第20話 希望

「結局レオ君はどこにいったの?」


 ダンジョン遠征は解散になった。


 ダンジョンにいたプレイヤーは散り散りになった。


 大人数なため転送システムが設けられている。


 転送システムによって私は自宅に転送された。


 私はその後すぐにフーコを訪ねた。


「あら? もう来たのね」


「レオ君の家にいったら誰もいなかった。これはいったいどういうことか聞かせてよ」


「レオ君はね、まだダンジョンに残っているわ」


「なんですって」


「レオ君はミレイと戦った後に、抑止力を失ったのよ。あなたが寝ている間、彼はレオ様に乗っ取られた」


「そんなことって……せっかくレオ君が抑えたのに」


「これは仕方のないことなの。彼の運命だから」


「なんで教えてくれなかったんですか?」


「言ったらあなたはレオ様を追うでしょ。それはとても危険なことなの。未開拓ダンジョン、そこにはまだ見ぬ世界が広がっているから普段の追加報告があるダンジョンとは違う。危険な存在な魔物や組織がいるから。それに私の管理外でもある」


「フーコさんが管理を」


「ええ、ギルドオブヘヴンのリーダーとして、私は遠征を管理できる範囲内にとどめた」


「それって、いままでのダンジョンはフーコさんが管理していたってことになりますが」


「ええ、だって、私は先の階層まで知ってるから。ダンジョン54層からの敵は格段に強くなる」


「どういうことですか」


「全てを話すわ」


 私はギルド・オブ・ヘルとレオ様の目的をフーコさんから聞いた。


「そんな組織がいるところにレオ君が一人で、助けなきゃ」


「無駄よ。未開拓ダンジョンは開通するまで次の周期、約1週間を要する。私の予知スキルで全てのダンジョン出現の範囲は見抜かれている」


「そんなことって……私はレオ君とコンビを組めたと思ったのに……力になれたと思ったのに、なんにもすることができなかったの」


「今は彼が帰ってくるのを待つしかないわ」


「私がとめられなかったから……」


「ユズ?」


「はあ、はあ、はあ」


 これはマテリアスキルの暴走? 内側から黒い渦が心臓を侵食している。まずいはやくなんとかしないと。彼女と同じ力を持つ人が傍にいなくては。


「スキル発動」


「……お、収まった?」


「戻ってきたと思ったら早々に荒れてるわね」


「ミレイ、あなたどこにいってたの?」


「別に先に帰ってたから、買い物に。やっぱりその子も来たのね。気を失ってしまったようだけど」


「ええ、レオ君のこと、やっぱり辛かったみたい」


「レオ……知らない、そんな奴のこと」


「ミレイ、あなたね」


「レ、レオくん」


「ユズ、よかった目を覚ましたのね」


「ふん」


「あなたはミレイ」


「ミレイがスキルの暴走を助けてくれたのよ。彼女もあなたと同じスキルの所持者」


「お礼はいらないわよ」


「あなたのせいで」


「うん?」


「あなたのせいでレオ君がダンジョンに閉じ込められちゃったんじゃない!」


「ちょっ、やめなさいよ。離して!」


「あなたのせいで!」


 ユズはミレイにとびかかり、胸倉をつかんだ。


「痛っ」


「レオ君を返してよ」


 ユズがミレイの髪を引っ張った。


「知らないわよ、そんなこと」


「あなたが、レオ君の力を使わせたから、レオ君がまた力に飲まれちゃったのよ」


「それはあいつが実力不足だっただけでしょ」


「何そのいい方! 私許さないから!」


「いい加減にしなさい」


「きゃあ」


 ミレイはユズを蹴り飛ばした。涙を流しながらユズは茫然と倒れている。


「私とレオ君の戦いは両者の信念をかけたもので互いに了承済みだったわ。それを否定するのはレオ君を侮辱することになるわよユズ」


「そんなつもりで言ったんじゃ……」


「そもそも、あなたがレオ君から目を離したのが最もな原因でしょ。私のせいにしないでよね」


「わ、私のせい……」


 ミレイのセリフによってユズの目から光が消えた。


「ちょっとミレイ言い過ぎよ」


「ふん、フーコはあまいのよ」


「私のせいで、レオ君が…私のせいでまた……」


 目から光が完全に消える。


「ちょっとまた力が暴発しないでしょうね」


「さっきあなたが抑えたから大丈夫よ。ただ感情は別だろうけど」


「……」


「ちょっと、ユズ、いきなり黙らないで何か話しなさいよ」


「……」


「これは心の療養が必要かもしれないわ。ミレイあなたちょっと言い過ぎたのよ。ユズに謝りなさい」


「はあ、もう、分かったわよ。ユズ、ごめんなさい、ちょっと言い過ぎたわ」


「……」


「完全に心を閉ざしてしまっているわね」


「これはもうレオの奴を引き戻すしかないわよ」


「ええ、そのつもりよ」


「そのつもりよってできもしないこといわないでよ。もうダンジョン最新階は閉ざされてしまったわ」


「ええ、正規のアップデートではレオ君に私たちが追い付くことはない」


「じゃあ、どうするのよ」


「希望はあるのよ」


「希望?」


 フーコは沈むユズに駆け寄った。


「……?」


 するとユズの目に光が少し戻った。


「ユズ、安心しなさい」


「フーコさん……」


「希望はあるのよ」


「希望?」


「ええ、まだ希望はあるわ」


「教えて!」


 ユズの意識が戻った。


「流石フーコね。早速教えなさいよ」


「ええ、私の予知では近々プレイヤーを巻き込む大がかりな計画をヘルが実行する。そこで多くのプレイヤーはいずれダンジョン上層に行くことになるかもしれない、その時が勝負よ。私たちはその時のために力を備えておかないといけない」


「それ本当?」


「ええ、ユズはどうする!」


「私、やります!」


「ユズ、ミレイ力を貸して」
















「ふう、大分進みましたね、おっ案内ご苦労様」


「き、貴様、後悔するぞ」


「後悔? 何の冗談ですか? ここは57層、まだまだ道のりは長い。あなたには基地の道案内をしてもらう」


「まさか攻撃を全てデーモンごと消滅させるとはな」


「管理者と言っていましたがあの程度で消滅するとは少々役不足ですね」


「ふふ、わざわざ本拠地に来てくれるとはこちらも好都合というもの」


「そうですね。そろそろ気になったので暴かせてもらいますよ」


「何?」


「バッ」


 黒装束をフードを取った。


「ほうほう、これはミレイさんに似てますね」


 黒装束は金髪の女性だった。

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