第7話 最強スキル

 あれからユズは学校を欠席するようになった。もしかしてこれは彼女が考えるレオ様の解放に繋がっているのかもしれないと感じた。


 僕はユズがレオ様に対抗することを聞いて、勇気をもらっていた。レオ様の力に頼らず自分の力で強くなる。それが力に溺れないために大事なことなのだ。


 これに気づけたのは、ある人物の言葉がきっかけである。レオ様の力に溺れない強さ、それを求めるためには、僕はその人物と向き合わなければいけないのだ。


 放課後、僕はミレイの自宅を訪ねた。


「あらレオ君じゃない」


「あ、あの……」


 あれからなんて返していいか分からない。


「レオ君、なんとなく来ると思ってたわ」


「え? それってどういう」


「まずは、紹介するね。こちらフーコ、私達チームメンバーなのよ」


「こんにちわ」


 ミレイの元にフーコという大人の女性があらわれた。


「君がレオ君、ミレイがお世話になっていたわ」


「あ、はい……」


 この人はミレイとどんな関係なんだろう。


「まあ、とりあえずあがってよ」


「まずはレオ君の話から聞こうかしら?」


「僕はどうすればレオ様の力に溺れずに済むと思う? ミレイが言ってくれた自分の力を持つようにする。その方法が知りたいんだ」


「私が言っていたことを覚えていたのね。やっぱり君には素質がある」


「素質?」


「フーコ、説明してあげて」


「私から説明させて」


「あなたは」


「私はミレイの友人、あなたのことは知っているわ。レオ様の表の人格」


「もしかしてあなたもレオ様のファン?」


「いえ、私はレオ様には興味はないわ。ミレイから話を聞かせてもらっていたけど、私が興味あるのはあなたの方」


「どうして僕のことを」


「私は心理学を専攻しているんだけど、あなたの固有スキルについて心当たりがあるの」


「それって、つまりレオ様のことも」


「ええ、100万人に1人クラス、確率にしてほぼ0に近い、ダンジョンプレイヤ―に発現するといわれている力。それを私が見た文献ではマテリアルコードの変異体という概念としている」


「マテリアルコード? マテリアル、それって僕がミレイから奪ったマテリアルスキルのようなものなんですか」


「あら? ミレイはレオ様にスキルを取られちゃったの?」


「あたりまえでしょ。あそこは剣闘場なんだから、負けたものは全てレオ様に捧げることになる。でもそれは本望だったというわけね」


「本望?」


「なるほど、理解したわ。本当にミレイはレオ様のことが好きなのね」


「ええ、だから、私はレオ様を超える。これは私が仕掛けた次のレオ様への挑戦状ってわけ」


「二人ともさっきから何のことを話しているんですか?」


「ミレイはレオ君にマテリアルスキルを託したのよ。この力でレオ様を超えられるって確信してね」


「それって、最初から僕の手にこれが渡ることを想定してたってことか」


「そうよ、レオ君、あなたがレオ様を超えるの。私と、あなた、双方のために」


「マテリアルコードは勝利の運命を引き寄せる力。その断片がマテリアルスキルなの」


「じゃあ、この力は僕でも使いこなせると」


「そうよ。私は心理学専攻者としてあなたがマテリアルコードの所持者としてどんな答えを出すのかとても気になっている」


「いったいミレイとフーコは何者なんだ? なぜミレイはマテリアルスキルを持っているんだ」


「マテリアルコードに近づいたものがマテリアルスキルだからね、まあいずれ分かる時がくわよ」


「いい、レオ君、君にはこれからもレオ様として配信をすることになる。だけど君の中の自分の力で強くなりたいという意思と、私があげたマテリアルスキルは変化をもたらすことになる。いつか来るその時を私たちは心待ちにしているわ」


「いつか来るとき?」


 ミレイとフーコの謎が多い。だけど僕はここにきてあの力についてと、今自分が出せる能力を把握することができた。もう謎は解決した。


「僕はこれからどうすればいいと思いますか?」


「さっき言った通りよ、あなたは普段通りにしていればいい。おのずと変化は訪れる」


 僕はレオ様に対抗するには、どう動けばいいか分からなかったから、その答えを求めていた。フーコさんは僕に答えを提示したけど、本当にそれでいいのだろうか。


 その時僕の人格が飲み込まれていく。まるでくらい闇の底に沈むような感覚、レオ様である。


「どうやら、その表情は、答えが決まったみたいね」


「ええ、性懲りもなく僕を排除しようとしているのは分かりました」


「これがレオ様……」

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