第5話 指先よ、熱く恨を語れ!

 俺の転生した世界は、大中小様々な国が三十程存在し、それぞれの国で国王一族が支配権を持ち、魔族と人間がモンスターと戦いながら共存し生活を営んでいる。俺がいるアキワという国は、その中では中の大程の大きさで、元の世界に例えるなら日本の本州に匹敵する国土を持っている。

 魔族の武者修行はその国内をぐるりと巡る形で、行く先々で遭遇するモンスターを倒し、腕を磨く。人間側にもこの魔族の通過儀礼は知られているらしく、訪れる先で武者修行中である事を伝えると、無償で宿や食事を提供して貰えた。

 そんな魔族界の必須行事である武者修行の歴史の中で最も多くのモンスター狩りを成し遂げたのが、我らが一行の師範代とも言えるフォンクであり、対照的に片手でも余る数で終わらせてしまったのがシュクゥルという事で、奇しくも二つの記録保持者が旅のお供として俺達に付き添う事になった訳だ。シュクゥルの方は参考記録になるが…。

「全く」この事実が話題に出る度、フォンクはいつも呆れた表情を浮かべた「国中回っている間、アンタ何をしてたの?ずっとモンスターから逃げ回っていた訳?」

「いいえ」シュクゥルがそんな事はないとばかりに両手を振りながら「殆どモンスターを気絶させただけで終わらせていました。どうしてもトドメをさせなくて…」

「力はあるのにねぇ…」フォンクはさも勿体ないと言った感じで両手を頭の後ろで組み、軽く上を見上げた「宝の持ち腐れだよ。出来ればアンタの魔法を丸ごと頂きたいくらいだよ」

 食材確保と休息を兼ねて立ち寄った村の飲食店で、取り留めない会話をしながらくつろぐ彼女達を見ていて、俺は最初の頃のギスギスした二人の関係が徐々に穏やかなモノに変わっていくのを感じ取っていた。まだフォンクの方がモンスターに対して完全に非情になり切れないシュクゥルに若干不満そうだが、それでもその内何とかなるだろうと言った、ゆとりのある気持ちが見て取れる様になって来た。

 そんな二人を見てプァムも

「だんだん仲良くなって来たよね」

 と自分の事の様に嬉しそうな顔をした。それに対して

「まだアタシは認めてないから」

 と表面上はツンツンな態度を取るフォンクに、シュクゥルは無害そのものと言った感じの穏やかな笑みで対応していた。

 そんな俺達に、一人の若い女性が店内の隅の席から鋭い視線を向けていた事に、その時は全く気が付いていなかった。


 村を出発してから数時間、所々開けた場所が点在する森の中を歩いていると、フォンクが何やら後方を気にし始めた。

「どうしたの?」

 プァムが時々立ち止まって後ろを振り返るフォンクに声を掛けると

「何かにつけられている気がする」

 と後ろを見たまま返事をした。

 俺は彼女の視線に合わせて今来た道やその周辺を見渡したが、人影らしき物はどこにも見あたらなかった。

「誰もいないじゃないか」

 と俺が言うと、フォンクは暫く後ろを振り向いたままの姿でいたが

「ゴメン、気になるから少しこの辺りを見てみるよ。悪いけどアンタ達は先に行ってて。すぐに追い掛けるから」

 と言って近くの繁みをかき分け森の中に入って行った。

「気のせいだよ。そんなの気にしなくていいよ…」

 プァムが半分困った様な顔でフォンクを呼び戻そうとしたが

「フォンクの事ですから、すぐに戻って来ますよ。私達はゆっくり先を進みましょう」

 とシュクゥルに促されて、納得行かない様子を見せながらもそれに従って渋々歩き始めた。俺もフォンクの思い違いで、すぐに俺達の元に戻って来る、とその時は思っていた。それがまさかこの後の厄介極まる出来事に繫がるとは、これっぽっちも予想していなかった。


 ★ ★ ★ ★ ★ ★

「隠れてもムダだよ、出ておいで!」

 森の中に入り、暫くの間周辺の生い茂る草藪を見渡していたフォンクは、やがてその中の一つの背の高い草むらを見つめると、お見通しと言わんばかりに鋭い声を発した。すぐにガサガサと視線を向けられた草むらがうごめき、一人の若い女性が姿を現した。

「やっぱりアンタだったんだ」フォンクはやれやれと言った感じで、大きく息をつき腕を組んだ「あの村を出てからずっと気配を感じてたけど、用があるなら店の中に居た時に言って欲しかったね」

 正体は一行が休んでいた飲食店の中でフォンク達を鋭い目付きで見つめていた例の女性だった。ヒデ達は気付いていなかったが、フォンクだけはその存在を意識していたらしかった。若い女性はそれを聞くと不敵な笑みを見せながらゆっくりと草むらから全身を現し、フォンクと向かい合った。

