第16話 裏のプレイヤー

「こんなことはいいたくないけど、こうなることは分かってた」


「レオ様みたいなセリフを言うじゃない」


「うん、レオ様も僕の一部だからね。それに言いたくないっていったじゃない」


「あきれた強さだわ。レオ様も強かったけど、あなたは底が見えない」


「ミレイの気持ちは分かったよ」


 戦いの中でミレイの気持ちが伝わってきた。ミレイが本当に倒したかったのはレオ様ではなく強くなった僕だったのだ。


 ある意味これもスキルの能力のようなものなのだろうか。次第にミレイの心の中を見抜いてしまったのである。


「フーコはあなたに大きな期待を抱いている。私以上の、だからあなたに勝とうとしたけどダメだったみたい」


「フーコさんはミレイのことを見てくれているよ」


「それだけじゃ物足りないのよ。もっと私は認められたかった」


「ミレイ……」


「でももう満足したわ。フーコの思い描いていた光景は本当だったのかもしれない。あなたの力は本当にフーコの願いをかなえられるかもしれない」


「フーコさんの願い?」


「ここでは言えない。本人の口から直接聞くことで意味があることになる。私は全力のあなたと戦えてよかった。後はフーコをよろしくね」


「ミレイも一緒に来てよ」


「私は離脱させてもらうわ。もう目的は達したからね。ユズ」


「はい!」


 ユズは実は意識を取り戻していて、静かに僕たちの戦いを見てくれていた。


「さっきはごめんね」


「まあレオ君が乗り気だったし許してあげる!」


「ふっ、じゃあね」


 ミレイはダンジョン遠征から離脱した。


「じゃあ、行こうかレオ君」


「うん」







 ミレイとの死闘を終えた僕に異変が生じていた。


 視界がくらい、ピントが合わない。


 少しずつ熱が出ている感じがする。


 この感じを覚えている。僕がレオ様と人格が変わる時だ。


「レオ君どうしたの? 顔色が優れないけど」


「ユズ、ちょっと疲れちゃったみたいでセーブポイントで休まないか」


「うんいいよ」


 セーブポイントでは魔物の干渉やバトルが発生しない。休憩ポイントとなっている。


「流石にいろんなことがありすぎたね。レオ君?」


「……」


「寝ちゃったか。まあしょうがない私も寝るよ」










 いったでしょこれじゃ終わらないと。僕はいつも機会を伺ってる。また力の世界を。


 僕はミレイとの戦闘後に力を使ったことでレオ様の人格を抑える力が弱まっていることに気づいた。


 でもレオ様の力がなければ、僕はミレイに勝てなかった。だから仕方なかったんだ。またどうにかしてみせる。


「フフフ、力を感じる」


 不完全なレオ様の人格交代は本能のままに、力の痕跡を辿ってユズをおいてセーブポイントから出ていた。


「ささっ」


「そこにいるのは分かっていますよ。あなたはかなりの力をもっている。何者ですか?」


「ヒヒヒ、表のプレイヤーはお前が生き残りか」


「表のプレイヤー?」


 突如黒装束のプレイヤーがあらわれた。ククリナイフをもっている。


「そろそろ俺らも上から動いていいってお達しが来たんでな。表のプレイヤートップが、裏の世界では通用しないことを教えてやるよ!」


 黒装束のククリナイフが鎌の形態に変化した。形態変化する武器は見たことがない。


「そんな武器知らないんですが。まさかあなた達、未公開ダンジョンに侵入してません?」


「だから裏っていっただろ? 表のお前には分からない世界がここにある!」


「ふん」


「何?」


 黒装束の鎌を片手で受け止めた。


「確かにこの武器のステータスは今実装されているものと比べると、格段にインフレした性能になっています。ですが、自力が私とあなたとでは違うんですよ」


「くそがあああああああ!」


「ふん」


 黒装束をスキルで消し飛ばした。


「うわあああ」


「いったい何者だったのでしょうね」


 周囲に影を感知したが、一瞬で消えた。マテリアコードを持つ僕の感知を逃れるとは只者ではないだろう。


「力を感じる」


 本能のままに次の階層に進んだ。










「あら? もう来たの? また戻ってるじゃない」


「やあ、久しぶりですね。フーコさん。あの日の借りを返しにきましたよ」


 次階層のフロアにはフーコがいた。


「ふふふ、やっぱり話すならレオ様の方が話が早いと思ってね」


「だからミレイさんを仕向けたというわけですか」


「さあ、どうでしょう」


「すっ」


 レオ様の手がフーコをとらえようとした。


「何?」


 しかしみえない壁に阻まれた。


「ははは、やっぱり計画通りなんじゃないですか。こんな結界張って僕を待ち伏せしてたんですね」


「あら、ごめんなさい、偶然でちゃったのよ」


「ふふふ、女狐め。それで僕になんのようなんですか?」


「マテリアスキルの所有者として私の提案を聞いてもらおうと思ったのよ」


「僕の方でいいんですか」


「ええ、人格は問わないわ。より力の強い方に聞いてもらいたかったの」


「ふふ、酷い人ですね。レオ君の方に期待をかけてたのに僕の方なんですね」


「ここにあなたが現れたのがその答えよ。確かに一時はレオ君の力はレオ様を超えたけど、安定感がないのよ。ミレイと戦った後でも力を保てなきゃ意味がない」


「フーコさんはお目が高い。確かに僕の方が実力は上ですよ。が、しかしそれが協力に繋がるとは限らない」


「きっとあなたは私の話を聞くはずだわ。これからする話は力を求めるものに答えを授ける話となっているもの」


「……」


「レオ様、あなたは力を周囲にぶつけていた。それは答えを探していたのでしょ。満たされぬ力の欲望に取りつかれながらね」


「ふう、やれやれ、つくづくあなたとはやりにくい。こうして対面してると全てを見通されて掌で踊らされているようだ。癪に障りますが、話を聞きたくもある。今回のところはフーコさんの提案に乗るとしますよ」


「ふふふ、やっぱりあなたは話が分かる人のようね」


「早く始めてくださいよ」


「ええ、あなたは今でこそ現実世界に浸透していて配信までされてるダンジョン、その全貌について知っているかしら?」

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