第27話 真実を

「妻はーーセレスティーヌは、お前たちのことを案じた。特にセシリア。セレスティーヌは、極端に、アメリアに愛情が行くように仕向けたんだ」


意味がわからない。

だってそれなら、アメリアへの愛情は嘘で、私への愛情は隠されていたことになるもの。


「…どういうことでしょう、お父様。そんな意図的に子供を操ったのですか?」

「すまない。十分、それは自覚している。だが…アメリアを愛さないという選択肢はなかった。もしもアメリアが不当に訴えていれば、公爵家も…。セシリアは素晴らしい子だと、母親ながら誇らしいと、セレスティーヌは言っていた」

「…どういうことですか。どうしてそのようなことをする必要が!?」

「…でないと、アメリアは「隠し子」ということが世間に知られる可能性があったからだ」


ーー!?

「隠し子」。それはつまり、母か父のどちらかが不貞したことになるーー。


「アメ、リ、ア……」


私の横でプルプルと震えているアメリアを、王太子は庇おうとはしない。

アメリアは「隠し子」、私は「正当な子」…。


「…あんたなんかっ、…あんたなんか!大っ嫌いよ!」


バチン!


彼女は、思いっきり私の頬を叩いた。

それを、父が止める。


「何をする!」

「うるさい、離してよ!なんで、私がっ…こんな目に!!お父様は、私の実の父親じゃないってことでしょ!?」


お父様はこくりと頷く。

そうか、お母様が浮気したんだーー。


父はその後もきちんと語った。

セレスティーヌ…私の母親は、私、セシリアもアメリアも幸せになって欲しかった。だけど、アメリアが「隠し子」である以上、幸せは望めない。だから、公爵は次女を溺愛しているという噂を流し、実際に愛情を注いで、良いところに嫁がせようとーー。


「二人とも。誕生日プレゼントは、毎年二つ届いていただろう?」

「「はい」」

「あれは…一つは私から、もう一つはセレスティーヌからなんだ」


セレスティーヌは毎年分を用意していたらしい。

そして、あの世から見守っていたーー。


「……っ、何よそれ、本物のグズじゃない!お母様は、私がどうなっても、良かったって言うの…?」


なんで浮気したの。なんで産んだの。様々な疑問が頭の中で波乱を招いているに違いないアメリアは、ただ拳を握りしめて立っていた。


「…お父様。私、お母様のことだけは許せないの。家族みんなを騙しているもの」


浮気して夫を裏切り、愛情を注がないようにと第一女セシリアを裏切った。第二女アメリアはこの世に裏切られて生まれてきた。

でも、一つだけ、反省する。


「お父様。今まで恨んでごめんなさい…」


父は母に言われたことをそのまま実行した。恨むべきは、父親じゃない。


物語のように、父母も許すほど私は優しくないけれど…。


その後、私とアメリアは、初めて一緒に泣いたーー。

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