THE FINAL STORY ー伝説の剣を手に入れたが柄(つか)だけで剣身(けんしん)がなく、剣とは呼べない武器だった話ー

十文字 銀河

第1章 精霊剣

第1話 THE FIRST STORY

『 』・・・キャラクターのセリフ

【 】・・・場所・状況またはそのキャラクターの心の声


柄(つか)・・・刀剣や弓の手で握るところ。握りや鍔(つば)などがある部分の総称。

剣身・・・刀剣のなかみ。実際に何かを斬る部分。




【ギンガの家2階】

ギンガの母

『ギンガ!!早く起きなさい!エステルちゃんが待ってるわよ!』

ギンガ

『うーん、、、あと5分だけ、、、』


ギンガを叩き起こすギンガの母。


【ギンガの家1階】

ギンガの父

『エステルちゃんいつもごめんね待たせちゃって。あんなのほっといて先に行っててもいいんだよ?』

エステル

『いえ、これも幼馴染の務めですから!』

ギンガの父

『今日はお父さんの誕生日会だね。わたしたちも美味しい料理を振る舞うから楽しみにしててくれ。』

エステル

『はい!おじさまが作る料理はいつもおいしいので楽しみです!』

ギンガの父

『はっはっは!それは嬉しいね!』


ギンガの父は車椅子を動かしキッチンへと向かい、コーヒーを淹れる。

ギンガの父には右足が無い。

昔、不慮の事故により失ってしまったそうだ。


この世界には4つの大陸がある。

その内の一つ、「アレスト王国」のある「シンフォリア大陸」は、季節が春と秋しかなく、年中気候がよくて住ごしやすい大陸だ。

作物や家畜を育てやすいため、農業や牧畜・酪農などが盛んな大陸である。

そんなシンフォリア大陸の北端には小さな村「エトス村」がある。

エトス村の北側は海となっており、西側は森、東側は田んぼと牧場、そして南側には丘がある。

エトス村は稲作と漁業、そして「ピィ豚」と呼ばれる豚の牧畜が盛んで、王都の商店街にもエトス村名物「ピィ豚おにぎり」が販売されている。

このエトス村に住む少年「ギンガ(17)」と少女「エステル(16)」は、この村で生まれ育った幼馴染だ。

ギンガという少年は、身長170センチの短髪白髪、銀色の目をしており、体型は引き締まった鍛えられた体をしている。

エステルという少女は、身長160センチの長髪薄い水色髪、ピンク色の目をしており、体型は歳に似合わず出ているところは出ており、引っ込めるところは引っ込んでいる。そう、いわゆる巨乳である。


