第9話畑中氏の隣人

畑中と榊󠄀原は、「沢之屋」へ向った。

入り口で、榊󠄀原の″パートナー″とやらを待つ事にした。

途中、コンビニで畑中はウコンの力を2本買って、2人してそれを飲み、次のステージを目指した。

果たして、″パートナー″とやは、一体どんな人物だ?


「畑中さん、今、パートナーは飲み会が終ってこっちに向っているそうです」

「店、分かるかな?」

「会社の方と利用した事があるそうですよ」

「……ふ〜ん」


15分後。


「お待たせしました。すいません……?!畑中さん?」

″パートナー″は驚きを隠せない。

「立花さん?」

「はい。そうです」

「今日、飲み会じゃ無かったの?」

「私、さっきまでお得意様との食事会で歓迎会欠席したんです。もう、美穂〜、早く言ってよ。まさか、車両課の畑中さんと知り合いだなんて」


立花は、木材課の事務員で会社の階が違うのだ。

立花香・30歳。

「まっ、いっか。さ、入ろう」

3人は沢之屋に入店した。

いつもの、マグロステーキと白岳しろのキープを下ろした。

カウンターの若いお姉ちゃんが、

「畑中さん、モテモテですね?」

と、言ったが、

「君は、結婚したら出て行くのかい?」

「……え?いいえ。ここで働きますよ。彼は酒問屋の息子ですから」


「そう言う事なの、畑中ちゃん」

と、大将が言う。


「今日は、私の奢りです。この前、沢山ご祝儀もらったから」

「ここは、任せてくんさい、旦那」

と、親子で3人をもてなした。


「し、しかし、立花ちゃん。よく会社にバレなかったね。今日、歓迎会に居たら直ぐに関係は周りに知られるよ」

と、3人分の水割りを作りなが喋る。

「良いんです。バレても。うちの上司には話してありますし、ゆくゆくは皆んなにも」

「ほ〜、たいしたもんだ。榊󠄀原君、良いパートナーで幸せだね」

「はい」 


暫く飲んで、

「何で、オレに彼女が出来ないんだよっ!ね?こんな、良い男なのに!」

と、畑中は酔っ払っている。2人は、苦笑いして、

「まぁまぁ、そのうち出来ますよ!きっと」

「そんな、慰めの言葉なんていらねぇ〜よ。でもさ、もう、恋するって気持ち忘れたよ」

「えぇ〜、どうして?畑中さん」

と、榊󠄀原は少しだけと最初は言っておきなから、めちゃくちゃ酒が強い。

ロックで飲んでいた。


「まずは、好みを言って下さい」

と、立花が言う。

「オレのタイプか?……そうだな、すっごいミルクタンクの持ち主!」

「☓ですね」

「じ、じぁあ、オレに甘えておきながら、自立した瀬戸内寂聴みたいな説法が出来る若い子」

「☓ですね」

「何だよ!オレに寄せろよ!好みを」

「はい、☓ですね」

「……もういい」

1人でブツブツ言いながら、酒を呷った。

背中が妙に寂しい。


「皆んな、相手いるんだもん。何で?」

「な、何でと言われましても」

と、立花はニヤニヤしながら飲んでいる。

「榊󠄀原君、何で?」

「何でとは」

「僕に彼女がいない事」

「さ、さぁ〜。タイミングですかねぇ〜」


「旦那、書道教室はどうですかな?高貴な女性が多いと聴きますよ」

「お父さん、ダメッ!あそこは、お年寄りのサロンなんだから」

「た、大将。オレにババアと付き合えとでも?」

「ダメですか」

「当たり前じゃねぇか!僕はまだ、保険金目当ての結婚はしないよ」

「『まだ』ってのは?」

「もういい。しっしっ」


この晩は、深夜の1時まで続いた。帰る途中なので、タクシーに2人の女性を乗せて最寄りの駐車場で降ろし、畑中は自宅付近のぶんぶく寿司まで乗った。

ぶんぶく寿司の扉を開くと、

「いらっしゃい!畑中さん」

「よっ」

と、右手を上げて日本酒を飲みだした。

「コハダとエンガワ」

「あいよっ」


畑中は、まるで一杯目の酒を飲んでいるように、日本酒を飲み、コハダを摘んだ。

その姿をじっと見つめる人物がいた。

くっちゃくっちゃと音をたて、日本酒で流し込むと、

「お、オジサン」

「ん?」

「あのう、お隣いいですか?」

「……いいよ。別に」

畑中は酔っていた。どこの誰かは分からない。

穴子を注文して、指に付いたタレを舐めているとその人物が言った。

「オジサン、かっこいい!」

「え?」


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