第3話 もち

「なんだこれ」


 鳴り響くサイレンの中、助けを求める人々の美しい像があちこちに見られる。こんな事、中山がやったのか?彼普通の陶芸家だったよな?

 中山がフフと語りだす。


「大人びたな、愛子。簡潔に話そう。俺たちまほろばの民は、日本に愛された!この力!日本から授かったこの力を駆使し、憎きこむすびまんをぶち壊すんだ!!!」


中山は天高く拳を突き上げた。


「この阿呆は信用できない。日本の祝福を僅かに受けているが、弱い。その上藤村と深い繋がりがある。」


阿呆は気絶している。


「他にも仲間はいる。ついてこい。」


そういうと中山は手から土を生み出し、波、そしてそれはそれは美しい陶器の板でサーフィンを始めた。


唖然とする私をよそに、彼は猛スピードで離れていく。


「ああ!!!!待ってよお!!」


 置いて行かれた...

そういや私は祝福受けてないのか?陶芸家が陶芸の力を使えるなら、てんで何もない私は何もできないのだろうか...


 突如、幼い頃の記憶があふれ出す。

なんだこれは...? も、もちか?餅つきか?ああ楽しかった!いやそれよりも、私はもちが大好きだった。今もそうだ。もちを愛し、もちを愛した。なんなんだこれは!


「力を...倒...頼ん...」


 謎の声が頭に響く。


 気が狂った私が腕を突き出した途端、手からもちが発射された。


「これだ!」


 手からもちを勢いよく出し、その反動で中山を追う。

 餅を出すとその分、体の力が抜けてゆく...

 フラフラになりながらも、彼を追い続ける。


 藤村ぷりずんは大混乱に陥っていた。

 ぷりずんから少し離れた林の中で、中山と見知った人物が二人ほど見える。

 

 「覚えておるか?老夫婦じゃよ。間違った世の中を是正するのじゃ。」


 「村長の村張村趙よ。名前にインパクトがないものね。忘れちゃってるかしら。」

 

 私は久しぶりの再会に感動しつつも、一つ気になることがあった。


「忘れるはずがないだろう。また会えてうれしいよ。それと、貧乏坂はどこにいるんだよ!あの土売ってた、私たちいつも一緒でさ!」


 すると空気が重くなり、皆の顔が曇る。

沈黙が続き、ついに中山が口を開いた。


「貧乏坂は道中で殺されてしまった。俺があいつの力を陶器の力で取り込んだ。俺にはもともと土を操る能力しかなかったが、やつの土を創る力を吸収して、使い勝手が良くなった。ああ、、、そんなことどうでもいいよな。しかし犠牲はつきものさ。」


 だれの目にも止まらない暗い林に、ぽつりと明かりがともる。

私たちは貧乏坂の死を悼みながら、みそ汁を囲むのだった。




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