第7話 少年もサボろう
「師匠!」「しーしょー」「ししょうっ」
(いい加減にしてほしい。朝も昼も全く休めてない・・・)
昨日弟子になることを拒否してから、一こと夏樹は鬱陶しいほどに私の元にきた。
その所為で噂はあっという間に広まっている。
(零ってことを隠しているわけじゃないけど、バレたらバレたで面倒。こういう時こそ・・)
「先生具合が悪いので帰らせていただきます。」
「はぁ、そういうのは担任の先生に伝えてほしいものですが」
ブツブツ言っている学園長を尻目に学園を後にする。そのまま学校の敷地外に出る。
スーパーや映画館などの公共の建物は敷地内にあるのだが、蛍の住むマンションは敷地外にあった。敷地内の周りは高い塀があるため、出るには受付で学生証を見せる必要があった。
急いで警備員に学生証を見せ、外に出る。
「師匠!」
(嘘でしょ、まだついてくるの?)
走って路地を曲がる。すると目の前に自分の2倍は小さな影が見え,衝突を回避するために空中でクルリと回り、着地する。そのまま小さな影の手を引いて路地に隠れる。
「師匠!師匠どこに行ったんですか?」
声がどんどん遠くなっていく。
(まけたかな)
「おねぇさん、誘拐犯?」
「え」
声の主は、蛍の膝に座っていた。背中には青いランドセル。
「あーごめんね。ストーカーに追いかけられてたから、つい。学校の途中だよね。もう行っていいよ。」
蛍はそう言ったが、目の前の少年は少し寂しそうな顔をしている。
「ほんとの誘拐犯だったらよかったのに」
少年の小さなつぶやきを聞き、何かがおかしいと感じた。
少年は夏だというのに長袖長ズボンだ。
「ちょっと失礼」
少年の腕を見ようとするも「触らないで!!」と拒否された。
「僕、もう学校行くから。おねぇさんも気をつけてね。」
そのまま去ろうとする少年の腕を掴む。
「前言撤回。私誘拐犯だから、今から少年を誘拐する。」
「え?」
「ということで、サボろう少年」
そのままその少年の腕を掴み、路地を出る。
「あ!師匠!ここにいたんですね」
「あ、忘れてた。」
路地を出た瞬間、一に見つかった。
「師匠、この少年は?」
「あー私が誘拐した。」
「は?誘拐?」
「とにかく、少年。とりあえずそのランドセルをどこかに置こう。さもないとーあー、なんかするぞ」
「おねぇさん。下手だね。」
「脅しにうまいも下手もないでしょ。」
「僕のパパは得意だよ。」
少年はまたもや寂しそうな顔で言った。
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