第5話 教会


二人と別れた後、俺は急いで今夜の夜食を準備をするべく数時間かけて何十人分前をなんとか作り終えた。


そして大食いでも食べれるかわからない量を食べる……のではなく、ある場所に袋に詰め、ドデカイ鍋を持って向かっていく。


その場所は……とても神聖とは表現出来ない少し古い教会であった。

汚れのついたトビラをノックして反応を待つ。


「すみませんフェリシアさん!食事持って来るの遅くなりました!!」


……寝てしまったのだろうか。そう思った瞬間、ガチャっと音がして……眼の前に白銀に輝く長い髪をし、特徴的な長い耳をした女性が目に入った。


「レクスくん……もうっ、また来たのですか?」


「はい。今日も余りましたので持ってきました」


「私たちのことはいいのに……いつもいつも本当にありがとうございます」


困り顔のエルフのシスター……フェリシアさんは扉を開いていつもの場所へと案内してくれる。


シスターフェリシア


俺が幼い頃、両親を無くした時に親代わりになってくれた美人エルフのシスター。

何人もの子供を抱えており、子供達には何かと慕われている。俺もその一人だ。


また昔、冒険者業をしていたらしいが……今は足を洗ってこの人気のない森の奥で教会で暮らしている。


「レクスくんが来る様子がなくて、みんな今日は寝てしまいました」


「そうですか……すみません遅くなってしまって」


「いえ。今日は前、貴方がくれた食事を食べたので大丈夫ですよ。これは明日の朝食にでも取っておきます」


そう言って、対談室の机の横に置いてから彼女が用意してくれたお茶が出される。


「もしかして待っててくれたんですか?」


「ふふっ、何年貴方を見ていると思ってるのですか?優しい貴方ならきっと今日も来るだろうと思いましたので」


「……フェリシアさんには敵わないなぁ」


彼女には頭が上がらないな。そう思い、俺はソファの上に座り、フェリシアさんと対面となる。すると、いつも通り彼女が俺に話しかけてきた。


「最近はどうなんですか?生活の方は」


「そうですね。余裕……とは言えないですけど、この前よりも幾分かマシな生活は送れるようになりました」


「……無茶はしておりませんか?」


「はい。これでも街の人たちには慕われている……つもりですので大丈夫です」


「なんですか?その自身なさげな返事は?」


「さ、流石に自意識過剰だなぁ……と思いまして」


あはは……と自分の発言に苦笑していると、彼女は机越しに俺の頭に触れてきた。


「え?フェリシアさん……?」


「レクスくんはみんなに慕われています。少なくともここにいる人は全員、貴方の味方です。だから……大丈夫ですよ」


「……なんだかフェリシアさん、俺はお母さんみたいですね」


「ふふっ。ここまで貴方を育てたのは私ですからそう認識してもおかしくありませんね」


撫でられるのは恥ずかしいけど……なんだかんだ悪くない気分になってしまう。


やはり、彼女には何年経っても頭が上がらないんだろうな。


「……そういえばフェリシアさん。聞きたいことがあるんですけど……恋人とかって出来たんですか?」


すると、ピタッとまるで石像になったかのように動きが止まった。

そして……ぷくぅっと頬を膨らませてから俺の頬を引っ張ってきた。


「いててててて!?い、いひぁい!いひぁいれすよふぇりひあさん!?」


「……私のことはいいんですよ私は。神に身を捧げた身ですし、そもそも貴方が心配するようなことでもないんですよ」


そして餅のように俺の頬を引っ張ってから、手を離してペチンッ!と痛そうな音が響き渡る。


「いっって!!で、でもフェリシアさん……この前みんなが言うからには悩んでたぽいし……なにしろもういい年」

「レクスくん???」


……一応弁解はさせてくれ。俺はフェリシアさんに幸せになって欲しくて言っている。


だが、何故なのだろう……笑顔の彼女を見て命の危機を感じているせいで、これ以上口が動かすことが出来なくなってしまう。


「……久しぶりに懺悔室に行きましょうか。一緒にその薄汚れた穢れを落としましょうね?」


「………はい」


こうして、フェリシアさんと一緒に懺悔室に連れてかれ、数時間懺悔をしたのであった。


なぜ俺は懺悔されなければならなかったのか……正直なところ分からずじまいであるのは秘密だ。





翌日、俺はある人物たちと待ち合わせをするべくギルドの酒場でいつもの人たがりを見ていた。


そこには、昨日出会ったリリナさんとイミリアさんも受付におり、とても忙しそうにしていた。


……やっぱりリリナさん。俺と関わる時と他の人と関わる時って全然違うよなぁ……。


「なんだ?俺達のことを待っておいて受付さんに見惚れてるのか?」


すると、声がした。そちらの方を振り向き……お揃いの赤髪をした男女が近寄ってきた。


「そんなことないよ。ただ暇だったから見てただけだよ」


「はっはっはっ!そりゃあいいご身分だな!いつも通りで安心したぜ!」


「貴方は相変わらずね。今から依頼を受けるというのに」


そこには額に傷がある屈強な男のベルゼと、その妹であるエステリアがいたのだった。



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