「何の用?面倒事ならお断りだよ」

 その言葉通り面倒くさそうな態度を見せるフォンクに対し、女性は厳しい顔付きをしながら攻撃の意志の籠もった構えを見せた。

「おやおや」フォンクは腕組みをしたまま目を丸くして「何の挨拶も無しにいきなりお手合わせ願います、なの?少しは礼儀を弁えなさいよ。つか、アンタ魔女だったんだ。だとしたら魔法を使う相手を間違ってない?」

 金髪を肩まで垂らし色白の顔を紅潮させた青い瞳の女性は、構えを崩さず

「フン、言いたいだけ言うといいよ!すぐに後悔する事になるから!私の恨みは半端じゃないからね!アンタには心底反省して貰わないと、私の怒りが収まらないんだよ!」

 と言ってジリジリとフォンクとの距離を詰めた。フォンクは訝しげに

「人違いじゃないの?アンタの事なんて記憶に無いんだけど…」

 と両手を腰に当てて首を傾げたが、金髪女性は問答無用とばかりに

「そっちには無くても、こっちにはあるの!」

 と構えた片手を素早く振り抜いた。その手から冷たい輝きを放つ光がフォンクに当てられると、彼女の両足が地面に凍り漬けにされ、動かす事が出来なくなった。

「トンだ御挨拶だね!」

 フォンクは片手から赤い光を出し、両足に当てた。熱効果があるのか、みるみる内に両足の氷が溶け、動きが自由になった。

「フン、こんな程度でアタシの動きを封じられるとでも…」

 すかさず戦闘態勢に入るフォンクだが、既に金髪女性の姿は目の前から消えていた。何所に行った?と思った次の瞬間、アッという間にフォンクの背後に立った金髪女性が後ろから手を伸ばし、二つの大きな果実を鷲掴みにした。

「あぁっ、くぅっ…。し、しまった…いっ、いつの間に…」

 完全に意表を突かれ焦りの表情を見せたフォンクの耳元に、金髪女性の赤い唇が急接近した。

「フフン、チョロいモンだね。あんな釣りなのが丸分かりの魔法にまんまと引っ掛かるなんて」

 勝ち誇った様に耳元で囁くと、豊かな胸を掴んだしなやかな指が別の生き物の様に蠢き出した。

「ハァァッ…!くぅぅっ!…や、止めっ…」

「ハハハッ、思った以上に敏感だね!」

 指の動きが更に細かくなるのに合わせて、耳元に寄せた唇から赤い舌が伸び、喘ぐフォンクの耳の中に侵入した。

「アアンッ…。ダメェ!そっ、そんな所ぉ…。いやぁん…!」

「フン、これがモンスター最多討伐を記録した魔女の姿かね ! ? 何でこんな小娘にあんな屈辱を受けないといけないのさ!」

 悪態を突きながら、金髪女性は執拗に耳の奥で舌をくねらせ、指をイヤらしく動かし捲った。

「ハァッ…、アァッ…!ううんっ…」

「ホーッホッホッホッ!良い声で鳴くねぇ!なんだい、もう息が荒くなって来たじゃない!口程にもない!」

 金髪女性は勝利を確信した様に煽り文句を発すると、トドメとばかりに指と舌の動きを最加速させた。

「アァッ…ダッ、ダメェ…!ハァッ…アァァ~ンッ!」

 甘い悲鳴を上げたフォンクは、その場にバッタリとうつ伏せに倒れ動かなくなった。金髪女性は残忍な笑みを浮かべ、荒い呼吸をしながら小刻みに震えるフォンクに顔を寄せ憎々しげに言い放った。

「これで終わりじゃないからね!私はアンタに全てをグチャグチャにされたんだ。これからたっぷり時間を掛けて、アンタに私以上の苦しみを味わって貰うから!覚悟しておきな!」

 ★ ★ ★ ★ ★ ★


 俺達三人は暫く森の中の道を歩き続けたが、中々フォンクの戻って来る気配が無いので、流石に不安な気持ちが湧き起こって来た。

「ねぇ、引き返してみない?いくら何でも遅すぎるよ」

 プァムが不安そうに言うと、俺とシュクゥルも顔を合わせ

「そうですね…。これだけ時間が掛かると悪い目に遭っている可能性も…」

「そうだな。戻ってみるか…」

 三人でフォンクと別れた場所まで引き返すと、果たして彼女の姿は何所にも見えなかった。心配しながら辺りを探し回ると、草むらの中で力尽きたかの様に体育座りをして動かない状態のフォンクを発見した。

