第2話 言い訳

「どうもこうもない…!」


と言う殿下の相手から片付けることにした。

だって、アメリアよりも物分かりがいいと思うから。


「どうもこうもって…先ほど、妹と体を重ねられていた男がいましたのよ」

「それは、私じゃないっ!」


…ん?

私じゃない?この王太子、馬鹿なのね?

呆れてツッコミも思いつかない。


「ふぅ。殿下がいらっしゃるというのに、応接間に他のお客様をお通しすることはございません」

「そ、それはわからないだろう?」

「うーん、そうですね。国王陛下がいらっしゃればお通しいたしますが…。あ、もしや、殿下の言い分としては、妹と体を重ねられていたのは…」

「ち、違う!違う!」


まあ、そうよね。

この流れでいけば、国王陛下が不貞したことになる。流石に父親が浮気者のクズになるのをみすみす黙って聞いてはいられないだろう。


「ふふ。…では、どなたでしょう?」

「っ…わたし、だ」


やった、認めた!

殿下が認めたからには、アメリアもこの問題については反論できなくなる。


「では、不貞、ですわね」

「それ、は…」

「お姉様。違うわ」


アメリアが口を挟む。


「私たちは付き合ってるわけじゃない。ただ体を重ねるだけの関係よ」


また、馬鹿が出てきた…。

それはそれで問題になると言うのに。


「じゃあ。殿下がアメリアに愛してる、と言っていたのは嘘だったと?」

「そんなことは言っていない!」


良かった。

馬鹿はやっぱり予想通りに動いてくれるのね。だから、推測通り、使用人たちに聞かせたのだ。


「恐れながら…殿下であろう殿方は、アメリアお嬢様に愛の言葉を囁いておられました…」


なかなか上品に言葉を紡いだわね。

少し感心しながら、でも勝ち誇る。


「ですって、殿下」

「…っ、そこの使用人っ、名前はなんだ!?」


今度は、脅そうと。

よくもまあ、皆の前でやるなぁ、と思いながら私はさっと彼を庇う。


「殿下、脅しなどしたら、公になった時に地位が危うくなりませんこと?」

「そ、それはだな…」


まあ、私の目的は、ただ単に認めさせる、だけなんだけれどね。


「お姉様!ひどいですわっ、殿下がお可哀想です!そんなに責めて…」


ぐす、ぐす、と泣き始める。

ああ、そうだ。アメリアは、そんな妹だった。

「可哀想」なのは、私の方よーー。


「アメリア…君は、優しいな」

「え、えへ、そんなことありません…」


いやいや、思いっきり照れてるじゃないの!


「寝取った女がよく被害者ヅラできますわね」

「っ、セシリア!お前は少々言葉が過ぎるぞ。私たちが体を重ねただけで…。愛し合うことの、何が悪い!」


よくわかりませんが。

どのみち、私は婚約破棄を押し付けますが。

最後に、わからせてあげましょうか。


「知っていますか?それって、「浮気」って言うんですよ」



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