第2話 青空教室

【青空教室】

ドウラン

『お兄ちゃんセーフ!!今日は間に合ってよかったね!』


【ギンガ】

このとても愛らしく、元気いっぱいのかわいい生き物は5つ年下の我が妹「ドウラン」だ。

兄妹とは思えないほど頭がよく、気配りもよく利く子で村人たちからも評判がいい。

外見は整っていて性格もよいため村の男の子たちからモテているとエステルから聞いたことがある。

兄としては変な男にひっかららないでほしいと願うばかりだ。


ギンガ

『ギリギリセーフ!てかドウラン!何で朝起こしてくれなかったんだ!?

 代わりに母さんに叩き起こされてひどい目にったぞ!!』

ドウラン

『何回も起こしたよ!それなのにお兄ちゃんったら全然起きないんだもん!

 夢の中でエステルお姉ちゃんといちゃいちゃしてたんじゃないの?』


ギンガは吹き出す


ギンガ

『バ、バカ言ってんじゃねえよ!そんな夢、一度も見たことないわ!!』

ドウラン

『えー?ほんとかなぁ?』


エステルは寂しそうな顔で小声で言う。


エステル

『一度もないのかぁ。私は、、、』


エステルは途中で言葉をさえぎり顔を赤らめる。


ドウラン

『エステルお姉ちゃんどうしたの?顔赤いよ?』

エステル

『う、ううん。何でもない!走ってきたからかなあ?』


エステルは動揺どうようして答える。


ドウラン

『ごめんね。いつもうちのお兄ちゃんが迷惑かけて。

 お兄ちゃんなんかほっといて先に行っててもよかったのに。」


【エステル】

おじさまにもそれ言われたなあ。。。


エステル

『ううん大丈夫。私がそうしたいだけだから。』

ドウラン

『エステルお姉ちゃんはいつも優しいね。ほんとお兄ちゃんにはもったいないよ。。。』


ドウランはギンガのモノマネをする。


ドウラン

『今日も夢の中で会おうぜ。エステル。』


ギンガは再び吹き出す。

顔が真っ赤になるエステル。


ギンガ

『誰に習ったんだそんなセリフ!」

ドウラン

『え?先生からだけど?』


【ギンガ】

先生はたまに変なことを生徒に教える。

主に恋愛に関することなんだが、例えば年上お姉さんの口説き方であったり、第一印象でよい男性かダメな男性かを見極める方法。逆にモテるのを回避する方法など様々だ。

どうやら騎士団時代に相当モテていたらしく、自分は恋愛の素晴らしさと怖さを両方知っている恋愛マスターだと自称していた。


青空教室は村の南にある丘の頂上にある。

頂上からは村全体を見渡すことができて眺めは絶景だ。

青空教室の場所を丘の頂上にした理由は、なんでもここに来るまでに体力も身について一石二鳥いっせきにちょうになるからだという先生のアイデアだ。

生徒は20人で、俺がこの教室の最年長となる。

来年18歳になったら卒業試験があり、卒業後は王都に行って王国騎士団の入団テストを受けるつもりだ。


しばらくすると体格のいい高身長の男が現れた。

この人が俺の剣の師匠であり、またこの教室の先生でもあり、エトス村の村長でもあるアステル先生だ。


アステル

『みんなおはよう。お!なんだギンガいるのか。珍しく今日は遅刻しなかったな!』

ギンガ

『今日は先生の誕生日会ですからね!余裕の到着でしたよ!』

ドウラン

『先生!お兄ちゃんはついさっき来たばっかです!』

ギンガ

『おい!ドウラン!』


笑う生徒たち


アステル

『まあ遅刻ではないからな。ギリギリは大目に見てやろう。

 さて、それじゃあ早速授業を始めるぞ。昨日最後にやった地理の復習からだ。

 ドウラン、この世界にはいくつ大陸があってそれぞれどのような特徴をもつか覚えているか?』


ドウランは立ち上がる。


ドウラン

『はい。この世界には4つの大陸があり、1つ目はここ、シンフォリア大陸。

 季節が春と秋しかなく、農作物や家畜などを育てやすい環境のため、人間が住みやすい大陸です。

 2つ目は「ジュール大陸」。

 シンフォリア大陸とは真逆で、季節が真夏と真冬しかない過酷かこくな環境であり、弱肉強食の世界の大陸と言われています。

 3つ目は「ヴィングトン大陸」。

 100年前の戦争で魔王が率いる軍隊に敗北し、現在は大陸全土が砂漠と化す、人間が住めないとされている大陸です。

 最後は「ブラッデン大陸」。

 先ほど言った魔王のいる大陸で、その全ては謎に包まれています。』


【ギンガ】

さすが秀才妹。

完璧な回答だ。


アステル

『そのとおり!ちゃんと復習してきたな、偉いぞドウラン!』

ドウラン

『へへへ!』


照れるドウラン。


アステル

『地理を学ぶことの大切さの1つは、広い視野を得ることができることだ。