「フォンク!どうしたの ! ? しっかりして!大丈夫 ! ? 」

 慌ててプァムが抱き起こすと、フォンクは弱々しい笑みを見せ

「大丈夫…。ちょっと腰に力が入らないだけ…。ゴメンね、心配掛けて…」

 といつもの快活さをすっかり失った、とても大丈夫とは思えない喋り方で返事をした。更に立ち上がる気力も感じられなかったので、取り敢えず俺が背負う形でこの場から去る事にした。背負われている間もフォンクは、日頃の饒舌は何所にやら、悔しそうな表情でひたすら黙り込んでいた。

 その晩の到着した村の宿屋で、少し元気を回復したフォンクが、見知らぬ金髪女性に後を付けられていた事や、その女性に対戦を申し込まれ不覚を取ってしまった事等を言葉少なめに話してくれたが、フォンク程の実力者がどんな形で敗れてしまったのかは、いくら質問しても頑なに口にしようとしなかった。

 ただ一言「凄い技の持ち主」とだけ教えてくれたが、あぁ、そういう事ね、とその言葉の意味に気付いたのは、かなり後になってからだった。


 翌朝、一足早く起きた俺が宿の広間でボーッとしていると、難しい顔をしたフォンクが

「調べて欲しい事があるんだけど…」

 と言って俺の横の椅子に腰を下ろした。

「調べるって…、水晶玉で?」

「ウン…」

 昨日の事が関係あるのかな?と思いながら、俺はステッキで先のプァム探索で大活躍した水晶玉を再び登場させた。

「武者修行を念じながら、モンスター退治に関する事を色々考えてみて」

 言われるままに水晶玉に手を添えて色々と頭の中で考えていると、球体に魔女やモンスターの姿がより取り見取りで浮かび上がった。フォンクは映り代わる映像を食い入る様に見つめていたが、ある映像が映った時

「ちょっと連想を止めて」

 と言って俺の手を握ってストップの合図をした。その時俺はモンスター退治数に関する事を考えている所だった。

 水晶玉には横にいるフォンクの姿が写し出された。それが消えると次に金髪の肌の白い美少女の姿が浮かんだ。フォンクの表情がここで一気に険しくなった。

「知ってる人?」

 俺の問いにフォンクは眉をひそめたままで返事をしなかったが、暫くその女性の映像と説明文を見た後

「ありがとう。もういいよ」

 と言って俺の肩を叩いて検索作業を終了させた。そして険しい顔をしたまま

「そういう事だったんだ…」

 と呟きながら、広間から出て行った。入れ替わる様にプァムが入って来て、フォンクとすれ違う際に彼女に笑顔を向けたが、気付かれていなかったのか、敢えてシカトされたのか、ソッポを向いたままで去られてしまった。

「フォンク、まだ体調戻ってないの?」

 俺の所に来たプァムは心配そうな口調で愛想の悪い仲間を気遣った。

「まぁ、彼女にも色々あるらしいから…」

 俺はフォンクが先程見せた、かつてない険しい顔を思い浮かべたが、昨日のあの事件以来、一度も笑顔を見せていない彼女の内心を正直測りかねていた。


 宿を出発した俺達は、その日の午後、森を抜けた広い草原で巨大な蜘蛛型のモンスターと対峙した。フォンクとシュクゥルがフォローに回り、プァムと俺がメインとなって、さほどの苦戦無しに勝利を収める事が出来た。昨日の事件からモヤモヤした感じが続くフォンクの動きが心配されたが、そこは歴戦の勇者、そつのないフットワークで無難にフォロー役をこなして見せた。

 一仕事済んだ後

「水分を補給しなければいけませんね」

 とシュクゥルが少し離れた場所に流れる小川まで水を汲みに行った。残った三人は汗を拭きながら一息ついて体を休めていたが、さほどの難作業ではない筈の水汲みから、中々シュクゥルが戻って来ない。

「遅いね…」

 プァムが小川の方向に目を向けた時

「ハゥッ…、アァァンッ…!」

 という悩ましい悲鳴が聞こえて来た。ビックリした俺達が慌てて小川の側に駆け付けると

「アッ、アンタ…!」

 フォンクが声を上げた後、絶句して動かなくなった。小川の畔には、快感に震えながら熱い吐息を洩らすシュクゥルを背後から抱き抱えた若い女性が、勝ち誇った表情でこちらを見つめていた。

