第5話恋愛行進曲
朝、会社に出勤するとメールの確認をしてから、急ぎの仕事は無いと言うことで、喫煙室でタバコを吸った。
缶コーヒー片手に。まだ、始業の30分前だ。
畑中は週末のいずみに付いて考えていた。
かわいいけど、恋愛感情は無い。恋愛感情は学生時代で失ったのだ。
トビラが開く。相原だった。
「おはよう、畑中ちゃん」
「おはよう」
相原もタバコを箱から取り出し、喫煙した。
「今日は、急ぎの仕事は無さそうだね。暑いけど、ツナギに着替えてまた、カーチェックだな」
と、相原は言った。畑中は、先週末の話しをした。
相原は、チャンスじゃんと言ったが恋愛感情は湧かないと喋った。
「でも、もったいないよ!君の恋愛対象は何歳くらい?」
と相原は煙を吐きながら言う。畑中は、タバコの吸い殻を灰皿に落とした。灰皿には、水が入っていて、ジュッと音がした。
「まぁ、19歳から60歳まで」
「ろ、60?」
「ウソウソ、40代まで」
「今度その女性と会いたいな。僕が吟味してやる」
「さすが、先生。頼む。」
「任せなさい」
彼はツナギに着替えて、カーチェックに向った。もちろん、細田、植木も連れて。
500台の輸出中古車の、キズのチェックだ。夏のはじまりなので、車内のオーディオ類をチェックするのは、地獄だった。
灼熱の車内をチェックして、全員汗だくになった。
休憩中、LINEが届いた。
いずみからだった。
【今夜、会えませんか?】
と。畑中は相原も連れて行き今夜、ハッキリさせようと思った。
【良いよ。6時金山の山ちゃんで。東口の方の山ちゃん】
【分かった】
畑中は、相原にこの事を伝えたが、相原は用事があるようで、今夜は飲めないらしい。
ならば、1人で考えよう。いずみのヤツ、何を考えてるのか確かめたい。
仕事終わり、会社のシャワー室で汗を流し、着替えて退社した。
山ちゃんの入口に畑中は立っていた。山ちゃんとは、手羽先料理屋だ。
タバコを吸いたかったが、金山駅周辺は、禁煙エリアなのだ。
巡回員に見つかると、2000円の罰金を払わなければいけないのだ。
10分後、いずみは現れた。
「待った?」
「いいや、さっき着いた」
2人は山ちゃんに入店した。
スーパードライの瓶ビールを2本注文して、手羽先で楽しんだ。
「ねぇ、マナブ君」
「何?」
「彼女作らないの?」
「作るよ。でも、オレに合う女がいないんだ」
「そう……」
と、いずみは静かになった。畑中は手羽先を次々と食べ始めた。
「マナブ君、私じゃダメかな?」
畑中は手を止めた。
「お前は、26年の事を忘れたのか?」
「……ごめんなさい。今の言葉忘れて」
2人は静かに飲み始めた。いずみを見てると可哀想に思えてきたが、付き合う気持ちは無かった。
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