第29話 双璧

「フーコさん? 知り合いですか」


「……知らないわ」


「ふふふ、あなた達の話は耳に入っていたわ。随分うちのギルドを荒らしていたようだけど」


「っ……」


フェリシリアはレイピアを取り出しすさまじい速度でユズの傍に接近した。


「まずは一人」


「バキッ」


「何?」


「レオ君!」


「ユズへは手は出させない」


 ユズへのレイピアをはじいた。


「ふふ、でも印はつけた」


「印?」


「ユズ危ない!」


「え?」


 ユズの周囲に転移魔法陣が出現した。


 その場に真っ先にミレイが飛び込んだ。


「ロック」


 魔法陣は鋼鉄の檻に変化して、2人を閉じ込めたのだった。


「ユズ、ミレイ!」


「ふふふ、流石に4体1は分が悪いから封印させてもらったわ」


「2人を開放しろ!」


「じゃあ、私を倒してみたら、まあ無理だろうけど」


「……」


「フーコさん」


 さっきからフーコさんは動きが硬直していた。


「私の感知スキルを全てすり抜ける……」


「気づいたフーコ? あなたの効果は全て対処済」


「どういうことですか?」


「ふふふ、私が教えてあげるわ。フーコは予知スキルで敵の動きを先読みして、戦略を立てる癖がある。でも私に対しては予知スキルは発動しない。だから身動きがとれない」


「そんな戦略を変えればいいじゃないか」


「できないのよフーコには、だってこの子、極度の臆病者だもの」


「黙れ!」


 フーコさんがここまで感情を表に出したのは初めてみた、


 それにフーコさんをよく知るこの人物は一体何者なんだ。


「黙れ? そちらこそ黙りなさい。あなたに発言権はないわ」


「なんですって」


「あなたをあれだけよくしてあげたのに、恩を仇で返すつもり?」


「私は一度たりともあなたに恩を感じたこともないわ」


「フーコさん冷静に」


「ごめんレオ君、ちょっとここは私に任せて」


「え?」


「フェリシリアは私の因縁の相手、かつてのパートナーよ」


「そういうわけにはいきません」


「いいわよフーコ、私がステージを用意してあげる」


「っ……」


「強制対戦コロシアムフィールド、ダンジョンシステムの集団戦対策に開発された、制約のシステム、これで邪魔は入らない」


 まさかレオ様が使っているこのフィールドを他にも展開できる人がいるなんて、このフィールド行使にはマテリアルコードの所持者並みの精度のスキル操作が要求されるはずなんだが。


「まあ、そういうことだから、レオ君はここで待っていて。こいつとは決着をつけなくちゃいけないと思っていたの」


「直ぐにでるのでそれまで耐えてください」


「ふ、分かったわ」


 このフィールドを解除するには僕にもかなりの時間がかかるようだ。解析が全く進まない、この制度のコロシアム展開、フェリシリア、いままでの幹部とは別次元の存在だと感じた。


「さあ、始めましょうかフーコ、私はずっとあなたに会いたかったのよ」


「いったい2人はどういった関係なんですか」


「私が話してあげようか?」


「そんな暇は与えない!」


「ロック5分、止まれ」


「何?」


 今度はフーコさんの動きがロックされた。


 いったいこれはどういうことなの?


「イグニットとシュウを倒したことに敬意を表さなくてはね、あなたのことは高く買ってるのよ、レオ、私の仲間になりなさい」


「お断りします」


「じゃあ、説得も兼ねて私とフーコの過去を教えてあげる」


 あれは、ギルドニュートラル時代の話。


 







私とフーコはニュートラルの双璧を担っていた。


 向かうところ敵なし、まさに私たちは二人で最強、実力をだせばトップギルドになることは間違いないものだったのだ。


 私の方がフーコより一回り年上だったけど、彼女の才能は一瞬で開花した。


 私はフーコの力を制御するにはコツがいると思った。


 そして彼女の才能をいち早く見抜き、育てることにした。


 あては当たった、フーコは直ぐにトップの私に迫る力を手に入れたのだ。


そして双璧と呼ばれるにいたる。


 そんな日常からしばらくが立ち、ギルドニュートラルはギルド攻略に力を入れだした。


 やがて、多くのトップギルドとして公にするために陰で力をつけていったのだ。


 多くのプレイヤーを先導するものとして、ギルドニュートラルは先頭に立つ必要があるのだ。


 そしてダンジョン攻略をひそかに先行して40層を迎えた頃、遂にギルドニュートラルとしてトップギルドを公にすることを実践することになった。


 その時動き出したのは今のヘルのボス、キルレだった。彼は力を隠していたのだ。


 キルレは公にすることを反対し、賛同者を連れてギルドニュートラルのダンジョン攻略反対勢力を作り上げた。


 こうしてギルドへヴンとヘルが出来上がった。


 そのはざまの中で私はフーコを裏切った。

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