 今朝水晶玉で見た、あの金髪女性だ!見覚えのある彼女が、形の整った豊かなシュクゥルの胸を、イヤらしい手つきで揉みほぐし更に小さな突起を指先で弄り回していた。

「手を離しなさい!」

 フォンクが怒鳴り着けると、金髪女性は卑屈な笑みを浮かべ、シュクゥルの胸と突起を目にも止まらぬ指の動きで撫で回した。次の瞬間

「アゥッ…!ハッ、ハァァァンッ…!」

 シュクゥルのしなやかな肢体が大きく仰け反り、ビクッと体を震わせた後、力尽きた様にドサッと地面に倒れ込んだ。

「シュクゥル!」

 プァムがすぐさまうつ伏せ状態のシュクゥルに駆け寄ったが、それよりも早く

「いい加減にしなさいよ!」

 と怒りを全身にみなぎらせたフォンクが、金髪女性に殴り掛かった。だが、フォンクの拳が命中する直前に金髪女性の姿がフッと消え、空振りしたフォンクが慌てて回りを見渡した時には、既に彼女の背後に立ち、第二の獲物をその細く長い指でガッチリと掴み込んでいた。

「アァッ…!ウッ、ウゥン…!」

 必死に抵抗するフォンクをアザ笑うかの様に、金髪女性の指先が二つのたわわな膨らみを揉み捲り始めた。

「アァァン…!止めっ…なさいっ…!ダッ…!、ダメェ…!」

 モンスター相手に縦横無尽に暴れ捲るあのフォンクが、手も足も出ずに弄ばれ、とろける様な快感に満ちた艶やかな声を漏らし、いい様に蹂躙されている。俺は呆気に取られながら立ち尽くしていたが、すぐに交わり合っている二人に無我夢中で突進し、フォンクの体を味わっている金髪女性を思い切り突き飛ばした。

 態勢を崩した金髪女性はすかさずこちらに向かって身構えたが

「今回はこの位にしてやるよ」

 と憎々しげに吐き捨てると、風の様な早さで俺達の前から立ち去った。

 俺はすぐにフォンクを介抱したが、四つん這いの状態で快感と屈辱を必死に堪えながら、金髪女性の姿が完全に消え去るまで、恨めしげな瞳で彼女に視線を向け続けていた。


「あの人、誰なの…?」

 騒ぎが一段落して、四人の顔に漸く落ち着きが戻って来た頃に、プァムが不安に怯えた様な表情で、誰に向けるともなく質問を発した。頼り甲斐のある武者修行の先輩二人が、為す術もなく相次いでやられてしまった事実を目の当たりにしたショックを、中々払い切れてない様子だった。

 暫くの間、誰もその質問に反応せずに、重苦しい空気だけが流れていた。だが、それに答える事が出来るのはもう彼女しかいない。

「魔女…。それもかなりの実力を持った…」座り込んで黙りこくっていたフォンクが、独り言を言うかの様に返答した「トゥリュクォっていう名で、さっきヒデの水晶玉で見たんだけど、武者修行で最多のモンスターを退治した記録保持者だったみたい…」

「一番退治したのはフォンクでしょ?」

 プァムが不思議そうに言うと

「そう…。彼女の記録をアタシが更新したんだ。武者修行が終わった後で、記録を抜いた事だけ他の人から聞かされたから、それまで彼女の事までは知らなかったんだけど…」

「それと今回の襲撃と何の関係があるんだ?まさか、記録を抜かれた腹いせに俺達を襲っているのか?」

 俺が疑問をぶつけると、プァムが驚いた顔で

「信じられない!そんな事でフォンクやシュクゥルをあんな酷い目に ! ?」

 と怒りを滲ませながら大声を上げた。

「私が襲われた時に少しだけ聞いたのですが…」フォンク同様沈黙を保っていたシュクゥルが、視線を落としたまま小さく呟く様に「記録を抜かれて、家族や自分の将来が暗転した…と。誰に聞かせる訳でもない様な言い方でしたが…」

「だからって、何の関係も無い人を巻き込んでいい訳じゃないだろう!」俺の声のトーンも自然と上がっていた「どうにかならないのか、フォンク?かなり手強い相手らしいけど、このまま襲われっ放しだと、武者修行処じゃなくなってしまう!」

「次に相対した時に言うよ、決着を着けようって」俺の言葉にフォンクは決意を固めた口調で返答した「アタシだっていつまでも付け回されるのは嫌だからね。そもそもの原因はアタシにあるんだから、アンタ達をこれ以上巻き込む訳にはいかない。アイツと二人の間だけで必ず決着を着ける!」


 フォンクの決着試合の申し込みは翌日の朝、トゥリュクォに直に伝えられた。理不尽な復讐に燃える彼女は遂にプァムにも魔の手を伸ばしたのだ。気を付けてはいたのだが、森での野営の後片付けをしている際に、うっかりプァム一人がメンバーと距離を置いてしまった。それを何処から見ていたのか、疾風の様に現れたトゥリュクォがプァムの豊満な胸部を、フォンクとシュクゥルを快感の海に沈めたテクニックの餌食にするべく、音もなく襲い掛かって来た。

