第4話 なんだかいつもより……
「いやー偶然だね。まさかこんな時に出会えるなんて。もしかして買い物?」
「あ、はい。今日、夕食を買いにいくのを忘れてしまったので」
いつも見かけるギルド職員の服じゃなくて私服だから、なんだか新鮮だ。
リリアさんのお友達である茶髪のイミリアさん。たまにだけど受付でお話する人。
意外と世話焼きな人物でよく俺に依頼の助言などをしてくれる優しいお姉さんみたいな存在だ。
……ていうか気にしないようにしてたけど……なんかリリナさん、いつもより視線が鋭くないか……?
「こらリリナ。そんなにレクスくんを睨んでないで挨拶しなさい。折角のチャンスなのよ」
「うっ………ど、どうも。レクスさん……こんばんは」
「こ、こんばんは……」
……相変わらずのそっけない対応…いや、挨拶してくれるからまだいいのかな…?
そんなことを考えながら彼女を見つめてるとイミリアさんの後ろに隠れてしまった。
「はぁ、こいつったら……ごめんねレクスくん。いつもはこんなんじゃないんだけどね」
「い、いえ。そんなの人それぞれですから大丈夫ですよ」
「……ほんとに優しいのねレクスくんは。なんだかこっちが申し訳ない気持ちになっちゃうわ」
どうやら彼女もリリナさんの対応には頭を抱えてるようだ。
「いつもこの時間に仕事が終わるんですか?」
「いいえ。今回は仕事が終わったの。それで折角だからリリナと買い物をしてる所なのよ」
「そうなんですね……いつもお疲れ様です」
「あはは、ありがとう。でもレクスくんの方が頑張ってるわよ。いつも同じような依頼をたくさん受けてくれるから助かってるわ」
「俺も生活がありますから。でもそう思ってくれると嬉しいです」
なんか本当に自分の姉と話してるようだ、会話がスムーズに進んでいる。
「……」
……ただ、先ほどよりもリリナさんの目つきが鋭くなった気がするのは気のせいかな?
「……えっと……リリナさんもお疲れ様です。今日は私服なんですね」
「……はい。仕事を終えましたので……それがどうかしましたか?」
「いつも制服姿だったので中々見慣れなくて……あ、でも私服姿のリリナさんも魅力的ですよ!」
「………………………………どうも」
う、うぅ……リリナさんが顔を背けてしまった。余計なこと言ったのが悪かったのかな……。
「……うちのリリナがほんとにごめんね。あとでしっかりと言いつけておくから」
「は、はい……」
これ、ほんとに俺が何かやらかしたんじゃないのか?もう半端ないくらいに嫌われてるぞ。
「あ、レクスくん。良かったらだけど一緒に買い物しない?持ち金あるから今なら奢るわよ」
「あー……その、有り難いですけど流石にお世話になるわけには……」
「いいじゃない。折角だから甘えていきなさい。ね、いいでしょリリナ?」
「えっ……あ、その………」
珍しくリリナさんがオドオドしている。
……やっぱり、俺がいたら迷惑なのかだろうか。
「イミリアさん、ありがとうございます。でもやっぱりやめておきます。お世話になるわけにもいきませんし……少しやることがありますから」
「あぁ……そうなのね。分かったわ、じゃあまたの機会に誘うわね」
「はい。そうしてくれると……そろそろ時間が迫って来てるのでもう行きますね」
「えぇ。明日また会いましょう」
「はい。リリナさんもお元気で」
俺の言葉にコクリと頷いた彼女を確認してから二人に背を向けて自宅へと帰っていくのであった。
◇
「………この、バカ!!!!!」
リリナの頭に向かって放たれたイミリアの拳骨が炸裂した。その音は街中に響き……。
「いっっっったぁあああああ!!!!????」
………リリナの声もまた街中に響き渡った。
「あんた!なによあの対応!?レクスくん困ってたじゃないのよ!!」
「だ、だだだだだだだって!むむむむむりだよ!!れ、レクスくんとまともに視線を合わせたこともないのに、は、ははは話すなんて……!!」
「仕事でいっっぱい喋ってるでしょ!?毎日のように顔合わせてるじゃない!!」
「そ、それは仕事だから話せるの!!ぷ、プライベートで話すなんて……わ、私にはむりだよぉ……」
彼女のその初々しさに思わずイメリアは眉間を押さえてしまう。レクスとデートできるチャンスがあったにもかかわらずこのざまだ。
これではいくらなんでも距離を縮められるような気がしないと感じてしまう。
「……ていうかさイミリア。なんかレクスくんと親しすぎない?」
「は?何言ってんのよ。あんなの当たり前よ。まぁ少しだけ依怙贔屓してる自覚はあるけど」
「……好きなの?レクスくんのこと」
「なんでそんな解釈するのよ……」
「だ、だって!なんかいつもよりイミリア楽しそうだったし、いい感じだった!私ほとんどレクスくんと喋ったことないのにずるいよ!!」
「……あんたが喋れないから私が頑張ったんでしょうが」
もうこいつと縁を切ってもいいのではないだろうか?心の中でイミリアは怒りを感じながら思った。
「あ、でも……えへへ。レクスくんが私服を褒めてくれたのは嬉しかったなぁ……魅力的だって言ってくれたの!」
「知ってるわよ。そばで聞いてたんだから……はぁ、なんだかレクスくんがいたたまれないわ」
恥ずかしがったり、嫉妬したり、嬉しがったりする情緒不安定なリリナを見て彼女は深いため息を吐いて、レクスのこれからに不安を持つのであった。
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