第10話 同業者潰し 2

ミオ様あああああ


これでミオとエクスキューションが脱落かあ。


あいつらならメテオドラゴンを倒せるかと思ったんだけどな、相当強かったのか?


このダンジョンはもしかしたら相当難しいのかもな。


うわあ参加しなくてよかった。


お前は参加できなかったの間違いだろ。


うるせえ!


ミオ様にベットした人たちざまああ


黙れ!


通報しました。Banお願いしまーす


信者が切れてて草


もうカオスで草


次はどうなるんだろなー。


 大規模遠征の同接はかつてない30万となっていた。これまでの同接最高記録はギルド・ザ・ヘブンの20万であったため、この大規模遠征はダンジョン攻略においてもっとも注目されたコンテンツとなったといえる。混沌を極めたコメント欄の視聴者がみるドローンに映るのは当然ダンジョン内の全てではない。映像の裏で、配信者同士の心理戦や潰しあいが起きているのであった。


「次はあなたですか?」


「ひっ、お前はレオ」


「ダンジョン攻略内でのサバイバル、これは僕にとって素晴らしいシチュエーションです」


「待ちなさい」


「うん?」


「イルさん。後はお願いします」


「イル……確か優勝予想とオッズは3位、これは強敵ですね」


「ミオとのやり取りは見せてもらったよ。君の力は危険だ。秩序を乱すものを私は許さない」


「じゃあ、やりますか」


「電子エリア展開!」


「何?」


 イルの周囲から電子空間が広がっていく。流石は3位の実力者といったところですね。


「この空間は?」


「身をもってしるんだな」


「何?」


 接近してきたイルは手から剣を具現化させた。速度もある、避けるのは困難である。


「ま、通常ならですがね」


「ちっ」


 イルの剣は空ぶった。


「その軌道は見えてましたが?」


「果たしてそれでよみ切ったつもりか?」


「何?」


 気づいたらHPが削れていた。傷の先には剣が床に刺さっていた。


「これはいったいどういう? さっきかわしたはずじゃ」


「わざわざスキルを開示するわけないだろ? 終わりだ」


「!」


 目には何も見えない。周囲はイルの電子空間に覆われ、何か危険な気配だけを感じる。普通なら、警戒もしようもない、見事な静かさである。


 でも、全ては見えているのである。さっきの一撃はその感覚を試すためだ。一撃を食らって確信した、やはり運命は絶対で、この戦いも勝つのは僕なのだ。


「何? 全部かわしただと? さっきは当たったのに」


「ふふふ、この電子空間でオリジナルの武器を生成して、自由に操ることができる。速度も威力も、電子空間内の電子を基準とした高速攻撃を可能とする、それがあなたの能力ですね」


「見抜かれたか、見事だな……じゃあ、私の呼び名を教えてあげるよ。固有スキルはエリクトワルキューレ、視認できぬほどのスピードで武器を展開して、敵を蹂躙する。現役最強プレイヤーとは私のことだ」


「ずいぶん自分の肩書きを自慢するものですね。あなたが現役最強プレイヤーとは片腹がいたいですね。その称号は僕にこそふさわしい」


「結構有名だと思ったんだがな」


「あいにく僕は他のプレイヤーに興味がないんですよ」


「その余裕が命取りとなる」


「どういうことですか?」


「ミオとの戦いで能力は見させてもらった。相手の能力を見抜く、それがお前の固有スキルだろ? 感知系、確かに厄介だが、私はそれを上回る自信がある。対してお前は情報のアドバンテージを得れなかった、それが命取りといっているんだ」


