第17話 ダンジョン


「ダンジョン……このダンジョンは終わりがないのでは?」


「いいえ、着実にダンジョンは、更新を続け終わりに向かっているのよ」


「なんであなたがそれを知っているのですか? 最前線攻略組は僕です。僕より先のダンジョンにいるプレイヤーはいないはずですが。たとえヘヴンのあなたでもね」


「確かに表のダンジョン攻略においてはあなたが先頭に立っているわね。でも裏ではどうかしら?」


「どういうことですか?」


「私達、ギルド・オブ・ヘヴンはダンジョン階層の秘密を解き明かすことに成功したのよ。全ては秘匿情報として裏世界で別に攻略が起きているということよ」


「は、はははははは! それは素晴らしい! 先頭に立っていたと思っていた僕の前には裏攻略の方々がたくさんいらっしゃったのですか」


「そんなに嬉しいの?」


「ええ、これで潰しがいがあるものですよ」


「それはよかった。ね、言ったでしょ答えが見える話だって」


「ふふふ、しばらくはレオ君には消えてもらいますかね」


「あなた、手加減していたの?」


「だって退屈じゃないですか。トップにいるのは。トップじゃないと分かったからこそ次の目的が生まれました」


「あきれた気分屋だわ」


「なんとでも。それより続きを聞かせてくださいよ」


「ええ、ダンジョンの秘密を解き明かすきっかけになったのは私なの。スキルは熟練度によって進化する、私のスキルは感知レーダーで先の世界を解き明かしたというわけ、これはほんの最近の出来事なの」


「じゃあ、討伐遠征もそれに繋がると」


「その通り、この討伐遠征で私は曖昧だったダンジョンの実態を全て解き明かしたわ」


「全てだと?」


「ええ、凄いでしょ。私の能力はそれだけ覚醒したの。プレイヤーみんなとリンクさせてね」


「ではダンジョンの全貌を聞かせてもらいますか」


「100層、このダンジョンは100層を突破することで全てクリアされる。そして今は54層、ちょうど今回の遠征が層攻略を急速に早めたといえるわ」


「……」


「どうしたの? 黙ってしまって」


「ダンジョンには本当に終わりがあるのですか。今は半ば程度ですが、この高揚感をいずれ味わえなくなると」


「ふふふ、あなたの純粋な思考はつくづく私の話をする適役だと思ってしまうわ」


「何か他にも言いたげですね」


「ええ、そんなレオ様に質問。あなたはダンジョン攻略した先の世界をみてみたくない?」


「勿論、それは僕が目指しうる高みです。ですが、終わりがあるとなると、話は変わります。僕はダンジョン攻略を防ぐ手段を取るかもしれません」


「どうやって?」


「いいことを思いつきました。ダンジョン最上階でプレイヤーを全員倒すとかですかね」


「ふふふ、あなたって本当にそっくりね」


「そっくり?」


「あなたが思うように、ダンジョンってそんなに悪いものなのかと疑問を持つ人物がいたわ。確かに魔物は出てこないし現実世界に危害を加えるわけではない。それに配信をはじめとして様々なビジネスがダンジョンを通じて既に浸透している。これの終わりは必ず大きな余波を生み出すということ」


「フーコさんはどう思っているんですか」


「私はダンジョン攻略派よ。ダンジョン攻略をすることでダンジョンが消滅して、それを拒む人も出てくるかもしれない。でも本来ダンジョンとは攻略するものよ。そしてそれこそプレイヤーの本質、あなたも何も言わなくても最上階までは攻略するつもりだったんでしょ」


「まあそうですね。ダンジョンは攻略するためにある。残り46層、楽しみは僕が全部いただきますよ。それから100層のボスを倒して、僕自身が100層ボスになりましょう。ハハハハハハハ」


「たいそうな自信ね」


「僕はやはりフーコさんの敵ということですね」


「100層攻略の意思があるからそうとも言えないわよ。それまで私はあなたを味方とみなすわ」


「はっ、何を言い出すんですか。僕があなたの味方のわけないでしょ」


「確かにあたなは強いけど、ここからは今まで通りとはいかない」


「どういうことですか?」


「あなたは知らないでしょうけど、裏ギルドがギルド・ザ・へルが水面下で動き出してるのよ」


「あなたがたとは反対のギルドですか? 面白い名前ですね」


「そもそも私たちは元々ギルド・ザ・ヘルと同じ所属よ。元々の名前はギルド・ニュートラル、最先端の攻略と、調和を目的とするギルドだったのよ」


「調和?」


「私たちギルド・ザ・ヘヴンは遠征討伐をしたり、正規の方法でダンジョン攻略を促しているでしょ? だけどギルド・ザ・へルは反対の組織、ダンジョンの情報をいち早く入手する情報網と実力に加えて、それを悪用して自身の利益としているのよ」


「なるほど、方針の違いで分かれたわけですね」


「ええ、有益な情報を自身の利のために使うか、全ての調和を見越して使うか、双方意見が分かれて、次第に情報が共有されなくなり、分裂したってわけ」


「思想の違いというわけですね。僕もヘルの思想には同意しかねる。僕がボスになるまでに取り払いたくなる連中ですね」


「でも手段を択ばないだけにギルド・ザ・ヘルは強敵よ。60層以上のアイテムの情報を持っている。あなたも知ってるでしょ、さっき戦った未知のアイテムを持ったプレイヤー」


「ああ、あのククリナイフですか。僕にとったら大したことなかったですけどね」


「でも一般プレイヤーにとっては太刀打ちできない実力を持ってるってわけ」


「でも今は54層で差を、縮めたなんてすばらしいじゃないですか。フーコさんに至ってはこのダンジョンの行く末全てを感知するまでにいたっている」


「ええ、だからここで決着をつけるわ。レオ、あなたにも力を貸して欲しい」


「断ります」


「なんですって」


「ギルド・ザ・ヘルなど取るに足りません」


「あなたが戦ったのはしたっぱよ。幹部は私達と協力しないといけないわ」


「それじゃあ面白くない。僕はソロでやらせてもらいますよ」


「ちょっと、待って、はあ……やっぱりレオ君のがよかった」

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