第23話 四天王

 力を克服したと思っていた。レオ様も受け入れたと思っていた。


 でもそれはただの勘違いだったのだ。


「レオ?」


「ユズ……」


「ユズとは誰のことだ?」


「いいんです。少しやらかしてしまったみたいです。僕のパートナーと別れてしまいました」


「パートナー? 様子がおかしいぞレオ」


「全部思い出しました。レオ様がみていた記憶を。僕はレオであっています。ただ主人格の方のレオです。アイシアさん」


「お前がレオの主人格か!」


「はい、すいません」


「そうか……あっちのレオはいなくなったのか」


「僕も入れ替わることはできません。でもどっちも僕ですよ」


 僕はアイシアに手を差し伸べた。


「記憶は残っています。こうなってしまったからには仕方がありません。ヘルを倒しながらダンジョンを抜け出す方法を探します。力を貸してくれますか? アイシアさん」


「私は今更戻ることはない。妹の恩人でもあるし、私はレオの奴に借りがある。喜んで協力するよ」


「よろしくお願いします」


「ミレイ?」


「だから私はアイシアだ。ミレイは妹」


「ミレイの姉さんだったんですね」


「妹が世話になったようだな」


「こちらこそ、レオ様がまた暴走したりしませんでした?」


「暴走していたが」


「え?」


「まあ、でも私はあいつには感謝しているんだ」


「そうですか」


 僕はアイシアと同行することになった。


「アイシアさんは大丈夫なんですか」


「何がだ?」


「僕と一緒にきて」


「ああ、私はへルのおたずねものになってしまった。敗者には罰を下す非情なルールだ。だけど私はお前に助けられた。その恩はかえすつもりだ」


「そうですよね。レオ様が助けたあなたを僕は見捨てることはできません。でもお伝えしたいことがあります」


「なんだ」


「僕はレオ様やヘルとは違ってダンジョン攻略反対派じゃありません。だから僕はアイシアさんと相いれない存在です」


「なんだと……お前、だって自分あいつと同じ存在だっていったじゃないか」


「でも思想は違います。僕はギルドオブヘヴンのフーコさんの派閥に共感している存在です」


「そうか……」


「同行してもらうことになって早々にすいません。それでも僕はアイシアさんと一緒にいるつもりです」


「……」


 アイシアは沈黙して考え込んだ。


「ヘヴンのフーコか、懐かしいな」


「どういう関係なんですか」


「フーコは私にとって恩人だ。ミレイを引き取ってくれて、ヘルに入った私は出来損ないで姉失格なのに、それでもいつでも戻ってきて欲しいと言っていた」


「じゃあ、一緒に戻りましょうよ。ミレイさんもいますし」


「今更私がミレイに顔向けなどできない。でもお前には恩がある、元はここで消えていたから、力を貸すつもりだ」


「分かりました」


 ダンジョン攻略には反対のアイシア、ヘルにも入っていたほど拒んでいたのだから、いずれぶつかることになるのかもしれない。


「ひとまずはここを抜け出すことが先だ」


「レオ様が未開拓エリアに入ったせいで、退避ができないんですが、どうすればいいんでしょうか」


「未開拓エリアにいる私達へルはダンジョンに居続けている。基本的にはダンジョンをこちらから抜け出すことはできない。だが方法はある?」


「それは?」


「80階層ディメンションキメラを倒すことだ」


 それからアイシアはヘルについて沢山教えてくれた。


 ヘル上層部イル、あいつが管轄する最上部。


 ちなみに70層には内密情報の電波のコアであるヘルの本部があるらしい。


 その電波を破壊すればネットが使えてみんなと連絡が取れるはずだ。


「さっき私たちが倒したイグニットはヘル、四天王の1人。ヘルには4人の幹部がいるんだ」


「それは誰ですか?」


「炎騎士イグニット、参謀イル、未来視のフェリシリア、黒の騎士シュウ、これが四天王の名前だ」


「では、リーダーの名前は?」


「リーダーの名前はキルレ、おそらく異次元の強さをもっている」


「分かりました、とにかく70層になんとかいって、本部の電波塔を停止しましょう」


「ああ」


 目覚めてからスキルの精度が上がっていた。一定レベル以下の魔物や敵の感知能力があがっているから、遭遇を避けることができたのだ。


「やはり階層ボスはいませんね。既に攻略済というのは嬉しいところです」


「ここら辺ともなるとヘルが管轄しているからな。正式に表のダンジョンに出るころにはそこは管轄外となりボスもリポップする」


「まさに先行支配権を独占しているわけですね」


「ああ、だから対抗するには、通常プレイヤーを超える強い力が必要だったんだが、まさかそこまでレオの感知能力が高いとは」


「僕も驚いてるんですよ。気が付けば、ここまで精度があがっていました」


「まさかあいつわざと敵にあたってんじゃ」


「レオ様なら確かにありそうだなあ」


「このままなら一気に70層に行けそうだ」


 それから感知能力で敵を避けていき、ダンジョンボスは存在しないためあっと言う間に70層に到達した。


「ここがギルド・オブ・ヘルの本拠地」


 漆黒の壁に包まれて、ダンジョン70層を掌握している。


 いたるところに黒装束のメンバーがいるため、ステルススキルと感知がなければ、一瞬で終わるだろう。


「ここは少し苦手だな」


「何があったんですか?」


「私も本部召集されたことがある。最上階でイグニット、シュウ、フェリシリア、イルそしてキルレの5人に査定をされたんだ」


「そんなことが」


「私も幹部候補だったからな、上層部は私を幹部にするか決めかねていたようだが、結局話はなかったことになった」


「どうして?」


「未来視のフェリシリア、あいつはフーコの因縁の相手なんだよ。私とフーコはミレイのことで繋がりがある。フーコと親しくなるかもしれない私をフェリシリアは警戒していたようだな」


「なるほど」


「実際今の状況をみればあっていたようだが」


「そのフェリシリアという人物にも警戒しましょう」


 本拠地に潜入した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る