「ああ、そういうことですか。現役最強プレイヤーのイルさんともあろうお方が情けないものですね」


「なんだと?」


「王者は常に余裕を持つというものです。いかなるときも自然体、ただそこにいるだけで勝利は確定する、それこそ真の強者です」


「そんな心がけで勝利を掴めるわけあるか!」


「ええ、当然ですよ。僕にはわかっている、数秒後あなたが地に伏して、僕がその光景を見下ろしている姿がね」


「ふん、そんな挑発にのるとでも?」


「そもそも、現役最強プレイヤーのイルさんがなぜオッズ3位だったんですか? ヘヴン、と僕と比べてあなたは格下、つまりもう最強プレイヤーではありませんよね」


「それは、てめえらの人気が高いだけだろうが!」


「元・最強プレイヤーの意地というわけですか」


「ぶっ潰す!」


 イルの電子空間が歪み始めた。これは戦闘モードというわけですか。


「エンドレスモード展開!」


「これは?」


 イルの電子空間が雷鳴を届かす。


「私を本気にさせたことを後悔させてやる。塵一つ残すつもりはないから覚悟しておけよ」


「おお、怖い怖い」


「ラビコール、エルモ、レバーシ、カラメテ、シリアルタ、ミナルシック」


「なんの呪文ですか?」


「貴様を葬る、言葉とだけ言っておく」


「なんだ?」


 イルが唱えた言葉と共に、周囲に様々な銃が出現した。そして機械の鎧を纏った。


「まだだ」


 イルが10人になった。


「分身というわけですか」


「お前の感知能力を超えるほどの物量で徹底的に押しつぶす!」


「面白い!」


「しねええええええ!」


「ドドドドドドドド」


 数十体の銃の乱発、避けるのは不可能である。だが僕には運命の啓示により考える必要もなく、自然と最適なスキルを発動していった。


「ほう、これは面白い、それぞれの銃が別々の属性を放っていますね。ラビコールは水、エルモは炎、レバーシは雷、カラメテは土、シリアルタは光、ミナルシックは闇といったところですか。属性スキルはあまり浸透していませんが、流石、現役最強プレイヤーだっただけにいいものを心得てますね」


「ば、馬鹿な、属性攻撃もできないお前がなぜ私の銃のエネルギー弾を相殺できる? いやそもそもこの手数を全て捌くなんてありえないはずなのに…」


「自分で言ってたじゃないですか、僕は感知タイプだって、そう僕には見えてます。あなたの銃が放つ弾のステータスが」


「な、何を言っているんだ? そんなステータスがあるわけないはず」


「ありますよ。弾一つには属性ごとに、細部のパラメータがある。僕はそのすべてのパラメータを瞬時に判断し、それを補完するパラメータの攻撃による相殺を行ったまでです」


「意味がわからない」


「いい表情になってきましたね。イルさん、それがあなたの限界です。僕はあなたの理解できない次元にいる存在ということですよ」


「ま、まだだ! 私の展開したエンドレスモードは消費スキルの銃を再び復活させ、発動することができるのだ! いくら相殺できるといっても、この永遠に展開されるこの物量に対応できるはずが……」


「見えてますよ」


「何?」


「あなたの展開した電子エリアのエンドレスモード、それにもパラメータが存在しています。不思議なことにダンジョンのスキルはバランスがうまく調整されている。永遠などない、あなたが復活させた銃は、およそ数百回を境に消滅、ゲームから除外されます。ほらまず一つ、ラビコールが消滅」


「なっ」


「ラビコール、エルモ、レバーシ、カラメテ、シリアルタ、ミナルシック、これで完全消滅ですね」


「う、嘘だ」


「アンチエリアスキル」


 イルの銃が全て消滅したと同時に、分身と武装も全て解除された。そしてアンチエリアスキルにより電子エリアも消滅した。


「わ、私が、負けた?」


「完全敗北ですね。まあ当然の結果です」


「な、なぜ、あの物量を捌ききれた?」


「これです、生成スキル、モノマテリア、衝撃と共に分裂し攻撃を防ぐスキルです」


「生成スキルだと? お前のスキルは感知だったんじゃ?」


「運命と勝利が僕にこのスキルを教えてくれたんですよ」


「何を言ってるのか分からない」


「あなたと僕とでは次元が違かったということですね。アハハハハハ」


「な、何をする、やめろ!」


「ミオさんを見てたんでしたっけ? 僕に負けたプレイヤーの末路知ってますよね?」


「あ、あ、あ」


「サモンスキル」


「いやああああああああ」


 オッズ3位 電子戦乙女 イル 脱落

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