第11話 レオ様VSユズ

嘘、イル様まで脱落だなんて。


これはレオとヘヴンの一騎打ちか?


本当に予想外だわ。どうすればいいんだ。


予想通りだろ。


信者は黙れ


そっちも信者だから黙れ


おいおい、モデレーターに消されるぞ


レオ信者が凶暴なんだよ。


ヘヴン様! 完全無欠! 最強!


あっちの信者も凶暴なんじゃ?


しかしこのダンジョンとんでもないな。トップ冒険者が次々に脱落、いったいどんな高難度となっているんだ。


おれらがいったら瞬殺だろうぜ


こえー、ダンジョン攻略は下層だけにしておくわ。


攻略勢はみんなの希望だぜ。



 ダンジョン攻略遠征が始まってから数日が経過した。既に過半数は脱落したが、同時に今残っているプレイヤーは強者揃いといえる。このダンジョンの魔物の難易度は、最近攻略された層より難しい、ミレイのような隠れた実力者はオッズに左右されないため、まだ見ぬ強者がいるということだ。


「ぐわああああ」


「あはははははは、足りない、力がまだ足りない」


「ぐわああああ」


「もっと、もっとだ、もっと力を使わせろ!」


「くそがっ! 化け物め!」


「さきに仕掛けてきたのはあなた達ですよね。オッズに左右されない強者も所詮僕の前では塵のようなものです」


「うわあああああああ」


 その数、優に30、ダンジョン攻略勢の大半はレオ様によって脱落となっていた。知名度は人を引き寄せる、多くのものはレオ様の実力と人気を理由に、それを奪い去るために、立ちはだかったが、圧倒的な差で脱落していく。


 そのたびにレオ様の力が増幅していき、更に強いオーラを放つようになっていた。



「それで、君はさっきから僕をつけていますが、何か用ですか?」


「力に飲まれちゃダメだよ、レオ君」


「はい?」


「やっと、会えたね! あの日の借りを返しに来たよ」


「あなたは……ユズ!」







「えへへ、レオ様に知られているなんて光栄ね」


「当然知ってますよ。記憶は共有されてます。ただ僕はあなたの知っているレオではない、ここでプレイヤーとして接触したってことは分かってますよね」


「うん、わかってる。私はこのために学校を休んでずっと修行をしてたから」


「何?」


「こんにちは、私のショーへようこそ。今宵のショーを取り仕切る支配人はこのユズ、レオ様に私のショーを伝えに来ました」


「これがあなたの固有スキルですか。まさか珍しいフィールド系のスキルとはね」


「その通り、修行して手に入れた私のスキル、その仕様は教えないわよ」


「構わない。既にその能力を知っていますから」


「そんなわけあるわけない! ショープログラム発動! 支配人権限として、レオ様には猛獣とのショーをしてもらいます。いでよサークルライオ」


「ぐおおお」


「ショーをもりあげる猛獣の使役がその能力というわけですね。ですが実にくだらない、そんな猛獣の攻撃は届きはしない」


「やってみないと分からない!」


「なら、分からせるだけのことです。サモンスキル」


「ぐわあああ」


「嘘、私の一番強い猛獣のサークルライオを一撃で倒すなんて!」


「それは、あなたのサークルライオのレベルは30です。対して僕が召喚したケルベロスはレベル40、勝てるわけないでしょう」


「そんな」


「はあ、ユズさん。あなたは何しにここに来たのですか? 僕はあなたに対して恩を感じている。あの時、僕をあの場所につれていってくれなかったら、今の僕は存在しえなかった。同時に今の僕の弱点でもある。少しでもうちに存在する恩というぬるい感情を、あなたを消すことで解消するときこそ、僕は完全な力を持った存在になれるんですよ」


「ひっ」


 レオ様から、どんどんあふれるエネルギーのような覇気に充てられて恐怖した。ひざは震えトラウマが蘇る。初心者ダンジョンでした過ちと、レオ君の変貌による戦慄である。


「これは、全部私の過ち」


 同時にここに来た強い想いが頭の中をよぎった。


私のせいでレオ君がおかしくなってしまった。


レオ様の配信を見ていた。あんなのはレオ君じゃない。


ひとを見下すなんて、レオ君はしないし、絶対おかしい。


でもレオ君は望んで、あのようなことをしているなら私に否定する権利はない。


 そもそもレオ様に私は助けられたのだから、彼がいなかったら私はいまごろダンジョンでオーバーキルになって、きっと後遺症で入院することになってた。


 だから私は干渉しないし、レオ君が怖かった。レオ様になることを許容して、あれはレオ君の本当の姿なんだって思ったら、自然と彼を避けていた。


 でもそれは違っていた。ずっとレオ君はレオ様の人格に苦しめられていたんだ。力への依存に飲まれたレオ様の人格をどうにかしようとあがいていた。


だったら、私が全力で彼の人格を取りもどす。


それが今の私にできるレオ君への罪滅ぼしだから。



「さあ、ユズさん、ありがとう、そしてさよなら」


「そんな私に手を差し伸べてくれたのはフーコさんだった」


「フーコだと?」


「マテリアルスキル発動! エフェクト反映!」


 ユズの周囲が強力なオーラに覆われた。


 これが私の修行の成果と本気、全てをレオ様にぶつける!

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