 だが予防線を張って警戒していた事で、すぐにプァムの危機に気付いた俺達が駆け付けた事で最悪の事態は避けられた。チッと忌々しそうに舌打ちしたトゥリュクォに向かってフォンクが

「これ以上の無差別な襲撃は止めて、潔くアタシと勝負しな!日付は明日、場所はアンタに任せるよ。アンタが勝てばアタシは何でもアンタの言う通りにする。アタシが勝てばもう二度と襲う事は止める。文句ないでしょ ! ? 」

 それを聞いたトゥリュクォは太々しい笑みを浮かべ

「すぐ側の村の東側に、ピンクの花が咲き乱れている広場がある。そこに明日陽が昇り切る前に、アンタ一人で来る事。私が勝てばアンタは生涯私の僕(しもべ)になって貰うから」勝ち誇った様にカラカラと笑った「まぁ、どう足掻いたってアンタが勝つ事はないけどね。イヤと言う程可愛がってから負かしてあげるよ!」

 そう勝利宣言すると、前回とは違い悠然と歩きながら立ち去って行った。

 それを険しい目付きで暫く見つめていたフォンクだったが、俺の方を見ると

「ヒデ、お願いしたい事があるんだ…」

 と何か策があるかの様な物の言い方で、言葉を掛けて来た。了解すると、少し照れた感じで口元を緩めたが、その意味を理解したのは、この後の予想だにしない秘策に協力させられてからだった。


「魔封紋をアタシの体に着けて欲しいの」

 決戦のピンクの花広場が隣にある村まで移動した後、宿屋の一室に俺を招き入れたフォンクは、初耳となる単語を出してお願いを掛けて来た。

「魔封紋って何?いきなり言われてもサッパリ分からないんだけど…」

 戸惑う俺にフォンクは

「言ってしまえば呪いの紋章なんだけど、アタシ達魔族がそれに触れると魔力と体の動きが一時的に封じられてしまうんだ」

 それを体の一部に描き込んで欲しいという。

 「魔力を封じた時点で紋章も消える。言うなれば魔力と体力を一旦麻痺させる、と言った感じかな。魔法を使えば誰でも描き出す事が出来るけど、その魔法を使えるのは今の所ヒデしかいないから」

 いきなりの要求に俺は困惑しながら答えた。

「でも俺は描き方なんて知らんよ」

「ステッキがあるでしょ。それを使えば簡単に出来るって」

 よく分からぬままに俺はステッキを取り出したが、それを見たフォンクはおもむろに服を脱ぎ始めた。想定外の彼女の行動に俺は思わず声を上げた。

「何だよ ! ? どうするんだ ! ? 」

「直に肌に描かないと意味ないの!」

 俺の目の前に褐色でスタイルの整った見事なグラマーボディが、一糸まとわぬ露わな状態で出現した。そりゃあ、俺だって引き籠もっていたとは言え、恐れ多くも三十年近く人生を重ねて来たんだ。今更女性の裸体程度で冷静さを失うなんて事はない。しかしこの後の彼女の要求には流石に戸惑いを見せざるを得なかった。

 立ったまま脚を広げたフォンクは

「ここに描いて」

 と言って局所を指差した。いくら何でも急展開過ぎる!申し訳ないが、ここから先を細々描写するのは紳士としてとても忍びない。そんな訳で以下略。

 紋章を身に付けたフォンクは着衣を済ませた後、一つ気懸かりな事を俺に打ち明けた。

「紋章を三日以上体に付けていると、アタシ達魔族は命を失ってしまうんだ」

 描かせた後にトンデモナイ事を言う。

「途中で消せないのか ! ? 」

 驚愕しながら尋ねた俺にフォンクは

「相手が触れて魔力が封じられない限り消えない」

 と素っ気ない口調で返答した。冗談じゃない!それを先に言えよ!そうしたら絶対描くのを拒否したのに!

「大丈夫だよ!」狼狽える俺の肩をポンと叩いたフォンクは「トゥリュクォは絶対にここを狙って来る!奴が触れてくれれば問題無いよ。自信はあるんだ。奴は徹底的にアタシを潰しに来る筈だから!」

 と言って確信に満ちた顔を見せた。どうかその通りであってくれ!トゥリュクォ、絶対にフォンクの大事な所に触れてくれ…って、何を祈っているんだ、俺は ! ?

