「それでなんでそんな機嫌がよいのかしらリリナさん?」


「実はね〜最近レクスくんと少しずつだけど話せるようになったの!」


「……ふーん」


「なっ!なんでそんな興味なさそうな反応するの!?」


「だって知ってるからね。いつも隣で貴方を見てるのよ?当たり前じゃない」


「むぅ……そうやって余裕ぶって……いいもん!レクスくんと仲良いからって高みの見物でもしときなよ!ぜっったいレクスくんは渡さないからね!!」


「なんでそうなるのよ……でも、あんたにしては頑張ってるわね。たまにレクスくんと話してるけど、ずっとあんたのこと話してたわよ」


「えっ!?私のこと!?ほんと!!それってほんとなの!?」


「え、えぇ……なんだか少し仲良くなれたみたいで嬉しいみたいなことを言ってたわね……ってうわぁ……」


イミリアが隣にいるリリナを見てドン引きするかのような目線で見やる。

その時の彼女はどうしようもなくだらしない顔で……好きな人に素っ気ない態度を取っているようには見えなかった。


「えへ、えへへ……そっかぁ……レクスくんが私のことを……にへへ……」


「……だめねこいつ。ここまで来るともう末期だわ」


なんでこんな奴と関わったのかしら……と心の底から思ったのだった。


(……そういえばこいつ……まだレクスくんから誕生日プレゼント貰ってないのよね……?)


ふと思い出したかのように彼女のことをみる。

だらしない顔はともかくとして、もし渡されたのなら自身に語るはずだ……ということは、貰ってないということでいいのだろう。


(本人は彼に祝われたそうで気にしてないようだけど……はぁ、仕方ない。折角だし私が少し動こうかしらね)


愚痴を吐きながらも、なんやかんや自身の友人のことを大切に思うイミリア。

これが所謂ツンデレというものなのだろうか……それとも……。


「?イメリア?どうしたの私の顔なんか見つめて」


「……なんでもないわ。その顔が私に影響されないかと思ったら心配してね」


「あー!またそうやって私のことバカにしたな!!どうして貴方はそんな素直じゃないのよ!!」


「あんたに言われたくないわよ!!」


……それは本人にも分からないのかもしれない。

そうして今日も、彼女たちは自身の仕事をするべく持ち場へと向かうのであった。





「……ここかな?」


翌日、俺はイミリアさんに呼ばれて街中の中心にある噴水エリアにやってきた。

なんで呼ばれたのかは分からないが……何か頼み事なのだろうか?


「あ、いたいた。レクスくーん!」


「イミリアさん!」


手を振りながらこの前見た私服とは少し違う格好をした彼女がそこにはいた。


「ごめんねー。急に呼び出したりしちゃって」


「いえ。俺も久しぶりに休日を過ごせそうだったので大丈夫ですよ。それで、一体何の用なんですか?」


彼女にそう聞くと、イミリアさんはあー……と少し気まずそうにしながらも答えてくれた。


「……リリナのプレゼント。一緒に選んでくれないかしら?」




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