第6話 討伐依頼
「それにしてもいいのか?本当に俺たちの依頼を手伝って貰っても」
「貴方ってモンスターの討伐依頼って基本受けるわけにはいかないんでしょ?」
ベルゼとエスティアが俺のことを思ってかそんな事を聞いてくる。
気持ちはありがたいけど、俺にも生活があるからな。
「うん。街の人にはなんとか誤魔化しておくよ。それに困ってたんでしょ?」
「……悪いな。お前に頼んでしまって」
「いいんだよ。これぐらい、お互い様だろ?」
「……うぅ……レクスゥ…」
「はいはい。そんな男の友情を見せつけてる暇があるなら行くわよ。時間は有限なんだから」
「うおっ!?おいエスティア!折角の男と男の語り合いって時に邪魔するな!!」
「うっさいわよこのバカ兄貴。ほら、行く行く」
強引にベルゼの背中を押していくエスティアの姿を見て、俺は苦笑しながらも彼らに着いていく。
ベルゼ、エスティアの兄妹はこの街じゃあ少し有名だ。
当たり前だ。二人であのドラゴンを討伐した猛者なんだからな。
二人とは酒場で困っていた所を助けたのをきっかけに知り合って今に至る。
たまにだが、俺に戦闘の技術を教えてくれる先輩でもあるから頭が上がらない存在でもあるのだ。
「おいリリナ嬢!これを受理してもらいたいんだけど!」
「あ、はーい!少々お待ちください!」
……よりにもよってリリナさんか。
できるだけバレないように二人の背中に回って、彼女に気づかれないようにする。
「お待たせしました。あら、ベルゼさんにエスティアさん!街に戻ってたんですね!」
「あぁ。前まで貴族の護衛任務でしばらくいなかったんだがな」
「今ちょうど戻ってきたところなのよ。それで戻って早々この任務、結構大変なの……」
「いつもいつもお疲れ様です。少し確認しますね……」
……バレてないみたい、だな。
いつもの彼女だ。俺のせいであんまり二人に悪い気持ちにさせるわけにも行かないしな。
「……レッドベアの複数の討伐ですね……分かりました。いつもより数が多いみたいですから、気をつけてくださいね?」
「あぁ、分かってる。だがこっちにも秘密兵器があるからな。心配はいらねぇよ」
「秘密兵器……?」
「こっちの話よリリナ。ほら、さっさと行くわよ」
「うおっ!ちょ、ちょっと待てエスティア!?まだレクスに——」
「早く行く!!」
「ぐえっ!?」
どうやらエスティアには気を遣ってしまったらしい。
リリナさんにバレないようにエスティアに目線を目線を送ると、彼女はウインクしてくれま。
ほんとに頭が上がらないよ……そう思いながら、俺は討伐の依頼を達成するべく、ギルドから出ていくのであった。
◇
「……レクス君が、来ない……」
昼頃の時、リリナはいつも来てくれる黒髪の少年、レクスの事を待ってたのに……今日は受付に来てくれることはおろか、姿すら見せてくれない。
「うっ。うぅっ……うえぇん……!」
……そんな中、なんとか声を出さないように静かに涙を流すリリナ。
しかし、彼女の周りにいた人にはもうそれはそれは悲しい雰囲気を醸し出しているのが分かった。
「……きっと他の女に奪われたんじゃないの?」
「ッ!そ、そんなことない!!レクス君が他の女狐に奪われたなんてしないよ!!」
「め、女狐……?」
彼女の言葉に思わず、眉をピクッと動かすが……ここで気にしても仕方ないと割り切ったイミリアはいつものごとく、彼女の隣に座る。
「あんたがいつも冷たい態度取ってるから、レクス君来なかったんじゃないの?実際、忙しそうにしてたし……」
「そ、それは……でもレクス君、生活大変そうだからそんなことないと思うんだけど……」
「……いない間を狙ってもう仕事を貰ったとか?」
「………ううっ……ひっく……」
「……わ、悪かったわよ。冗談よ冗談……ったく、なんでそんな脆いのよあんたは」
彼女の頭を撫でながら、慰めようとするイミリア。
「……でも、レクス君の匂いはしたもん」
「………あんた、ついに鼻がおかしくなったんじゃないの?」
「そ、そんなことない!私レクス君の匂いは間違えないもん!ぜっっったいに嗅いだ!!」
「……もしそうだとしていつ匂いを嗅いだのよ?」
「え、えっと……確か……ベルゼさんとエスティアさんの時だったような……………」
「……どうしたのよ?急に黙ったりして……」
「………ま、まさか!?」
ドンッ!と机が叩かれる。そして彼女の表情は徐々に青ざめていく。
そう、彼女は気づいたのであろう。
………彼が、討伐依頼に赴いた事に。
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