 その晩、フォンクの必勝を期して、プァムが細やかな壮行会を開こうと提案したが、当人はやんわりと拒否。

「気持ちだけで充分だよ。ありがとう」

 と言ってプァムの額に軽く口づけをした。何だか少しカッコよく見えた。


 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 翌日、お天道様が辺りを照らし出して程良く気温が上昇した頃、くるぶし程の丈のピンクの花が咲き乱れる広場で、フォンクとトゥリュクォが決戦を直前に控え相対峙していた。

「アンタを徹底的に気持ち良くさせてそっちから求めて来る様になるまで追い込んだら私の勝ち。私を落として戦闘不能にしたらアンタの勝ち。負けた方は勝った方の僕だよ!いいね?」

 両手を腰に当てたフォンクはトゥリュクォの言葉をスカし、やや上目遣い気味に質問した。

「その前にさ、そもそも何でアンタがアタシをここまで憎んでいる訳?理由がハッキリしないままで戦うのって、正直腑に落ちないんだよね」

 不遜な態度を全開にしていたトゥリュクォの顔に一瞬影が差した。少しうつむいた後、ボソッと

「私の家は底辺魔族なんだ…」

 と呟く様に言った。そしてポツリポツリとここまで来るに至ったあらましを語り出した。

 この世界の魔族の世帯は全てが同規模という訳ではなく、繁栄を誇る大一族から核家族の様な小規模な一族まで、様々なスケールの家系が存在する。プァムの様な城を構える程の大魔族が国に直接関わる大きな仕事をこなして来たのに対し、トゥリュクォの様な小魔族、いわゆる底辺魔族は、一般市民との交流を深め助けるのが専らだった。

「昔はそれでも良かった。でもモンスターの大量出現がそれまでのバランスを壊したんだ…」

 モンスター退治が魔族の主要任務化するに連れ、戦力として非力な底辺魔族は徐々に冷遇される様になって行った。

「私が産まれた時、もうお父さんは毎日モンスター退治をこなすのに必死だった。私も物心つく頃には否応なしに戦闘に駆り出されてた…」

 そんな重労働と恵まれない環境に苦労しながらも成長して行ったトゥリュクォに、ある日千載一遇のチャンスが訪れる。彼女の住む地域を管轄する領主が、武者修行で最高の成績を挙げた魔女を、お抱えの腹心にすると発表したのだ。一般市民が県知事の補佐役を任されるのに価する位の好待遇だった。

 不遇な人生を変える生涯最大のチャンス!檻から解き放たれた野獣の様に武者修行の旅に飛び出したトゥリュクォは、行く先々でモンスターを倒し捲り、終わってみればブッちぎりの記録を打ち立てて武者修行を終了し、見事領主のお抱え部下の立場をゲットした。

「賞金も大量に貰って、お父さんお母さんを漸く助ける事が出来た。色々手続きがあって直ぐに採用はされなかったけど、その間も補償金は出るし、やっと幸せを掴んだ、そんな気分だった…」

 だが、幸福の絶頂にいたトゥリュクォの人生はある人物の出現で一気に転落する事になる。そう、フォンクの登場だった。

「アンタの最多記録を知った途端、領主や周りの態度が変わった。別に一位でも二位でも変わらないだろって思ったけど、体面を保ちたかったんだろうね。一位の魔女が腹心という見栄を重要視してたんだ、きっと」

 領主のお抱えに採用される件はアッサリと取り消され、その話自体が無かった事にされ、補償金も打ち切られた。全ての境遇が元の木阿弥に逆戻りした。幸せに半ば足を掛けていた分落差の衝撃は大きかった。だが、生活苦は容赦なしに現実の厳しさを押し付けて来る。再び来る日も来る日もモンスター退治をこなす中、心労が溜まり過ぎたのか、遂に父親がダウンしてしまった。魔族と言えど超人ではない。

 父親を看病しながらモンスターを退治し続ける、という過酷な生活を続ける内に、やり場の無い怒りは自然と自分の記録を消したフォンクに向けられる様になった。

「当然だよね!アンタが余計な事さえしなければ、私達がここまで苦しむ必要はなかったんだから!」

 一通り身の上を語った後、トゥリュクォはこれ以上無い程の憎しみを込めた目付きでフォンクを睨みつけた。

「そ、そんな…。アタシは決してアンタを不幸にしようと思った訳では…」

 若干狼狽えながら弁解しようとしたフォンクに

「今更言い訳しても何にもならないよ!」

 と怒りを全身にみなぎらせたトゥリュクォが、鬼神の如き表情で猛然と襲い掛かった。間一髪の所で身をかわしたフォンクだったが、目標を失ったトゥリュクォは信じられない早さで態勢を立て直すと、正面に至近距離で向き合う形になったフォンクの胸やヘソを、矢継ぎ早に人差し指で突き回した。

「アッ…アァンッ…!」

 一瞬動きの止まったフォンクの背後に回ったトゥリュクォは、早くも勝利を確信した様な笑みを浮かべると、これまで以上に念を込めて、手中に収めた大きな膨らみをゆっくりとこねくり回し始めた。