【走るギンガとエステル】

ギンガ

『あー、くそ!また遅刻して先生にいろいろとコキ使われるの嫌だぞ!この前なんか「アイルばあさん」とこの逃げ出した猫を捕まえるまで稽古場出禁くらったからな!』

エステル

『大丈夫よ。今日はパパの誕生日会があるんですもの。遅刻しても今日ぐらいは許してくれるに違いないわ。』

ギンガ

『先生はそんな甘くないよ。きっと今も、今日はどうコキ使おうか考えているはず!』

エステル

『そう思うなら寝坊しなければいいのに、、、』

ギンガ

『寝る子はよく育つって言うだろ?』

エステル

『頭の方は全然育ってないけどね。』

ギンガ

『余計なお世話だ!!』


【ギンガ】

エステルはエトス村の村長「アステル」の娘で、アステル先生は俺の剣の師匠だ。

元アレスト王国騎士団副団長をしていたほどの実力者で、稽古場で剣の稽古をつけてくれている。

先生が騎士団にいたのは16年前の話で、ある理由が原因で現役を引退しその後この村に来たらしい。

この村を選んだ理由は食べ物がおいしいからなんだとか。

魔物に襲われていた前村長を助けたら新しい村長になるように言われ、本人は頑なに拒否していたが、村人の人たちからも勧められて本人も断りきれずに村長になったんだって。

まあ元騎士団、それも副団長が村長になってくれたらみんな安心するわな。

先生は16年前に騎士団を引退したとは思えないほど現在もとても強く、同じ男から見てもかっこいい。

将来は先生みたく騎士団になって多くの人を助けるのが俺の夢だ。

今日は夕方頃から先生の50歳の誕生日会が村総出で開催される予定で、今、村全体は準備で賑わっており、飾り付けや食事の準備などで大忙しだ。

まるでお祭りである。


【走るギンガとエステル】

ギンガ

『そういえば、先生に渡すプレゼントは決まったのか?』

エステル

『うん。わたしは手袋を渡そうと思ってる。』

ギンガ

『手袋?ああ、最近なにか作ってるなと思ったらそれだったのか。』

エステル

『うん。パパが今使っている手袋ボロボロだから。昨日完成してギリギリ間に合ったの!』

ギンガ

『そりゃ毎日あんだけ厳しい稽古してりゃぁすぐ壊れるわな。。。先生きっと喜ぶよ!』

エステル

『ありがとう!ギンガは何にするか決まったの?』

ギンガ

『もちろん!昨日釣った「バス魚」さ!』

エステル

『へえ!この時期中々捕れないのにすごいね!パパバス魚のお刺身好きだから、教室が終わったらおじさまに頼んでさばいてもらいましょうよ!』

ギンガ

『いいなそれ!へへ、喜ぶ先生の顔が目に浮かぶぜ。』


【ギンガ】

先生が村長になってからエトス村に新しくできたものが3つある。

1つは「警護団」。

村の若い人たちが主なメンバーで、エステルの6つ上の兄「ラステル」が警護団長である。

ラステルさんはやはり先生の息子というだけあってとても強い。

先生にはまだ遠く及ばないが、この村で先生を除けば1番強い。

俺のことを可愛がってくれており、俺もラステルさんのことを尊敬している。

俺の兄貴分だ。

近年、魔物の動きが大陸全土で活発しており、村の近くにも現れるようになったために作られた。

何を隠そう、俺も警護団の一員である。

次に「稽古場」。

警護団の稽古場でありここで週に5日、先生から剣の稽古の指導を受けているが、元騎士団副団長から教えを乞う機会なんてものは滅多にない。

自分でも日々強くなっている実感が湧いている。

そして最後の1つは俺たちが今向かっている「青空教室」だ。

頭を鍛えることも生きていくため、そして強くなるために必要だと考える先生が村の子どもたちにいろいろなことを教える場である。


アイル

『おや、ギンちゃん。この前は「ミミ」を捕まえてくれてありがとうねぇ。

 ピィ豚のからあげでも食べていかないかい?』


【ギンガ】

ミミとはアイルばあちゃんが飼っている猫の名だ。

アイルばあちゃんはミミを溺愛しており、よく頬ずりをしている。

アイルばあちゃんは気付いていないが、頬ずりされている時のミミの顔はげっそりしている。

どうやら頬ずりされるのが嫌いらしい。

だが俺はそのことは言えずにいる。

アイルばあちゃんの夫、サヴァじいちゃんは、半年前に稲作作業中に魔物に襲われ、亡くなっている。

1人息子がいたのだが2年前、王都に商材を運ぶ途中に魔人に襲われ、やはり亡くなっている。

今は家で1人きりのため、寂しいのだろう。

しかし暇さえあればミミに頬ずりしているため、ミミが逃げ出す気持ちもわからんでもない。


ギンガ

『教室に遅刻するから今は遠慮しとく。またなんかあったらいつでも頼ってくれ!』

アイル

『ありがとうねぇ。今度またご飯食べにおいで。』

ギンガ

『ああ。また今度ごちそうになるよ!またね!』


ギンガは走り去る。


アイル

『エステルちゃん。ギンちゃんは無茶なことをすることが多いから、面倒見てやってくれるかい?』


エステルはにっこりと笑う。


エステル

『はい。任せてください!幼馴染ですから!』


エステルはアイルにお辞儀をするとギンガを追いかける。


【ギンガ】

こうして俺たちは丘の上にある青空教室へと向かうのだった。

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