第4話 リア凸2
「まったく人気がでるとこういうことも起こりうるのか。もう少し警戒するべきだったな」
ナビを見るとミレイの自宅と僕の家はかなり近かった。これは今後も関わることになりそうな予感がした。
お礼を言って流れで、色々話しちゃったけど、元はといえば彼女が原因で人格変化が起きて副作用で僕が倒れることになったんじゃないか。
いきなり僕のスマホを取ろうとしたりして、厄介なことこの上ないと思う。それでも話してしまったのは僕がこの力に恐れを抱いているからではないだろうか。
力に飲まれていくような感覚、心地いいけど誰かを傷つけることになりかねない。そんな力を共有してくれそうな人だとミレイに対して思ってしまったのかもしれない。いやそんなはずがないだろう。
「誰があんな恥じらいがない奴に心を許すものか! 僕はこう見えて硬派なんだ。決して誘惑には屈しないぞ!」
そうこういっているうちに日が暮れていた。
自宅に帰っても親はいなかった。みんな出張で外に出ているため、お金だけが置かれている。こういうときは正直寂しさを感じるものだ。
「まあ、だからこそダンジョン配信が僕の心の隙間を埋めてくれるんだけどね」
そう強がりながら、少しだけ僕の目には涙がこぼれていた。
今日は疲れたし、僕はもう寝ることにする。
次の日の放課後、僕は普段通り帰宅してダンジョンに向かおうとすると、校門で手を振っている人物に気づいた。
「レオ君~!」
「は?」
ミレイが校門で僕を待ち伏せしていたのだ。
「昨日の約束覚えてる? 私も一緒にダンジョンにいくわ」
「はあ、もう、知りませんよ、どうなっても。あなたがレオ様と言っているもう一つ人格は僕でも制御不能なんですからね」
ここまでついてこられたら、もう止めることはできないと思い、とりあえず釘を刺しておいた。この子は知らないのだ、レオ様という人格がどれだけ恐ろしいか、ということを。
「ええ、望むところよ」
「もう知りません」
言っても分からぬやからには、実際に体験してもらう方が有効だろう。何せレオ様は恐ろしい人格だ。ミレイもそこそこ痛い目を見てリア凸なんてやめるだろう。そこそこにね。
ダンジョンに到達した。突入するダンジョンはもう一つの人格が決める。だから僕は何が起きているかは知る由もない、残るのはたくさんのお小遣いと充実感である。
「先に言っておきますが、これからミレイが体験することは全て僕の責任ではありません。そこを注意したうえで突入してくださいね」
「やっとレオ様と手合わせできる」
「手合わせ?」
「う、うん、なんでもない。じゃあ行こうか!」
「ええ」
僕たちはダンジョンに突入した。
力あるものに栄光がもたらされる。無力は罪だ。力こそが全て。
「ねえ、レオ君、ここって最新ダンジョンじゃないの?」
「……」
「レオ君?」
「……」
「あぐっ」
ミレイの首をレオの手が捕らえた。
「知っていますか? 生存競争の中で生き残るのは強者のみです。同じダンジョン攻略者が揃ったらこうなるのは必然、あなたは今から消えるんですよ」
「離せ!」
「うん?」
手元が一瞬だけ狂った、これは錯乱スキルですか。それもこの僕のアンチスキルをはねのけるほど、強力な。この方かなりできますね。
「なめんな!」
完全に手を振り払われた。やりますね。
「僕の拘束を解いたこと賞賛に値しますよ。話を聞いてあげましょうか」
「この時を待っていたのよレオ様、あなたをずっと配信越しで見ていた」
「僕のリスナーでしたか、でもいけませんね。リスナーが配信者に会いに来る凸行為は、迷惑行為になりかねませんよ。僕の場合はそれに該当します」
「そんなことは分かってる。でもあなたとは一度手合わせをしてみたかったのよ。だからここまできた。今こそ私の実力を証明してあげるわ」
「ほう、ではそれ相応の覚悟を持ってここに来たということとみなして、こちらもそれなりの対応と行かせてもらいます」
「何?」
「配信開始です」
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