「や、止めなっ…さいっ…ハゥゥン…」

「ホホホ、何度やっても飽きないわ!芸術品みたいな至高の胸ね!」

 もがくフォンクの耳元に口を寄せたトゥリュクォは囁く様に

「この為に指先の技を磨いて来たんだよ。何故か分かる?それはね!」

 更に細かく指を動かし刺激を与え、快楽に喘ぐフォンクを見て嬉しそうに

「女性として最も屈辱的な敗北を味合わせてやろうと思ったからだよ!いい様に体を弄ばれて快感に悶えながら無抵抗の内に敗れて行く!ホーッホッホッホッ、最高でしょう ! ? 」

「くぅっ…、こっ、これしき…如きでぇぇっ…!…ハッ、アァァァンッ…!」

 この上なく愉しそうに艶やかなボディを指先で味わうトゥリュクォと、狂わしい程の気持ち良い刺激に全身を侵されながらも懸命に意識を保とうとするフォンク。この構図が十分近く続いたが、絶え間なく押し寄せるエクスタシーの猛威に、遂にフォンクの快感が絶頂に達した。思い切り体を仰け反らせて、切なく甘いとろける様な喘ぎ声を発したフォンクは、力尽きたかの様にうつ伏せに倒れると、乱れた呼吸を続けながら、桃色の花の絨毯の上で豊かな肢体を小刻みに震わせた。

 見下した様な笑顔の中に冷酷な面影をチラつかせたトゥリュクォは

「さぁ、これでオシマイだよ!」

 と高らかに宣言すると、うつ伏せ状態のフォンクの両足首を掴み一気に左右に広げた。親指と親指の間の聖域が無防備に晒された。その神秘のエリアにトゥリュクォの細い指が獲物を狙う蛇の様にソロリソロリとくねりながら伸びて行った。

「な…、何を…する…つもりなの…」

 怯える様な目で見るフォンクを楽しむかの様に、残酷な笑みを満面に湛えたトゥリュクォは、この日の為に修練された魔の秘技を、その黄金地帯に見舞うべく、更に手を近付けた。

「…い、いやぁん…それだけは…やめて…お、お願い…」

 フォンクの切ない懇願をアザ笑いながら、その艶体の源に狙いを定めたトゥリュクォは、白い歯を見せ無言の勝利宣言をすると、うねらせた指先を、最後の標的となる可憐な花園に押し付けた。

 ★ ★ ★ ★ ★ ★


 昼近くになったら指定された決戦場所に来てくれ、と昨晩フォンクに言われた俺は、言われた通りに不安な気持ちを抱えながら、ピンクの花が咲いているという広場に向かった。

 到着すると、うつ伏せにダウンしている女性とその側に立ち厳かな表情で見下ろしている女性の姿が目に入った。

 俺が立っている方の女性に歩み寄ると、こちらを見て疲れ切った様子を見せながらも

「勝負はついたよ」そう言ってから「やっぱりあの紋章が決め手になったね」

 と、計画通りと言った顔をして、してやったりと言わんばかりに微笑んだ。それを見てフォンクの勝利と魔封紋の消失に成功した事を察した俺は、大きく安堵のため息をついた。

 二人の間に明るい雰囲気の空気が流れた時、うつ伏せ状態だったトゥリュクォが首を軽く振りながら、ヨロヨロと上体を起こし、半ば虚ろな表情でフォンクを見上げ、呟く様に言った。

「…何故…?完全に勝ったと思ったのに…」

「秘部に魔封紋を描いておいたの」フォンクが落ち着いた口調で「アンタがここを狙って来るのは承知済みだったからね。肉を斬らせて骨を断ったんだよ」

 魔封紋に触れてトゥリュクォの動きが一瞬止まった隙を突いて、素早く背後に回ったフォンクが柔道で言う所の裸締め(スリーパーホールド)で締め落とし、勝負を着けたらしかった。

 それを聞いたトゥリュクォは暫し呆然としていたが、やがてその瞳から大粒の涙がこぼれ出した。

「…私を…殺して…」静かに泣きながら呻く様に訴えた「…もう、生きてても仕方ないんだ…私なんて…もう…こんな人生…」

 泣き崩れるトゥリュクォはまるで別人であるかの様にか弱く見えた。それを見下ろしていたフォンクは

「自分の都合だけで命を絶つなんて、最低の親不孝だよ。悲しむ人が居てくれるのがどれ程有難い事か」虚しそうに空を見て「肉親がいるアンタが羨ましいよ。アタシなんか独りぼっちなんだから」

 と言った後、トゥリュクォに慰める様な視線を送り

「アタシも底辺魔族なんだよ」

 と自嘲する様な言い方をした。ハッとした顔を見せたトゥリュクォにフォンクは敢えて目を合わさず

「一家総じて貧弱だったから、モンスターの大群に一溜まりも無く喰い殺された。アタシを残してね。アタシの最多退治記録はその時の無念と怨念の結晶だよ。みんな凄いとか立派とか言うけど、アタシにとっては負の象徴みたいなモンさ。何も嬉しい事じゃない…」

