第15話 ミレイの秘密

「なんでここに。ダンジョン探索はできないんじゃ」


「ごめんね。嘘ついてたの。私はサブ垢でレオ様と戦っていた。私の本アカはこっち」


「本アカ?」


「改めて自己紹介するわ。私はギルド・オブ・ヘヴンNo.2のミレイ。レオ君、あなたに宣戦布告をしにきたのよ」


 フーコさんがヘヴンのリーダーってことはミレイもやっぱりそういうことだったのか。


「レオ君には手をださせないよ」


「あら、あなたも私の相手をするの?」


「ユズ、やめてくれ、僕はミレイと戦いたくない」


「そんなこと言ってられないよ。この人の殺気がかなり凄いのよ」


「ミレイ?」


「ふん、所詮子供ね」


 微笑むミレイからは強烈な殺気がでていた。


「私は君を倒しにきたの。レオ様を超えた君を倒せば、私がレオ様を倒したことになる」


「うわっ」


「ガギギ」


 ミレイの攻撃をユズが止めた。


「なんのつもり?」


「それはこっちのセリフよ。フーコさんの知り合いって知ってるから黙って聞いてたけど、いきなり攻撃してどういうつもりよ?」


「今のこいつなら、私の劣等感が払拭できるのよ。レオ様に負けてから感じてる劣等感を今晴らさせてもらう」


「それはレオ様に勝たないと意味ないんじゃないの」


「どっちも同じだね!」


「きゃあ」


 ユズがミレイを吹っ飛ばした。


「ミレイ! お前ユズに何てことするんだ!」


「あなた言ってたじゃない? 弱者は強者に淘汰されるってね」


「それはレオ様のセリフだってミレイも分かってるだろ! 僕はミレイのおかげでレオ様を倒すことができた。だから感謝してたのにこんなこと」


「感謝なんていらないのよ! 私はどんな手を使ってでもレオ様を超える。それだけのためにここまでやってきたんだ」


「ぐわっ!」


 ミレイに吹っ飛ばされた。


「どう少しは分かったかしら?」


 ミレイの表情は本気だった。本当にレオ様を倒せなかったから、僕に切り替えさせて、倒す作戦だったのだろうか。じゃあ僕はミレイに利用されたのか。


 だとしたら随分と舐められたものだな。


「ミレイは本気なんだね」


「何よその目わ」


「その気持ちに答えなきゃと思って」


「弱いくせに何言ってるのよ!」


「バシッ」


「それは違うよ」


「何?」


 ミレイの追撃を僕は手で防いだ。


「ドカっ」


「うわっ!」


 反撃でミレイは吹っ飛ばされた。


「さっき、ミレイは僕を子供だとか、甘いとか馬鹿にしてたけど、それは勘違いだよ」


「なんだと」


「僕はレオ様を捨ててない。どちらも受け入れて両立させることを選んだんだ。光も闇も両方受け入れて、今の僕があるんだよ。だから今の僕はレオ様のときより強いよ」


「だったら試してやろうじゃない! マテリアルスキル、2重発動!」


「ドドドドドド!」


「これは」


 前にレオ様に出していたミレイのマテリアルスキル、身体強化の能力となっていたようだけど、あの時より出力があがっている。


「凄いよミレイ、まだこんな力を隠していたなんて」


「言ったでしょこっちが本アカだって、前回のレオ様戦はただの小手調べ。強いのは分かったから弱体化させて確実にここで叩く」


「こい!」


 ここらが本番だ。


「ドドドド!」


 ミレイの2つのスキルを両手に宿している。前回レオ様との戦いでは1つのスキルの力を両手に宿していた。だからそれぞれの両手の攻撃が2倍になっている。


「スキルが2つになると何もかもかわるんだね」


「スピード、パワー、強度、どれをとっても段違い。これで届かないなんてことはありえないはず」


「試してみるといいよ」


「ドドドド」


「当たらない……」


「そういうこと。分かった? しかもこれはレオ様の力しか使ってない。まだ僕は本気じゃないよ」


「そんな……こんなことが」


「ミレイ、いっただろ、僕はレオ様じゃないから、これ以上ミレイを攻撃しない。こんな戦いやめよう」


「こっちもそうわいかないのよ。託さないといけないから」


「託す?」


「私は君を強くしなくてはならない」


「ミレイはいったいどんな使命を背負っているんだ?」


「それはあなたに私が勝ってから全て教えてあげるわ!」


「どうしてもやるっていうんだな」


 再び双方の激しいエネルギーが衝突した。







 あの時の思いはまだ私の中に残っている。


 あなたには渡せない。



 私がダンジョン配信をした理由。それは現実世界の理不尽さを忘れるためだ。


 私は私に利を求めて近づいてくる奴らに失望していた。


 いつでもどこでも損得感情が関わってくる。人間の欲望が私は苦手だった。


 そんな人生に絶望していた時に、私はフーコとであった。


 フーコは他と違ってた。自然と接することができたのだ。


 彼女のおかげで私は自分が自分でいられた。


 人嫌いな私が心を許した人物がフーコで、次第に彼女のために動くようになっていた。


 私は自分がフーコの一番のお気に入りだと思っていた。


 フーコと一緒に行ったダンジョン攻略も私が先行して力をつけていった。


しかしダンジョン深層のボスに負けそうになった。


フーコとともに全滅するのか、そう絶望と不安がよぎることになるのである。


絶望の淵に立たされたとき、私の中にあるマテリアルスキルの力が覚醒した。


それも2つの覚醒である。


私はボスを倒しフーコにあなたがいなければ危なかったとお礼を言われた。


それから私はフーコの絶対的なナイトになった。


この力があれば私は戦える。ずっとフーコと一緒にいれるのだ。


フーコは私を認めてくれる。


そしてフーコが作ったギルドのNo.2になり私は誇らしかった。


だが、そんな日は長く続かなかった。レオ様が現れたのだ。


 その力は断片の私とは全くの別物、本物のマテリアルコードの能力の所持者、フーコがすぐに私への関心をなくしていることに気づいた。


 しかしすぐに分かったのは、フーコが興味を持っているのはレオ様ではなくレオ君の方だった。いったいどうしてこの少年にマテリアルコードが宿ったのか、そのことで頭がいっぱいだったようである。


 それからフーコは私にあまりかまってくれなくなった。


 でも私はそんなことは認めない、私の技術でマテリアルコードを超えて見せる。


 そしてレオ様ではなく本当のレオと戦い私が勝つ。


 そのためにレオ様を徹底的に研究し超えて、フーコが描く最高のレオを倒す。


 そう確信した私は外を出ていったのだ。



「はあ、はあ、はあ、はあ」


 戦いが終わろうとしていた。ミレイのスキルポイントはつき、力の消失を感じる。

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