 対局的な視点は戦場でも大いにその力を発揮する。

 生きるためにも必要不可欠な能力だからみんなもしっかり勉強するように!』

生徒たち

『はーい!』

アステル

『それでは今日は魔法について勉強する。ギンガ。魔法はどのようにして出すことができる?』


ギンガは立ち上がる。


ギンガ

『はい!えっと、、、気合いを入れて、、念じる?』

ドウラン

『お兄ちゃん。。。』


ため息をついて呆れるドウラン。


アステル

『気合いで魔法が出せるかバカたれ!次、エステル。』


エステルは立ち上がる。


エステル

『はい。魔法は精霊の力を借りることで出すことができます。

 人間のもつ魔力を精霊に与えることで、精霊はその魔力をかてとし、精霊特有の不思議な力、魔法を出すことができます。

 魔法の効果や範囲などは、精霊に与える魔力量で大きく異なります。

 魔力を精霊に与える儀式を詠唱えいしょうと呼び、詠唱によって精霊が顕現けんげんした不思議な力を魔法と呼びます。

 現代では魔法のことを「じゅつ」とも呼んでいます。』


エステルは続ける。


『現在、シンフォリア大陸で確認されている術の属性は4つで、火、水、風、地です。』


アステル

『そのとおりだ!さすが我が娘!

 世界一かわいいだけじゃなくて頭もいいとは!』

エステル

『えへへっ!』


【ギンガ】

先生はいわゆる親バカである。

特に娘のエステルには弱く、エステルの頼み事を断った姿を一度も見たことがない。


アステル

『今から100年前、ヴィングトン大陸の大魔法使い「モルダン」によって魔法の発動の仕組みが解明され、以後多くの人が魔法を使えるようになった。

 魔法の恩恵おんけいで文明は大きく発展をし、人間がよりよい生活を送れるようになった。

 精霊は実際に目に見えることはないが、みんな精霊への感謝は常にもつことを忘れないように。』

生徒たち

『はーい!』

アステル

『それじゃあエステル。実際に魔法を使ってみろ。』

エステル

『はい。』


エステルは杖を構え、詠唱を始める。


エステル

『精霊よ。いやしの力を与えたまえ。ヒール。』


すると、ギンガの頭のたんこぶが治っていく。


ギンガ

『おー!今朝母さんに叩かれてできたたんこぶが治ったぞ!』

ドウラン

『一緒に頭の悪さも治ればいいのに。。。』

ギンガ

『うるせえ!』


笑う生徒たち


アステル

『最後に魔法について、絶対に覚えておいてほしいことが1つ!

 自分の魔力量を超える魔法を発動しようとしないこと。魔力が枯渇こかつすると死んでしまうからな!

 魔法を使うときは、自分の魔力量に見合った魔法を使うように気をつけること!いいな!?』

生徒たち

『はーい!』

アステル

『よし!それじゃあいつもより早いが、今日は俺の誕生日会があるため授業はここで終わりとする。

 どうかみんなも今日は俺の誕生日会を楽しんでくれ!』


帰路につく生徒たち。


アステル

『ギンガとエステル。』


先生に呼び止められる。


ギンガ

『どうしたんですか先生?』

アステル

『お前たちにちょっと頼み事があってな。』

ギンガ・エステル

『頼み事?』

アステル

『ああ。今朝、村民から西の森でボアを見たっていう情報があってな。

 警護団は今、村の東に出た魔物の討伐に行っていて、俺もこの後用事があって外せないんだ。

 残りの警護団となるともうギンガしかいないからな。

 どうか魔物を討伐とうばつしてきてほしい。

 かわいいエステルには行かせたくないんだが、ツーマンセルは絶対だからな。』


【ギンガ】

そう、魔物討伐の際、ツーマンセルを組ませるのは先生が作った絶対的なおきてだ。


ギンガ

『任せてくださいよ先生!ボアごとき、先生から習った俺の剣技けんぎ瞬殺しゅんさつですよ!』

アステル

『頼んだぞ。弱い魔物とはいえ油断するなよ。』


そう言うと先生は村の方に向かって行った。


ドウラン

『お兄ちゃん!』

ギンガ

『どうした?ドウラン。』

ドウラン

『先生と何話してたの?』

ギンガ

『ああ、先生からちょっと頼まれごとをな。悪いが先に帰って父さんたちの手伝いをしてくれないか?』

ドウラン

『うん!わかった!早く帰ってきてねお兄ちゃん!

 それじゃあエステルお姉ちゃんもまたねー!』

エステル

『うん!またねドウランちゃん!』


【ギンガ】

こうして俺とエステルは、先生からの依頼により魔物討伐のため、村の西にある森へと向かうのであった。

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