 明るい陽射しの中、重い空気を流すかの様に一陣の風が吹き抜けた。少し間を置いてから俺に顔を向けたフォンクは「ヒデ、何度も申し訳ないけど、アンタの魔法でやって欲しい事があるんだ」

「…何…?」

 トゥリュクォをチラッと横見して

「アタシと彼女の退治記録を入れ替えて欲しい。後、彼女がまた領主に雇って貰えるようにして欲しいんだ。アンタの魔法で出来ればだけど…」

 驚くトゥリュクォを見ながらステッキを取り出した俺は

「可能かどうか分からんけど、やるだけやってみるよ」

 と前置きして、呪文を唱えてからフォンクに頼まれた内容を復唱し、握ったステッキを振った。その後直ぐに水晶玉を出し二人の履歴を見て、総退治数が入れ替わった事と、領主が再び最多記録保持者の募集をかけた事を確認すると、その旨をフォンクに伝えた。

 それを聞いたフォンクはトゥリュクォの前にしゃがんで視線の高さを合わせると

「アタシ達がアンタにしてやれるのはここまで。この後、事態がアンタに取って良い様に動く事を祈っているから」

 と言って腰を上げて

「それじゃあね」

 と背中を向けると、早くも無く遅くも無い早さで歩き出し、ピンクの戦場を後にした。俺もその場を離れ彼女に追い付くと

「俺をここに呼んだのって、こうなる事を予測していたからなのか?」

 と疑問をぶつけた。フォンクは、ン…と少し言葉を溜めた後

「あの娘の復讐の動機を詳しく聞いていなかったからね。内容次第ではアンタの魔法が役に立つかも、って思ったんだ」そう言って俺に顔を向け「今回も色々お世話になっちゃったね。ありがとネ」

 と屈託の無い笑顔を見せた。この娘って時々想定外のキュートな一面を見せるんだよな。思わず釣られてこっちも笑った後、何気なく振り返ると、ピンクの花に囲まれたトゥリュクォが拝む様に両手を合わせ、いつまでもこちらを見ている姿を、視界の中に小さく確認する事が出来た。


 村に戻る道の途中でプァムとシュクゥルが心配そうな顔をしながら、俺達の帰還を待っていた。フォンクの元気そうな笑顔と姿を見て全てを察したプァムは、歓喜の表情を浮かべ飛び付いて、思い切り抱き締めた。

「心配掛けてゴメンね」

 とフォンクがプァムの頬を優しく撫でながら微笑むと、シュクゥルにも「色々巻き込んで悪かったね。でももう大丈夫だから」

 と言って口元を緩めた。四人で村に戻り、宿屋の広間で遅い昼食を摂りながら、フォンクと俺は戦いの結末を二人に報告した。

「そっか…。トゥリュクォさん、また幸せになれるといいね…」

 話を聞きながらプァムがお茶を啜り少し安心した様な口調で感想を述べたが、フと気付いた様に

「でもまた誰かが記録を更新しちゃったらトゥリュクォさん、どうなるんだろう…?」

 と不安そうな顔をして一同を見渡した。

「心配ないと思いますよ」シュクゥルが落ち着いた喋りでプァムの不安を払拭した「二人の記録は他の魔女の退治数を大きく引き離しています。少なくとも二人が現役でモンスター退治を続けている間は更新される事は無いと思います」

 野球で言うなら、今後どんな強打者が現れても王選手や野村選手の本塁打記録が抜かれる事はまず無い、みたいな感じになるのかな。

「とにかく今回は疲れたよ」フォンクが大きく伸びをして、散々標的にされた豊満な丘を突き出し「悪いけど、もう一日ここで休んでいい?何かモンスター相手にする時より疲れちゃった。たっぷり眠ってリラックスしたいんだ」

 俺達三人は顔を合わせると、誰ともなく口元を綻ばせた。

「いいよ!」プァムが労る様な笑顔を見せ「ゆっくり休んで!いつもフォンクには助けて貰っているから、特別休暇をあげる!」

 それを聞いたフォンクが

「有難~い」と言って再び伸びをしながら「それじゃあ御言葉に甘えて休ませて貰うよ。アンタ達も一日のんびりしてて」

 と言ってゆっくりと広間から姿を消した。何か今回の一連の出来事で彼女の今までに無い色々な一面を見る事が出来た。無意識の内にフォンクに対する好感度が大きくアップした様に思えた。


 風の便りで、トゥリュクォが領主のお抱えに任命されたと云う事を知ったのは、それから数日経ってからだった。



 

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