第13話 レオ様VSレオ
「どういうことですか?」
アイテムボックスを見ると、ミレイがから受け取ったものが消えていた。
まさか完全に分離しているのか。
「レオ君? どうしてレオ君が2人に」
「ユズ、ありがとう、これでミレイさんがくれたものを発動出来た」
「それは何?」
「コピードール、一時的にだけデータを移行できるけど。まさかスキルを使えばこういうことになった。リミットは10分」
「それって、つまり」
「うん、リミット10分の間に僕がレオ様から人格を取りもどす」
「頑張って」
「分かった」
「役に立ててよかった」
ユズは微笑んだ後に倒れた。
「あはははははは」
「何がおかしい」
「たった10分で何ができるんですか? まさかコピードールに連動して僕と対面することになるのは驚きました。ですがあなたの実力では僕に及ぶはずもありません。加えて10分の制限時間、ユズさんの頑張りは無駄でしたね」
「……」
「スッ」
「何!? 消えた? ぐは」
高速移動したドールのつきがレオ様を捕らえた。
「とらえられた。やっぱり経験値はこっちにも届いていたみたいだ」
「こんなことが……何も見えなかった」
いつもなら、スキルで先の予測をしてレオ様が攻撃をかわすことができたはずだが今回はそうはいかなかった。
予測した未来は僕にもみえていたのだ。
そして実戦経験もレオ様と同等のものがついていた。
まさに今のドールを使った僕の力は、唯一と言っていいほどレオ様の天敵となったのだ。
「そろそろ人格交代させてもらうよ」
「ちっ」
これならいける。
「ぐはっ」
おしていたはずが突如吹き飛ばされた。
「ドカア」
「なるほど、理解しました。あなたは僕で、同等の状態になるということですね。確かに意識では互角かもしれませんが、本体とドールでは差があるということです。何よりマテリアルコードを行使するのは僕にあります。ならばイメージを捨て、純粋な能力で対抗するまで」
レオ様の体をオーラが包み込んだ。
「っ……」
「まさか僕がこんなことをすることになるなんてね。イメージに頼った戦い方から、発想の転換といえるでしょう」
「ぐはっ」
レオ様の身体能力は大幅に強化されて吹っ飛ばされた。
「まだまだ」
「やられっぱなしでいられるか」
「何?」
レオ様の拳を掴んで止めた。
拳にはミレイから受け取った、マテリアルスキルの自己強化効果を込めていた。
「ほーう、それはマテリアルスキル、やはりミレイさんの差し金でしたか」
「だからどうした」
「くふふふ、惜しかったですね。僕のイメージを封じるまでは見事でしたが、完全な戦闘力においてマテリアルコードを持つ僕はあなたの上位互換にあるんですよ」
「ぐあっ」
「ドカっ」
拳は振り払われ、再びケリで吹っ飛ばされた。
「はあ、はあ」
「まだ立つんですか? 無駄だと知るべきだ」
「簡単じゃないなんてわかってた。この光景も想定済みだ」
「何?」
「見せてやるよ、僕の秘策を」
レオ様はライブ中継映像を避けるようにプレイヤー狩りをしていた。
本来プレイヤー狩りは禁止行為であるからだ。
だが激しい戦いでライブ中継カメラの接近時間を稼ぐことができたのだ。
ー
お、レオがいるぞ。
ダンジョン遠征ももう後半戦か。
やっぱりあいつはまだ生き残ってたな。
流石レオ様。
誰かと戦ってるぞ?
ドール? 見たことないな。
あれは魔物なんじゃない?
魔物? じゃあダンジョンの新種の魔物とレオ様が戦ってるってことなのか。
これはどうなるか楽しみだ。
ー
「どういうつもりですか」
「僕はこのアイテムのシステムによって、ドールの魔物として観客に認知されている。そのドールの魔物にレオ様が負ければ、レオ様というブランドがここで終わりを迎える」
「そんなことしたら損するのはあなたですよレオ君。僕の力があったから多額の富や、名声、力を手に入れることができたのに」
「構わない。もう力に飲まれるくらいだったら。その根源を絶つだけだ」
「そもそもさっきまであなたは僕の手によって窮地に立たされていたはずですが」
「シュッ」
「何?」
レオ様に手刀をしてかわされたものの、顔にかすり傷を負わせた。
「まだまだ」
「ドドド」
「この速さ、さっきまで力を出し切っていなかったのですか?」
「全てはこのタイミングのため、体力温存は基本でしょ?」
「ちっ」
「ズドド」
ドールのラッシュはレオ様を捕らえることに成功していた。
自身との戦いによってイメージの先取りができないレオ様をここまで追い詰めたものは初めての状態である。
中継映像を見た観客にはどよめきが起きていた。
ー
レオ様ああああああ頑張ってええええ
おいおい、これはどういうことだ、あのドール強すぎだろ?
なんでレオ様はいつもみたいに攻撃を避け切れていないんだ。
あのドールが強すぎるんじゃないか。
ー
「なんで、そんなにスキルを使いこなしている?」
「僕はずっとレオ様の戦いの中で経験値を積んできた。あなたと同じ実力で戦うことができる」
「そんな馬鹿な」
「これで終わり!」
手刀がレオ様を貫いた。
意識空間に戻ってきたか。
まさか僕がやられるとは思わなかったです。マテリアルコード、この力は強大だが力の扱いが難しい。同じ実力なら、スキルを最大限に使いこなしたあなたの方が上手だったということですか。
やっとわかりましたか、あなたが他の人にやってきたことが。
なんにも分かりませんね。
反省なしですか。まあいいです。これからは人格を明け渡しません。
それは必ず後悔しますよ。あなたの力では誰も守れない、そこのユズも何もかも。その時初めてあなたは絶望を知るのです。その時は僕がまたあなたの人格を乗っ取ってあげますよ。
でも、よく考えたらそれもいいかなって。
何?
2つの人格はいわば光と闇、どちらも僕であることには変わりはない。だからどっちも受け入れるそれこそが自分という存在なんだ。そんな思考が気づいたら生まれてた。
何を寝ぼけたことをいってるんですか。僕が人格を主としたら、何もかも壊しますよ。あなたの親しい人であったとしても。
その時はまた僕が止めるさ。
ふっあはははははは。実に面白い回答だ。次に会ったときはどんな形になるか楽しみです。ただ僕を打ち破ったことは賞賛に値する、この力を自由に行使できるようにしておきます。
これは、マテリアコード。
その力があれば、全ての勝利への運命を見ることができる。
僕ほどでないにしろ、あなたは最強です。
この力は大事な人を守るために使う。
好きにすればいい。
それじゃあ、さよなら。
「はっ」
「レオ君? 目を覚ましてくれたの?」
「やったのか」
「うん、レオ君の勝ちだよ」
「や、やった、遂にやったんだ」
目を覚ますとユズがいた。
ついにレオ様から人格を取り戻すことができたのだ。
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