第31話 新世界へのプロローグ 3
「ノヴィネスをもっと増やせば、マシナの力をもっと得られるのではないか」
ノス・クオッドの一人がそう意見したのは、デフィクス歴十八年のことだった。
その時には既に飛び立ったアンテのシェルター跡の穴と帝都の残骸を利用して、チェア山脈とジェイド湖が完成しようとしていた。
「だがそれは、さらななる進化を望んだファンデルの意志に反する。結局は同じことの繰り返しだ」
ノス・クオッドの中でも意見は二分した。
この世界の行く末を決める、重大な決定になる。意見は慎重に何年もかけて精査され、未来への方針は妥協を許さぬよう練られていた。
「我々がこの世界をこのように破壊してしまったのだ。その責任は取らねばなるまい」
アンテの手によって生まれたとはいえ、実質この世界を穢し、アンテ以外の生物たちの種も減らしてきた。ファンデルの中にあった罪悪感がノス・クオッドの中で膨れ上がっていた。
「マシナは全てこれ以上穢れを出さぬよう、封印するべきだろう」
「それはノヴィネスたちがやっているではないですか」
「いや、奴らがやっているのはマシナの機能を医師の内部で働かせることで穢れを浄化させるというもの。力を残せば、それを求めて再び穢れを生む道を進む奴が出てくるかもしれない」
「それは可能性の話だろう?」
「そうだ。可能性がある話だ。だからこそ慎重に考えねばならない。それに、我々が手を出していないマシナがまだある。手を出そうとしても出せぬマシナが」
スキンヘッドのノス・クオッドが、自身の頭を指さして言った。
「我々の中の、マシナ。ファンデルの欠片を? そこまでやる必要は無いでしょう?」
「何をそうマシナの力に固執する必要がある? 闘うべき相手はおらぬのだ。それに、生物の命は我々が生み出される前のように自然の摂理に任せるべきだ」
「しかし、まだ世界は不安定です。私たちが眠ってしまうには早いでしょう。ノヴィネスだけにこの世を任せるには」
エスはノス・クオッドを停止させることに慎重だった。
「だから、それが驕りなのだよ。もっと自然に任せるべきなのだ」
「どうやら貴方は聖獣の影響を強く受けているみたいですね」
「そういう貴女はファンデルの、マシナの影響が強いようだ。マシナということは元を辿ればアンテの文明の力だ。危険だとは思わないのか?」
エスはそう言われ、覚悟を決めた。
「そうですね、私たちはこの世界を破滅に導いた罪人。
エスは何かに必死になっている。そうスキンヘッドの男は感じたが、彼女のいうことにも確かに一理あった。
「ならばどうする?」
「私が全てのマシナと繋がり、その全てが役割を終えるまで責任を持って監視しましょう」
「全ての? ファンデルの欠片も含めてか?」
「そうです。そのためには、常にフィクスムの光を浴びねばなりませんが、お力を貸していただけますか?」
スキンヘッドの男はその場には居ない他のノス・クオッドたちと繋がり、すぐさま結論を出した。
「分かった。欠片を持つ必要最小限のノス・クオッドを残し、ノヴィネスの管理と、貴女の運用をさせよう。その役割を持つものを我々の罪を忘れぬようバルバリ、そう呼ぶことにしよう。そして、バルバリは不必要なノス・クオッドの中のマシナもノヴィネスたちに、フォッシリアとして封印させるんだ」
こうして、一部のバルバリと呼ばれた者を除いてノス・クオッドたちはノヴィネスに滅ぼされるような形になり、
地上のマシナとノス・クオッドが全てフォッシリアとして封印されたのがデフィクス歴一二〇年。フィクスムの塔と、その塔に光を集める鏡の設置も同時期に完成し、エスはその場所からバルバリの民と、全てのフォッシリア、全てのファンデルの欠片、つまりはオルビスを見守ることになった。
そして全てのマシナと繋がる中で、空へと旅立った船の中のマシナとも繋がっていた。
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